最も勁い花  鬼りんご

(行を明示するため、空白行を除く全ての行末にスラッシュを施します。)


最もつよい花

 或ひは最底辺への着地衝動


最も勁い花は海で出来てゐるわけではないが/
その何処を截つても潮が迸り 苦いうねりがとどろき出る/

最も勁い花は全ての色を脱け出してゐる/
今日はとびきりの青空だ と その花が見えずに人は言ふ/
川のきらめきが眩しい と呟き 兵どもが夢の跡 と吟ふ/

無数の宇宙は花びらの内に生成し かつ雪崩れかつ爆ぜる/
誰もがその花の中の大地に生まれ 花の風を浴びて育つ/
鳥といふ鳥は 花の大空を砕く雷から撒き散らされ/
その蕊の高気圧に搾られた娘らの肌が入道雲を放つ/
花の闇の底に虫たちの這ひ綴る鏡文字は詳細に誤読される/

最も勁い花は咲かうとすればきつと躊躇ふ/
咲けば 誰もが気づいてしまふから/
われわれの目はもう二度と覚めることはないのだ と/

最も勁い花が早くもふとみづからを裏返すとき/
あらゆる波動を消してはなやかに 一切の無も裏返る/



(「こどもだま詩宣言」対応  原文縦書き・行末スラッシュ無し)

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