追悼鳥山明さん
鳥山明さんが亡くなりました。突然の訃報に大変驚きました。
僕が鳥山明さんの作品に出会ったのは、「Dr.スランプ」です。多分、近所の耳鼻科の待合室だったと思います。漫画を読んで、声を出して笑ったのは「Dr.スランプ」が初めてでした。
ギャグセンスが素晴らしく、地球を割るぐらいの大パワーがお笑いになると初めて知りました。中年の冴えないおじさんが主要人物なのも、作者と編集者との楽屋落ちも新鮮でした。
ギャグも最高なのですが、もの凄かったのが絵です。「Dr.スランプ」の単行本を持っていましたが、覚えているのは表紙や扉絵の緻密さです。
絵が上手いのは当然で、何より魅了したのは絵の構図です。恐竜に乗ったアラレちゃんの絵を模写してみて、とてつもなく難しく、この世に存在しないものをここまでリアルに描けるのかと感動したのを今でも覚えています。
「ドラゴンボール」は週刊少年ジャンプでリアルタイムで読んでいました。途中で大人なってしまい少年ジャンプを買わなくなったので(ヤンジャンやビッグコミックスピリッツに移行しちゃいました)、フリーザ編ぐらいまでしか雑誌では読んでいませんが、やはり構図の凄さには魅了されました。大胆なコマ割り、静止画なのに動いているように見える迫力ある絵、すべてが新しく斬新でした。
「ドラゴンボール」以降、鳥山さんは長編漫画を描かなくなりました。長期連載が過酷だったことと、面倒くさがりな性格だからとか様々な理由が語られていますが、新しい長編漫画を読んでみたかったのがファンの正直な気持ちです。
緻密な絵を描く大友克洋さんも「AKIRA」以降は長編漫画を描いていません。
おふたりが描く物語も素晴らしいのですが、絵を描くことのほうが好きだったのかもしれませんが、あれだけの大作を残してしまうと、次回作への切り替えが難しいのかもしれません。
成田美名子さんは名作「CIPHER」を描き終えた後、その世界からすぐには抜け出せず、「CIPHER」に登場した人物を主役にした「ALEXANDRITE」を描いています(成田美名子さんは、「NATURAL」の後にも登場人物が被る「花よりも花の如く」を描いています)。
自分は小説を書き終えると、その世界のことはどちらかというと忘れてしまう方で、シリーズものはそれほど多くありません。
ただ、どこかで登場人物が生きているような錯覚を感じることはあります。
鳥山明さんも、連載が終わったあともアラレちゃんや悟空がどこかで生きて暮らしている感覚があって、絵を描き続けていたのかもしれませんし、自分が生み出したキャラクターといつまでも一緒にいられたのは幸せなことだったのかもしれません。
僕の小説にはお笑い要素が入っていることが多いのですが、ギャグの根本には「Dr.スランプ」があるように思います。
僕のように多くのクリエイターが鳥山明さんの作品に影響を受けたと思います。
ご冥福をお祈り申し上げます。