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ブリッジが出てくるミステリ小説「メグレ警視」シリーズ

皆さんはジョルジュ・シムノン(1903-1989)によるミステリ小説「メグレ警視」シリーズをご存知でしょうか。シムノンはベルギー出身、フランスで活躍した小説家です。1931年よりスタートした「メグレ警視」シリーズは世界的に人気を博し、長編・短編合わせると100作以上も書かれたのだとか。
日本でも数多くの翻訳本が出版されている他、人気漫画『名探偵コナン』の登場人物である「目暮警部」の名前の由来が「メグレ警視」であることも有名かもしれません。

そんな「メグレ警視」シリーズですが、中には「ブリッジ」が出てくる作品があるので、今回はそれらの作品をご紹介したいと思います。残念ながら、「メグレ警視」シリーズは絶版になっているものが多いので、公共図書館や古書店で探すことをオススメします。

『メグレの途中下車』(1953)

ボルドーで開催された国際警察会議に出席したメグレは、その帰路、学生時代の友人を訪ねると、その町で連続殺人事件が起こり…

こちらの作品は全9章の構成ですが、なんと第5章は「ブリッジの勝負」というタイトルです。この章の内容は、メグレがヴェルヌー家を訪ねる場面です。もてなしとしてメグレはブリッジに誘われますが、メグレはブリッジが出来ないため断ります。すると、ヴェルヌー家の人々がブリッジを始めるのですが、メグレはそのプレイの様子を観察し、それぞれのプレイヤーの性格や人間性を理解するのでした。
ブリッジの場面はオークションのコールや専門用語などを交えた会話や描写がしっかりとされており、ブリッジを知らない方には理解しづらいところもあるかもしれませんが、プレイスタイルやポストモーテムの発言から登場人物たちの人柄を感じ取れることかと思います。


『メグレのバカンス(休暇)』(1947)

メグレは妻とともにバカンスを過ごすため海辺の町へやってくるが、そこで妻が虫垂炎にかかり、手術をすることに。入院する妻を見舞った帰り、メグレは上着のポケットに謎のメモが入っていることに気づき…

ブリッジが登場するのは作品冒頭の「謎のメモ」に気がついた後の場面です。メグレは海に面したビヤホールを訪れ、ブリッジをしている客たちの様子を眺めています。ブリッジをしているのは地元の住民の中でも有力者ばかりで、ここでもメグレの人間観察力が発揮されています。


「世界一ねばった客」

こちらの作品は短編集『メグレと無愛想な刑事』(1947)に収録されている一編です。

サン・ジェルマン通りの「時代遅れのカフェ」であるカフェ・デ・ミニステール。開店は午前10時だが、準備中の午前8時に謎の男が店に入ってきた。店員は追い出したかったが男は居座り、なんと閉店まで同じ席に座り続けたのだが…

このカフェは「常連ばかりがくるカフェ」で、常連客はチェスやブリッジをして、思い思いに時間を過ごしています。


というわけで、今回はブリッジが出てくる「メグレ警視」シリーズ作品をご紹介しました。フランス(フランス語)で執筆していたシムノンの作品に、こうしてブリッジが出てくるところを見ると、アメリカやイギリスと同じく20世紀中頃のフランスでもブリッジを行う習慣があったことが見て取れます。今でもブリッジ大国のフランスですが、フランス文学を読もうという方にとって「ブリッジ」は知っておくべき知識の一つかもしれません。ミステリ愛好家の方もフランス文学愛好家の方も、興味を持たれましたらブリッジを遊んでみてくださいーではー。

(余談)
フランス文学といえば、『八十日間世界一周』にブリッジの前身ゲーム「ホイスト」が出てきたり、『モンテ・クリスト伯』、『星の王子さま』といった作品にも記述があったりします。(気になった方は過去記事もどうぞ↓)


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