耳鼻科に行くのを忘れそうになった日の【ささやかなしあわせ】
その週は、私も家族もイレギュラーな予定が多く、
息子(小5)もちょいちょい忘れ物をしていく日があったりして
言葉には出さなかったけれど、
『忘れ物してないかな』
『連絡帳書かなきゃ』
『今日は娘(幼稚園年長)のお迎え16時だから忘れないようにしなきゃ、、』
といろいろ考えながら子どもたちが身支度するのを見守り、送り出して
『ひとまず忘れ物は無さそうかな』
と思いながら、
さぁ、今日は何からしようかなぁ…
と、
洗面所で歯ブラシを手に取った瞬間。
ハッ…!っと
朝から自分の耳鼻科受診をスケジュールに入れていたことをすっぽり忘れていたことを突然思い出した。
すぐさま目の前の時計に目をやり、
何時に出るつもりだったっけ⁉︎
と、
考えを巡らせる。
いつも出発している時間まで、あと10分。
まだハミガキも、メイクもしていない!
とにかく急いで歯を磨き、
ザザッと下地の日焼け止めクリームを顔に塗って
眉毛を描いて、家を出る。
通っている耳鼻科は、
事前予約制ではなく、当日の受付順に診察の順番が回ってくるスタイルで、
web受付もできるのだけれど、webでの受付が始まるのは診察時間になってから。
診察時間よりも前にクリニックの受付が開き、
直接足を運んだ患者さんの受付が先に始まるので、
web受付がスタートした時点ですでに1時間待ちになっていることもある。
ちょっとのところで、診察の待ち時間が大きく変わるので、いつもできるだけ診察時間前に行くように努めていた。
バタバタと身支度をして、
いつも家を出る時間より10分近く遅れて車のエンジンをかけた。
“間に合うかなぁ”
と一瞬、頭をよぎったけれど、
とはいえ道路は青信号続きだし、
何となく“焦らなくても大丈夫”という感じがしている自分がいた。
案の定、
とてもスムーズに、耳鼻科の隣にある駐車場に到着。
着いてみると、やはり受付はすでに始まっていた。
けれど、
なんと受付番号は3番だった。
あっという間に診察も終了。
いつもならすでに10人以上は受付済みで、1時間待ちぐらいが常なのに。
そもそも、待合室に張り出されている
『今月の診療予定』だと、
今日は診療担当の先生が一人しかいない日。
二人診療の日よりも待ち時間が長いことを覚悟していた。
その翌日は二人診療の日だということも知っていたのだけれど、翌日には、お昼前に視聴したいオンライン講座の予定があって、そこの予定を空けるために予定を一日前倒しにしてスケジュールを立てていた。(いつも耳鼻科受診を終えて帰るまでに午前中いっぱいかかる)
なのに、
その日は拍子抜けするほど、なぜか患者さんが少なかった。
待ち時間が長かったら“読書の時間”と割り切ろうと思って、家を出るときに持って出た本も全く読む時間がなかったので、
ふと、コーヒーでも飲んで帰ろうかと思い立ち、検索してみると、
すぐ近くに評判の良さそうなカフェがあるとわかったので、ふらっと足を向けてみた。
わりと一人で飲食店に入るのが苦手な私。
入りづらい雰囲気だったらあきらめて引き返そうと思っていたら
そこにあったのは、わりと新しそうな建物に
お洒落な雰囲気のインテリアが見えて
入り口のドアも開け放たれていた。
落ち着いていて素敵な店内。
奥から20代半ばぐらいの
にこやかな女性店員さんが迎えてくれて、
やっとそこで“コーヒーを飲んで帰ろう”と決めた。
普段一人で入ることがあるのは
スタバかドトールぐらいなので、
不慣れすぎて少しだけ恥ずかしさもありつつ、
にこやかに接客してくださる女性店員さんに安心感を得て、ブレンドコーヒーを注文した。
ブレンドコーヒーは、
深煎りのものと、浅煎りのコーヒーがあるとのことだったので、
私は、そこのお店の名前のついた、きっとお店の看板メニューなのであろう深煎りのコーヒーを頼んだ。
その時まだ10時すぎ。
『モーニングの時間帯はトーストがサービスなんですが、お付けしますか?』と聞かれて、
なんとなく、どんなパンなのか興味が湧いて、
『じゃあ…♡』とお願いすることに。
本当は普段から16時間ファスティングをしている私は、そのとき食べ物を食べる時間帯ではなかったのだけれど、
店員さんの穏やかな笑顔と、押しつけ感のないサービスに、無意識のうちに心を動かされていたのかもしれない。
お店に入ったときに、他に数人お客さんがいて、
少し距離の取れる位置にある、
お店の真ん中に配置された円形のソファ席に座っていた。
晴れて爽やかな5月の午前中。
開け放たれたお店の入り口から、
外の風が心地よく入ってきていた。
壁面は雑誌や本がお洒落にディスプレイされていて、お客さんが自由に手に取れるようになっていた。
数分して
淹れたてのブレンドコーヒーが到着。
ふわっと立ち昇る、コーヒーの良い香り♡
カップとソーサーは、隣りのお客さんが使っていたそれ(たしか薄い黄緑色だったと思う)とは色の違う、きれいな水色をしていた。
お洒落な店内にぴったりの、とてもシンプルで、それでいて少しだけ大ぶりのカップとソーサーに、とても好感を持った。
何枚かコーヒーと本を並べて写真を撮ったあと、
外を眺めながら、コーヒーをひとくち、ふたくちいただいて、
ふぅっと一息。
普段、外でボーッとすることなどほとんど無いので、それだけでふぅっと心が落ち着いた。
程なくしてトーストが到着。
グレーで平らな形の、お洒落なプレートに乗って届けられたトーストは、私が想像していた食パンではなく、ハード系の楕円形のパンを1/4ぐらいにカットされたもので、
良い意味で期待を裏切られて、『わ♡』と、一瞬うれしくなる。
カットされた表面がカリッと良い色にトーストされたそのパンは、少しライ麦が混ざった生地で、程よくオイルが塗られていた。
パンとコーヒーを並べて写真を撮ったあと、
トーストをちぎってみると、
外のカリッとしている質感に反して、中がふわっとしていて、また『わ♡♡』と、うれしくなる。
頬張ったときのライ麦の風味。
深煎りでしっかりとした香りのコーヒー。
外から入ってくる爽やかな風。
その全部が心地よくて。
コーヒーはもちろん、トーストもとても好みのパンで、食べながら、店員さんが近くに来たらどこで買えるパンなのか聞いてみようかなと思いながらいただいた。
店内に流れる心地よいジャズを聴きながら、
サービスで付けてもらったモーニングのトーストと、ブレンドコーヒーをゆっくり楽しむと、
小一時間、時間が経っていた。
あまりに早く終わった耳鼻科受診のあと、
少しだけ本を読む時間にしようかと立ち寄った初めてのコーヒー店。
まさかこんなにゆったりとした
豊かな時間が過ごせるとは思わず、
コーヒーを飲み終わる頃にはとてもうれしい気持ちでいっぱいになっていて、
それがさらに私の気持ちを穏やかにさせてくれた。
結局、読もうと思った本は読まずに、
その時に感じたことを、外を行き交う人を見ながら書き留めていた。
全く予定していなかったのに、ホッとする時間をもらえてしあわせだったなぁと思い返し、このあとの予定を少し頭に思い浮かべながら荷物をまとめて立ち上がる。
ずっとにこやかに対応してくれた女性店員さんが、お店の奥で会計を促してくれた。
(レジらしいレジのないお店で、タブレット端末を操作してお会計をしてくれるスタイルだったので、立ち上がるまでお会計の場所がわからなかった私。こういうときに、お客さんが恥をかかずにスマートに振る舞えるような気配りはうれしい)
お店にお支払いしたのは、
コーヒー1杯分、550円。
ありがとうございました、と
にこやかに送り出してもらい、
外に出ようと2、3歩行ったところで
ふと、
トーストがとても美味しかったので、
どこで買えるパンなのか聞こうと思っていたことを思い出し、
振り返って店員さんに声をかける。
にこにこしながら、しかし他のお客さんの邪魔にならない優しいトーンの声で、
トーストのパンはこの辺りで売られているパンではなく、『タカギベーカリー』さんのパンだと教えてくれた。
そして続けて、
『じつは今日、トーストのパンを大きく切り過ぎてしまって。お出しするときに“多すぎるかな…”と思って、お伝えしようか迷ったんですけど😊、、全部召し上がってくださっていたので、うれしかったです♡』と教えてくださり。
私の質問に、面倒がらずに返答してくださったこともうれしかったけれど、
店員さんにとっては“予想以上によく食べるお客”だった私を店員さん目線で振り返りながら、
なんだかすごくくすぐったい気持ちになって、お店を後にすると、外はもうランチタイムを過ごす人たちが行き交う時間になっていた。
今のところまだ『タカギベーカリー』さんのパンは見つけられていないけれど、
きっとどこかで見つけたら、私はあのパンと同じものを探すと思うし、それを購入して、自宅で食べる時には同じようにトーストして食べるだろうな♡
そして、この日に起きた、しあわせな時間を、ひとつひとつ思い出すだろうな…♡
耳鼻科に行くのを忘れそうになって
いつもより出るのが少し遅くなってしまった朝。
それでも、大丈夫♡と
自分の今日という時間を信頼していたら
今日のタスクはあっという間に片づき、
直感のままに足を運んだ場所で感じた
【ささやかなしあわせ♡】
本当にちょっとしたことが重なっただけなのだけれど。
ほんのちょっとのしあわせが掛け合わさって、
すごくしあわせに感じられた♡
心のままに歩いていると、毎日
こんなふうに
誰かにちょっとくすぐられているみたいな
うれしいような はずかしいような
そんなささやかなしあわせに出会えて。
今日も良い一日だな♡
ってほっこりした気持ちになります。