映画を観るならハッピーエンドで 〜双極性障害の頭の中 45
みなさん、こんにちは。
双極性障害2型(双極症)のフツーの会社員、パピヨンです。
私は大の映画好きです。
そもそも若かりし頃『美大』を目指したのも、“映画の美術さん”になりたかったからです。
当時はインターネットなどほとんど普及していなかったので、どうやったら映画業界に入れるのか分からず、「“美術さん”と呼ばれているなら美大に行けばなんとかなるのでは?」という単純過ぎる理論から美術大学に行きました。
結局、映画業界とは全く違う道を選びましたが、相変わらず映画は大好きです。
今日は『私と映画』にまつわる記事を記します。
◾️『西太后』の衝撃
私の映画好きは母の影響です。
母は高校生の頃から、雑誌「SCREEN」や「RORDSHOW」(若い方は知らないよなぁ〜)を欠かさず買い込む少女だったそうです。
そして、イタリアや中国の重い映画が大好き。
我が家は比較的早くビデオデッキを購入した家だったので、母は深夜映画を録画しては私に見せていました。
今でも忘れられないのが、最初に見せられた映画が『西太后』だったことです。
今考えるとすごい母のチョイスです(笑)
およそ10歳未満の子供に相応しい映画ではないと思いますが、西太后が次々と繰り出す残酷な仕打ちに当時の私は釘付けでした。両手両足を切り落とされ、生きたまま甕に入れられた東太后の姿を写したシーンは衝撃的で今でも鮮明に覚えています。
ウチの母は、子供だからといってアニメや子供っぽいものを見せることを“良し”としない、少々変わった教育方針でした。
その後も『赤いコーリャン』『ドクトル・ジバゴ』や『自転車泥棒』など、次々と暗〜い映画を「いい映画でしょう〜?」と何度も繰り返し見せられているうちに、すっかり母に洗脳され『暗くて重く無いと映画じゃない!』といった具合に、子供の頃からマニアックな映画世界にどっぷり浸かっていきました。
◾️青春の単館映画館
高校生になると、休日1人で映画館に通うようになりました。
当時は“単館系”と言われるジャンルがありまして。
それらはほとんど渋谷・銀座・新宿あたりに集中していました。
当時、電車で2時間近くかかるところに住んでいたので、せっかく行ったなら無駄なくまとめて3本は観たい。
今ならネットでスイスイと調べられますが、インターネットなんて無い時代です。
懐かしの雑誌『ぴあ』に載っている上映時間と睨めっこしながら、映画館をハシゴしていました。
例えば。
渋谷のユーロスペースで朝イチの回を観てから、Bunkamuraル・シネマでお昼の回を見て、シネスイッチ銀座の夕方の回まで走る!のような具合に毎週プランを立てて、朝から晩まで映画館に入り浸っていました。
私の高校時代の休日はすべて映画。
少々帰りが遅くなっても、“自分の少女時代のように娘が映画にハマってる”ことに母は喜び、全く怒られずに駅まで車で迎えに来てくれていました。
今では懐かしい思い出です。
◾️映画を観るならハッピーエンドで
精神疾患を患って、精神科に通い始めた頃。
“とにかく仕事一辺倒では無くリラックスしなさい”としばしば主治医に注意されました。
アロマとか。
音楽とか。
映画とか。
「あ、ただし映画を観るならハッピーエンドにしてくださいね」
という主治医からの衝撃の言葉。
なんと!!
まさかの映画ハッピーエンド縛りを課せられました。
「先生、最後まで観なくちゃハッピーエンドかどうかなんて分からないじゃないですか!」
当時は“ああ言えばこう言う”くらいに主治医に反発しまくっていたので、言い返していました。これには主治医も苦笑い。
ディズニー映画しか観れないじゃん。
確かに、映画は深く心に響くものなので、見終わった後もズルズルと世界観から抜け出せずに感情を引きずることってありますよね?
それにしても、まさかのハッピーエンド縛り宣告とは…ツラ過ぎる。
私は暗くて重い映画が好きなんだよぉ〜!!
そして。
どーんと抑うつ期に落ち込んだこの冬。
私がアマゾンプライムで観たのは『TAR/ター』です(笑)
すでに観た方は分かると思うのですが、全くもって抑うつ期にはオススメできない重く激しく深く刺さりまくる映画です。
主人公のターは栄光の絶頂期から、徐々に精神のバランスを崩し正気と狂気の境目が溶け始めて行きます。
同じ指揮者の映画なら、絶対に『天使にラブソングを』を観るべきなのは分かってるんですけどね〜(いや、『天使に』もいい映画ですけど)
私は暗くて重い映画が観たい!
ちなみに『TAR/ター』のエンディングシーン、私はゲームに明るく無いので残念ながら解説を見るまで“オチ”の意味がわかりませんでした。
でも、ある意味ハッピーエンドにも見えるエンディングです。
主治医の、「私の言っているハッピーエンドって、そういう意味じゃないんですよ…」という声が聞こえてきそうではありますが。
映画は素晴らしいので、観ていない方は(ウツじゃない時に)ぜひ。
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