[観察日記]specimen上
まず始めに言っておきたい
題名にも書いてあるが、この話はノンフィクションである
なぜ断っておくかというと、ある生き物に敬意を表したいからである
事実でなければ、この話の意味すらもなくなってしまう
僕は、昆虫が好きだ
小さいフォルムから漂う哀愁や、時に素直な生物に
高校生の頃
クワガタやカブトムシのような昆虫が大好きであった
授業時間、暇な時間を見つけては
クワガタの値段を見て、面白がっていた
そんな調べものをしている時は、あっという間に、授業が過ぎていった
クワガタの写真が画面いっぱいに映していたものであるから、隣で授業を受けていた女子に悲鳴を上げられたこともあった
勿論、先生に呼び出された
でも、自然と悔しくもなかった
そのくらい、大好きだった
五月の暖かくなってきたころ、親からのおこづかいを手にとって、アルキデスヒラタクワガタという種類のオスを千円で購入した
外国産のヒラタクワガタで、買った当初は世話をするのが楽しかった
学校から帰ると、即座に虫籠の前に走り餌の入れ替えや、クワガタに触ったりしていた
餌をよく食べるので籠の中が、ゼリーまみれになる
一回、それが発酵してしまい、とんでもなく臭い匂いになった時は鼻をつまみながら土を入れ換えてやった
その発酵した土に潜っていたクワガタを心から尊敬した
アルキデスヒラタクワガタ、と調べると、短歯型と長歯型がいるということが分かった
どの過程で、短歯になるか長歯になるかは分かってはいないらしいが、これがアルキデスヒラタクワガタの醍醐味らしい。
ちなみに、僕のアルキデスヒラタクワガタは恐らく短歯だった
ちなみに、短歯の方は挟まれると、とんでもなく痛いらしい
幼稚園児の指を切ってしまった、というとんでもない噂があることを後で知ってしまった
飼う前に、調べておいた方が良かったかもしれない
すでに、もう買ってしまったし、普通に触る分には全く挟まれはしないと思っていた
とは思いつつも、一回だけ挟まれた
それは夜中の九時
その日は、いつものようにクワガタにちょっかいを出していた
人差し指を歯と歯の間にいれて、挟むかどうか確認する
しかし、全く挟んでは来ない
これは楽勝だぞ
調子に乗って、指を何度も歯と歯の間に入れて遊んでいた
五回くらい指をいれたとき、いきなり人差し指に激痛が走った
一瞬何が起こったのか分からなかった
見ると、クワガタが思い切り、人差し指の先を挟んでいるではないか!
「すぐに離してくれるっしょ」
昔、飼っていたノコギリクワガタは一瞬で離してくれた
このクワガタもそうだろう、そう思って油断していた
クワガタは僕の人差し指を、奥歯(下に示した歯の部分)でしっかりと噛んでいる
勿論、引き剥がそうとしても離れなかった
クワガタは普段、鳥などが外敵らしい
多分、このクワガタも僕の人差し指を鳥かなんかだと思っているのだろう
ずっと挟んでくる
声が出るほどの痛みだ
持ち上げても、人差し指の先にクワガタがついていた
動くともっと強く噛んでくるので、じっと指を動かさないで待っていた
そうすると、力は弱まった
その瞬間に一気に引き抜こうと思ったが、引っこ抜こうとすると、また力強く挟まれた
プロレスで言う固め技みたいなものか
僕は途方にくれた
と、言うか普通に僕はバカだ
親が見たらなんというだろう
悲鳴を上げるに違いない
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?