月に1冊も読書しない人が6割以上いる中で、小説家ができること
6割以上の人が月に1冊も本を読まないことが、2023年度「国語に関する世論調査」で明らかになりました。
今までの調査結果の中で最低の数字で、5年前の数字より15.3ポイント増えています。ネットの記事を読んでいても本の話題が減ったとは感じていたましたが、急速に本離れが進んでいることが、皮膚感覚的ではなく数字で明確になりました。
この数字は電子書籍を含んでいるので、紙の本だけではなく書籍離れが急速に進行していることになります。
ネットなどの記事は75.3%の人がほぼ毎日読んでいるので、活字離れではなく、書籍という形式が受け入れらなくなっているという悲しい結論に行き着いてしまいます。
この5年で、さらにスマホの利用頻度が高まった気がします。スマホゲームやSNSなどで隙間時間を埋め、YouTubeやTVerなど動画鑑賞で自宅での余暇時間を消費するのが一般的になっている印象があります。
それが無料で遊べてしまうというのが、なにより驚異です。1円の壁というように、有料になった瞬間に顧客は一気に減ります。
書籍は文庫本でも800円以上します。無料ゲームや無料動画との障壁は限りなく高いです。
読書をしている人の中でも図書館で借りている人は多いと思います。
こうやって現実を書き記すと、無名の新人小説家としては暗澹たる気持ちになってしまいます。出版業界全体が、スマホの巨大な波に呑まれている姿を眼前で見ているイメージです。
音楽や地上波テレビ番組、コミックなどと同じ道を辿っているわけですが、それらのエンタメはサブスクやTVer、電子書籍と形を変えて、スマホの荒波の中で生き残ろうと模索を続けています。
一方で、読書量が減ったと回答した人は、プラス1.8ポイントで、本を全く読まない人よりは増加量が少ないです。そんなに本を読まないライト読者層が減り、本を集中的に読んでいる人が、読者のコアになっている印象があります。
今後は、本を趣味にしている人に向けて、書籍作りをしていくべきなのでしょうが、それではマーケットは広がりません。
小説が俳句や短歌のように少数の人に向けた趣味になる可能性もあります。正確な数は把握していませんが、俳句や短歌を専業としている人は、少なくても小説家よりは少ないと思います。
俳句や短歌を楽しんでいる人はもちろんいますし、それも文化の生き残る道だとは思いますが、商業として成立していて毎日のように新作が出版され、毎年何人もの新人がデビューしている小説が、今までとは異なる状況になるのは寂しい感じがします。
小説は、このままスマホの波に呑まれてしまうのか、音楽やコミックのように荒波に乗ろうとチャレンジを続けるのか、岐路に立っている気がします。
そうは言っても、無名の新人小説家にできることは、多くの人に読んでもらえる善い作品を書くことだけです。
コアな人に喜んでもらえることはもちろん大事ですし、普段本を読まない人にも面白いと言ってもらえることを目指していきたいと思います。
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