突然ですが、沖縄の風ランキング|Report
『風の事典』(1985年、原書房)という本があるらしい。
気象学者の関口武が、日本の風名(風位語)を収集・整理・解説した文献だそうで、わが国では最大の風位語彙集だという。
読んでいない。いつか読もう。
SUPことスタンドアップ・パドルボードをやる人間にとって風は大敵だ。
波も困るのだが、SUPは立って漕ぐだけに風の影響を受けやすい(私は座り漕ぎが多いけどね)。
インフレータブルだとボードの厚みが風を拾ってしまうので、よけいに厄介だ。
だから今日は沖縄の風況を整理する。
せっかくなので、厄介な順に相撲の番付表っぽくしてみよう。
十両級
マハエ(真南風)
夏の時期に安定して吹く南東の季節風のこと。
フェー、パイカジ(いずれも南風)ともいう。
「マハエ」は日常会話では聞いたことがなく、たぶん文語ではないかと思う。
あまり聞かないが、南風の種類には以下がある。
ハエ⇒フェー⇒ヘー⇒ベーという変化。
ウリズンベー(潤初め南風):新芽が出る頃をうりずんといい、その頃に吹く南風のこと。
ボースーベー(芒種南風):梅雨の時期に吹く南風のこと。
タンドイベー(種子取南風):立冬の頃に吹く南風のこと。ジュウガチナチグヮ(十月夏小)といい、一時的に暑くなる。
シワシベー(師走南風):旧暦の12月頃に吹く南風のこと。
幕内級
【東方】
カーチーベー(夏至南風)
夏至の頃、梅雨が明け、南風または少し西寄りの南風が吹く。
南風の中ではわりと強く吹く。
天気は快晴なだけに、海に出られない恨み節がつい口をつく。
【西方】
ミーニシ(新北風)
新暦の10月頃に吹き始める北東の季節風のこと。
ウチナーグチでニシは北を指す(まぎらわしい)。
広義の夏が終わる。
これより三役級
【東方】
ニシカジ(北風)
冬に吹く北風全般のこと。
シベリア高気圧が東シナ海に張り出し、気圧差が大きくなって北風が吹く。
風速10mを超える日もざらにある。
【西方】
ニンガチカジマーイ(二月風廻り)
旧暦2月頃に沖縄近海で低気圧が急速に発達し、突風が吹き海が荒れる。
風向きが急に変わることを、「風がまわる」と表現している。
SUP初心者だと、流されて帰れなくなることもある。
厳密には風の呼び名ではない。
似た用語にシガチフキアゲ(四月吹上)があるらしいが、実際に聞いたことはない。
横綱級
【一人横綱】
テーフー(台風)
いわずと知れた台風のこと。
カジフチともいうらしいが、これも聞いたことがない。
次のような台風にまつわる言い伝えがある。
台風前にはトンボが群がり飛ぶ。
ウミヘビが水面に多く浮遊しているときは台風の兆し。
デイゴの花が例年になくきれいに咲くと強い台風がくる。
雲と地上風と波浪がそれぞれ別の方向のときは暴風となる。
ハイキビの先の葉に節が入るとその数だけ台風がくる。
ざっとまとめると、沖縄の風は吹く方位と季節で分類されることが多い。
ただし、方位は南か北かで、東風や西風、八方位や十二支方位の風の分類はありはするようだが、海人(漁師)でもない限り細かな区分は生死に関わらないため、現代社会では忘れられた存在である。
なお、沖縄島では西風=イリカジは年間を通してあまり吹かないというのが、私の体感だ。
今夜の北風予報は外れたが、ボ・ガンボスの「トンネルぬけて」をしんみり聞きて眠りたい。