見出し画像

回生(かいせい)(二次創作・ゲ謎 鬼+水)

 こんにちは。最近作品を投稿してなかったので、以前ツイッターで相互さんのゲ言迷百物語企画で参加した作品を掲載します。どうぞよろしくお願いします。鬼→水(親愛)で、鬼が少しおかしいです。死ネタがあるのでご注意ください。
 宮部みゆき先生の「あやかし草紙」の「金目の猫」のオマージュが少し入っています。


「やあ、こんにちは。僕が鬼太郎です。
 君が妖怪ポストに手紙を入れたのかい? 悪いね、呼び立ててしまって。ちょっと用事が立て込んでいてね。道に迷わなかった?
 そうかい。カラスに道案内をしてもらってよかったよ。

 それで君の依頼の件なんだけど、『猫を探して』という。
 僕は妖怪専門の依頼を受けるから、申し訳ないけれど探偵やよろず屋に頼んだ方が…
 え? 普通の猫じゃない? どんな風に。
 初めて会った時は毛玉だった…そして触ると毛が散っていなくなった? …気のせいじゃなくて?
 ふーん…元は目も無かったの。でも飼っていた時はあったんでしょう。じゃあ普通の… 2回目に会った時も、触るといなくなった…そう。じゃあ、妖怪かもしれないね。もしかしたら、けうけげんかもしれない。毛むくじゃらの妖怪なんだけど。
 ちなみに名前は…まゆ。白くて丸っこいから。なるほどね。

 なんでいなくなったんだろう。…可愛がっていたけれど、ある日お手伝いさんの子供の顔の上に乗っていた…赤ちゃんだったの? それで怒ったら逃げてしまった…ずっと帰ってこないんだ。それから一度も? そう。
 もしかしたら、赤ん坊に嫉妬したのかもしれない。君もその子の面倒を見たりしていたんじゃない? そうか。
 …探し出すのは難しいかもな。それでもいい?
 …分かった、じゃあこの依頼を引き受けるよ。1週間くらい経ったら報告に行くから。

 それじゃあ父さん、水木さん。僕はしばらく帰らないかもしれないけれど、心配しないでください。
 え? ああ、こちらは水木さんといって、義理のお父さんなんだ。僕には父さんが2人いる。まだ父さんが目玉になり立ての頃、背が小さくて子育ては骨が折れるから、水木さんが代わりに僕の面倒を見てくれたんだよ。
 僕が言葉を話しはじめ、学校にも行くようになってからは、彼に迷惑をかけないように父さんとここで住みはじめたんだけどね。

 どうして今は3人で暮らしているかって? それはね、僕らが出て行ってずいぶん経った頃、カラスがしらせに来てくれたんだ。
「水木さんが亡くなった」って。

 僕と父さんは慌てて彼の元へ駆けつけた。あれから一度も会っていなかったからね。不義理をしてしまった、人間は寿命が短いからもっと会いに行けばよかったと後悔したよ。

 ──そしたら、もう何もかも終わっていて。
 水木さんは葬式を挙げてもらい、骨も焼いてもらって、小さな白い箱が仏壇に置いてあった。
 彼にはもう身寄りがなかったから、遺骨の引き取り手がなくてね。それで役所の方へ引き取ってもらえるよう、近所の人が手続きしている最中だったのさ。

 家は僕らが住んでいた時みたいに綺麗にしてあったけど、片付けがまだ残っているから、僕と父さんが時間のある時に整理をした。
 何度かかよって、ある日玄関を出た時に聞こえたんだ、
『鬼太郎』って。

 僕は辺りを見回してふと下を見ると、手のひら位の大きさの石が目に入った。
 それを一目見た時に気づいたのさ。それは水木さんなんだって。

 だって、そんな風に僕を呼ぶのは父さんと水木さんしかいないし、この耳ではっきりと声を聞いたんだ。
 僕らに会いたくて、姿形が変わってしまってももう一度話したかったのかもしれない。それに、彼はこうと決めたら梃子てこでも動かなかったからね。意志の固い男だからさ。

 ──ほら、これを見てごらん。上の端の方が欠けているだろう? そして大きく斜めに亀裂が入っている。彼はそういう傷を負っていた。だから、そのままこれを持ち帰って家に置いているんだよ。

 いつか石の人生が終わったら、水木さんはまた人間に生まれ変わるかもしれないし、他の動物になるのかもしれない。
 けれど僕たち幽霊族は長生きだし、彼が他のものに生まれ変わったとしても、絶対に見つけ出してみせる。
 僕はその日をずっと楽しみにしているんだ。」

 そう言うと、彼は幸せそうな表情でそっと優しく石をなでた。

 了

#なんのはなしですか

いいなと思ったら応援しよう!

時雨
この記事が気に入ったらよかったら応援をお願いします♪ 創作を続けるモチベになります。