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宇宙少女ソニア第三話 洗脳宗教ブロスの会 後編 トラウマパワー 運命愛の思想
ソニアとマイは、ブロスの会に戻っていったミリを奪い返すために、ブロスの会の本部に向かう計画を立てた。その前に、セイワさんから、ミリの過去についてもっと聞くことにした。セイワさんが務める児童相談所に行き、面接室で話を聞いた。セイワさんは、ミリの悲惨な過去を語り始めた。
ミリは、幼少期に実父のDVで実父母が離婚し、実母に引き取られ、シングルマザー家庭に育ったが、うどん屋でパート就労する母親は職場でハラスメントを受け、鬱病となった。
その後、ミリは、鬱病の母親の代わりに家事をやらされたが、母親はミリに暴力や暴言を吐きまくり虐待し続けた。それでも、母親から愛されたいと願い、ミリは耐え続けていた。ところが、ある日、母親が彼氏を連れてき、同棲するようになった。次第に母親はミリを疎ましく思い、「あなたなんか産まなければよかった」と言い続けるようになった。そして、ミリは、母親に迷惑がかかると思い、家出をし、ホームレスとなり、児童相談所に保護され、若手女性児童福祉司のセイワさんがミリの担当となった。一時保護所で保護したものの、母親と会いたくなって、飛び出し、母親のもとに行ったが、拒絶され、そのまま行方不明になったという。
その後、ミリは、弁天池で入水自殺をしようとしたが、ブロスの会の事務支局長の進藤礼子に助けられ、ブロスの会に入信し、住居をブロスの会の本部に定めた。
進藤礼子は、ミリの身の上を聞き、親のようにミリに食事を作ってくれたりした。
礼子が料理した焼そばの味が美味しくて、ミリは嬉しかった。人の心の温かさを初めて知ったのである。
そして、ミリは、人体改造され、特殊な身体能力を得て、陸上選手としてデビューし活躍した。ところが、黄色いテカテカ肌のせいで、出場禁止となり、友達もできずに高校を休学しているという。
その話が聞き終わると、ソニアは、マイと共に、ミリの母親に会いに行くことにした。ミリの母親が改心し、ミリを愛することができれば、ミリのトラウマが癒やされ、プロスの会から脱会させることができると考えたのである。
しかし、セイワによると、ミリの母親は、彼氏に捨てられ、鬱病が悪化し、精神病院に入院中とのことであった。ソニアとマイは、ミリの母親に会いに精神病院に面会に行った。すると、ミリの母親を担当する一人の精神保健福祉士が現れた。
その男は、自ら精神保健福祉士トラウマZと名乗った。怪しい雰囲気の男であった。
「残念ですね。ミリの母親は、自殺未遂し、今、意識がない。」
ソニアとマイは、驚いた。トラウマZは、静かに言った。
「自らのトラウマによる罪悪感に耐えきれず、昨日、飛び降りたのです・・・。」
そして、トラウマ Zは、語った。
「母親の遺書を届けてほしい。ミリに」
ソニアは、トラウマ Zからのミリの母親の遺書を受け取り、ミリに届けることにした。
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ソニアとマイは、弁天池にあるプロスの会の本部に向かった。楼閣の前までやってきたところ、一人の髭を生やした怪しい男が現れた。変態科学者ポーである。
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ポーは言った。
「ミリに会いに来たのか。ミリは、お前らのところには戻らんわい」
ソニアは、言った。
「ミリちゃんは友達です。会いたいの。」
ポーはソニアに言い返した。
「友達ではトラウマは克服できんわい。身の程を知れ。偽善者たちよ!!」
すると、カッときたマイがポーに飛びかかり、ポーの右頬を殴り飛ばした。
「偽善者はあんたたちだよ。弱い人たちを騙して入信させたり、心の弱みにつけ込んで、トラウマをとるて言って、可愛い女の子たちを悪趣味な姿に人体改造し、一生もとの姿に戻れなくしているんだろ!! ひどいよ。」
ポーは倒れたが、ゆっくりと起き上がり、マイに対して、不適な微笑みを浮かべ、言った。
「君のような人が正義を振りかざし、人に心の傷を与えているのだ。私は何も悪いことはしていない。人体改造はミリが望んだことだ。」
「嘘をいうな!!」
マイがそういうと、突然、ミリと進藤礼子が現れた。そして、ミリは言った。
「嘘じゃないわ。マイさん、私は自ら望んで、テカテカの黄色の肌の改造人間になったの。」
マイは驚いた。
「洗脳されているんだよ。気づいてミリ!!」
その時、ポーは、ミリに「これからトラウマ除去の儀式を行う。」と言い出した。
ミリは、神妙な態度で返事した。
「わかりました。私のトラウマをとって下さい」
「これまでの記憶は無くなるが良いか」
「いいです。トラウマに苦しめられるよりもいいです。」
だが、疑問を感じたソニアは、ポーに言った。
「ブロス神って何ですか。本当に人を救うのですか?」
ソニアがそういうと、突然、ブロスの会の楼閣の屋根が二つに分離し、巨大な不気味な像が現れた。
ブロス神像の登場である!
そして、なんとブロス神像が、奇妙な電子音の声で語り出した。
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私は、ブロス。
私は、神ではない。
私は、人間だった。
私が人間だった頃の人生を語ろう。
私は、優しい母親のもとで育った。
私の母親は、あの悪魔のような爆弾で死んだ。
私を守って死んだ。
私は、この世界を恨んだ。
私の手には、母親が作ってくれた
小さなおにぎりしか残されなかった。
母親の形見となった。
私は、世界的に有名な前衛芸術家となった。
それでも、この母親のおにぎりを超える芸術を生み出せなかった。
この世界は、無情である、優しさのかけらもない。
この世界は、人々にトラウマを与え続けている。
だから、この世界を変えるために、私は宗教をつくった。
トラウマを除去できる御神体を作った。
それがブロス神である。
私の人生での最高の芸術作品であり、同時に新しい神である。
私は、「神は死んだ」と豪語するニーチェに負けはしない。
そして、ブロス神に私の形見であるおにぎりを埋め込んだ。
御神体は、愛とは、身代わりであることを教えてくれる。
これで世界は救われる。
それが私がこの世に生まれてきた使命である。
ブロス神を信じよ。
さらば救われん。
その時、大勢の信者たちがぞろぞろと現れ始めた。
そして、一人の信者である30代の貧相な男が言った。
「この世界の誰が私たちに手を差し伸べてくれた。
友達も、先生も、家族も、福祉も、みんな誰も私たちを助けてくれなかった。
ただ私たち無視し、排除した。
私たちは一人ぽっちで苦しんできた。
ブロス神様だけが、私たちのトラウマに向き合い、身代わりとなって、
私たちのために涙を流してくれた。
この世界は腐っている。
あなたたちも気づくべきだ。
ブロス神様の愛に。」
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ソニアは、ブロス神像やその信者の語りを聞くと、涙を流しながらも、言い返した。
「でも、決めるのは、ミリあなたよ。」
すると、ブロス神像がまだ不気味に喋り出した。
「トラウマをとってほしいか」
そして、瞬く間に目から光線を出して、突然、ミリに発射した。
しかし、その時、ミリは、叫んだのである。
「待って、やめて!! お母さんの記憶を無くしたくない!!」
ブロス神像はミリに言った。
「お前を見捨てた母親だぞ。」
ミリはブロス神像に語った。
「一度だけお母さんは私を守ってくれた。
小さい時、お父さんが私を殴ろうとしたら、
お母さんは、私を庇って殴られたことがあった。
お母さんのその記憶は大切なの。
確かに、それからは、お母さんは、心の病気になり、
私にいらつきをぶつけたきたけど・・・。」
ブロス神像は言った。
「たった一度だけの記憶でもか」
ミリは、言い返した。
「たった一度だけだから大切なの!!」
ブロス神像は言った。
「愚かなり。トラウマを無くさなければ、今後、一生、生き辛さと悲しみを繰り返して生きることになるぞ!!」
ミリは少したじろいだ。
その時である。
駆けつけてきた精神保健福祉士のトラウマZが叫んだ。
「ミリ。病院でお前の母親が死んだぞ。」
「ええっ!! 」
「これが遺書よ、ミリ・・・。」
そばにいたマイがそう言うと、
厳粛に遺書を読み上げた。とても短いものだった。
「ミリ。ごめんなさい。私は生きている価値かない。」
ミリは泣き出した。
「私なんで泣いているんだろう。」
ブロス神像は、何かを悟ったように、静かに呟いた。
「子供の愛は、親よりも深い。ありがとう・・・。」
そういうと、ブロス神像の額から御神体のおにぎりが落下し、体がボロボロと崩れ去って言った。ブロス神像に埋め込まれたAIが壊れたのである。その瞬間、一筋の大きな光が天に向かって昇って行った。ブロスのトラウマが、ミリの愛に感応し、浄化されていったのである。
それを見ていたミリは、大きな声で叫んで言った。
「 私は、ソニアたちも、ブロスの会の人たちも、セイワさんも、そして、お母さんも、全部、愛している。私が巡り合った全ての人たちに感謝している。
そして、今は、自分のトラウマも愛しているの。自分の運命を愛しているの!!
この黄色いテカテカな体も愛している。今は、これが私の本当の姿よ!!」
そういうと、ミリは、陸上選手の体操服を脱ぎ、全裸になった。
ミリのサラダオイルを塗られた黄色い体は、夕陽を浴びて、テカテカと光り、美しく輝いた。
ソニアは、思わず、言った。
「ミリちゃん。とてもきれいだよ。全て」
トラウマZは、マントを翻し、語った。
「悟りましたね。ミリ。
トラウマはなくすものじゃないよ。
トラウマはあなたが生きてきた証。
トラウマは生きる意味なのだ。
それがトラウマパワーだ。
自らの運命を愛せよ。
自らの運命を愛せよ!!」
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そして、突然、ブロスの会事務局長の進藤礼子が裸のミリをぎゅっと抱きしめて言った。
「あなたは頑張ってきた。だから、私はあなたに生きていてほしいの」
全てが終わった・・・。
プロスの会は解散となり、その後、変態科学者ポーは残された信者たちから追放された。信者たちは、それぞれの日常の生活に戻っていった。
ミリといえば、進藤礼子が開業した行政書士事務所の手伝いをすることになった。
無論、ミリは、ソニアやマイとも友達となった。
ここに、可愛い女子のピチピチ三人娘チーム「対人援助トリオ ピチピチエンジェルス!」が誕生したのである。物語は、続いていく・・・。
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