白木克洋

https://brickbybrick.jp シェーカースタイルの家具の制作、復元と書籍・文献調査を通して、シェーカーの人々の物作りとその生活の精神性や考え方への理解を深めるための備忘録になります。

白木克洋

https://brickbybrick.jp シェーカースタイルの家具の制作、復元と書籍・文献調査を通して、シェーカーの人々の物作りとその生活の精神性や考え方への理解を深めるための備忘録になります。

マガジン

  • シェーカーとは?

    シェーカーの人々、文化についての基本的なことをまとめています。

  • Fieldwork 2023 現在のシェーカーを眺める

    2023年にシェーカーを眺めるフィールドワークを行いました。かつてシェーカーコミュニティーがあったエリアを中心に各地のミュージアムやコレクション、管理の様子などをレポートにしています。

最近の記事

  • 固定された記事

「シェーカー家具大全」出版のお知らせ

たくさんの方の協力をいただいて、『シェーカー家具大全』誠文堂新光社さんより、9月6日に発売となります。 共著として参加させていただき、シェーカーの歴史や思想、文化について書かせていただきました。もちろん私にとって初めての書籍であり、これから続けていくシェーカ文化の発信と家具製作のキャリアの最初の一歩になるものであると感じています。 アマゾンなどのネットでの予約販売が先行して開始しました。 シェーカー家具大全 書店に並ぶ日が楽しみです。

    • Fieldwork #6 Tyringham

      今回のニューイングランド地域のフィールドワークはニュージャージーを基点にするため2回のラウンドに分け、スケジュールを組みました。 第1ラウンドは、ニュージャージーより北に位置する、ハドソン川周辺のウォーターブリット、マウントレバノン、ハンコックを目的地としていました。 マウントレバノンのヒストリックサイトを散策し、その後、私がアメリカを巡っていることを知って声を掛けてくれたコレクターのMillerさんと合流し、オルバニー周辺の別荘を訪問させていただきました。 個人邸なの

      • Fieldwork #5 Mount Lebanon

        Mount LebanonまたはNew Lebanonはシェーカー教団の中心的コミュニティであり、総本山と言える最初期、最大規模の共同体でした。 この日は分厚い雲の覆う空の下、マウントレバノンは基本的に野外散策の予定だったので、雨を心配しつつ、早朝から散策を始めました。 マウントレバノンは最盛期には600人の信徒が生活を共にし、建築の数は125にも上ったといいます。管理する土地は6000エーカーに広がったと言われます。 この地域は元々ニューレバノンというエリアで、シェー

        • Fieldwork #4 Hancock 2/2

          Hancock Shaker Villageは訪問した2023年時点で、およそ20の建築と20000点を超えるアーティファクト、コレクションが存在しているそうです。 中には復元品もあれば、他のコミュニティ、地域の物も含まれています。 オーバルボックスや椅子をつくる男性信徒たちの工房は、雑然とはしていましたが、たくさんの治具や道具が並んでいました。 復元展示であるというよりワークショップの場も兼ねているような印象です。 ハンコックの主な産業は農業です。特に初期には種子の販売

        • 固定された記事

        「シェーカー家具大全」出版のお知らせ

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        • シェーカーとは?
          4本
        • Fieldwork 2023 現在のシェーカーを眺める
          6本

        記事

          Fieldwork #3 Hancock 1/2

          マサチューセッツ州のピッツフィールドの西部にあったコミュニティはHancock/ハンコックと呼ばれます。 そのシェーカーサイトの管理を行うHancock Shaker Villageは現時点で私たちが訪れることのできる東部のシェーカーコミュニティ跡ととして最大級の土地と建築、コレクションを持つ広大なミュージアムです。 現在も、ヨガイベントやウェディング、季節の催事などが積極的に行われているようで、活力に満ちた空間が広がっています。 他のコミュニティサイトに比べ、観光客の数

          Fieldwork #3 Hancock 1/2

          シェーカーとは?-250年の歴史

           シェーカーの人々がマンチェスターを離れ、アメリカに降り立った日、アライバルデイは1774年の8月6日のことだと言われています。そして、2024年8月6日は250年の節目の日となります。  シェーカーと呼ばれる人々は、正式にはUnited Society of Believer's in Christ Second Appearing(直訳するとキリスト再臨信者連合)という宗教団体の信徒を指しています。イングランドで発生したキリスト教プロテスタントの小さなグループの一つでし

          シェーカーとは?-250年の歴史

          信仰の手段としてのコミュニティー

           シェーカーの四大実践原理は、「懺悔」「独身主義」「資産の共有」「世界からの分離」と言われます。その実践の具体的な手段として、彼らは俗世間から離れ、自分達の理想社会を自分達の手で築き上げ、そこで共同生活をする決断をしました。  これはシェーカーの最初の指導者であるアン・リーの時代ではなく、アメリカに渡り、教団と信徒の行く末を委ねられた3代目の指導者であるジョセフ・ミーチャムの判断でした。  コミュニティーの成立は、1787年のマウントレバノン、ウォーターブリットに始まりま

          信仰の手段としてのコミュニティー

          「シェーカーに何を学ぶか」ー次のステップへ

           「シェーカーに何を学ぶか」というテーマでこのノートを書き始め、アメリカのシェーカービレッジや各地のミュージアム、コレクターの方々と交流をする中で、縁があり、2024年出版の『シェーカー家具大全』で共著として参加させていただきました。執筆にあたり、シェーカーの歴史や文化、思想を総合的に整理する必要があり、その作業が自分にとっても大変良い作業となりました。  そして、このタイミングで家具工房の独立のため、私は生まれ故郷の十勝へ戻り、豊頃という町へ移住しました。  十勝豊頃は

          「シェーカーに何を学ぶか」ー次のステップへ

          Fieldwork #2 Watervliet 2/2

          Watervlietの位置するオルバニー周辺は、特に森林と土壌の問題を抱えていました。特に沼沢地として知られるような土地でした。そのため、当時、シェーカーの人々は比較的安価にこの土地を購入することが出来たそうです。 彼らの入植における開墾作業において、木の伐採に加えて、地質の改善が急務となりました。 彼らは溜池を作り、その土で周辺を埋め立てることで、徐々に居住と農業の可能な土地へ改善していきました。 今もWatervlietサイトにはAnn Lee Pondという大きな池

          Fieldwork #2 Watervliet 2/2

          Fieldwork #1 Watervliet 1/2

          今回のフィールドワークは、アメリカ北東部と中西部にあったシェーカーコミュニティ跡を3週間かけて巡る計画です。 アメリカ北東部はニュージャージに住む友人宅を拠点に、通訳から食事、運転まで大変お世話になりました。感謝の言葉しかありません。 まず初めに、拠点であるニュージャージーから北上し、2時間ほどで訪れることのできるAlbanyへ向かいました。 ニューヨーク州の州都は大都会ニューヨークではなく、実はここAlbanyです。 道中はカナダの山火事による不穏な空気もあったが、アメ

          Fieldwork #1 Watervliet 1/2

          シェーカーに何を学ぶか:フィールドワークの予定

          あっという間に6月になり、慌ただしく日々を過ごしています。 変わりなく家具製作と資料研究を並行して進めています。 さて、1週間後この6月末から7月の中旬にかけてアメリカへ訪れる予定でいます。 シェーカー家具の現物を間近で見ることと、シェーカーコミュニティーの跡地を見学することが主な目的となります。 今回、私は初めて各コミュニティの跡地に訪れることになります。非常に楽しみで待ち遠しい限りです。 シェーカーコミュニティーは最盛期の1830年ごろに約19カ所に広がりました。短

          シェーカーに何を学ぶか:フィールドワークの予定

          「シェーカー家具」と「シェーカースタイル」

           今回は、今月15日、16日に京都文化博物館にて開催される『きょうと椅子』にて、一部配布させていただいたUNOHによるシェーカーについての紹介文に、詳細を少しだけ加筆したものになります。  シェーカーは18世紀半ばにイギリスで活動を始め、1774年に指導者であるアン・リーが数名の信徒を引き連れアメリカに渡りました。イギリスでの黎明期には明確な教義や理念は存在せず、アメリカでの宗教コミュニティの建設を期に教団としての骨格を確かなものとして行きます。  開拓期のアメリカにおいて

          「シェーカー家具」と「シェーカースタイル」

          シェーカーの自給自足と物作り 2/2

          前回に引き続き シェーカーの自給自足と物作りについてまとめていきます。 自給自足の物作り エンフィールドチェア UNOHで製作するエンフィールドチェアは彼らが自分たちの生活の中で使用していた椅子を参考にして製作している物です。 このタイプの椅子は、シェーカースタイルを代表するユニークな椅子としても知られています。シェーカー独自の物作りが生まれ、そして作り続けられた要因として、自給自足と社会との分断はとても重要な視点と考えられます。 コミュニティ創設の1780年頃か

          シェーカーの自給自足と物作り 2/2

          シェーカーの自給自足と物作り 1/2

          シェーカーは18世紀後半から20世紀にかけてコミュニティを形成し、自給自足の集団生活を志しました。 コミュニティはビレッジとも呼ばれ、シェーカーの人々は単にハンコックやマウントレバノンと言った名称で呼んでいたそうです。彼らのコミュニティ、ビレッジは最盛期には19ヶ所に広がりました。 彼らはいずれのコミュニティでも、自給自足というテーマの下で物作りを始めました。 自給自足と物作りのテーマで二回に分けてまとめていきます。 シェーカーの自給自足 シェーカーはアメリカに渡り数

          シェーカーの自給自足と物作り 1/2

          その背景を探ること

          シェーカーのものづくりという言葉が指すものは、非常に幅が広く、200年近く続いた教団としての「大きく一般化された活動」としても、その時代に生きた「個人の営み」としても捉える事ができます。 このようなスケールの違いに注意を払った上で、掘り下げていくことでも、また新たな学びがあるようにも感じています。 シェーカーのものづくりという言葉は、一般的には教団としての、総体的なものづくりを指しているように思います。 壁にかけられた椅子、積み重ねられたオーバルボックス、壁一面の建具の

          その背景を探ること

          オーバルボックスから知る

          シェーカーの物作りを代表するアイテムのOval Box オーバルボックス。時代、コミュニティによってさまざまなサイズで作られたオーバルボックスは、住居や作業場で利用され、ハーブやスパイスの保管や粉末状の物や釘、ボタンのような細やかな物から、液体を除いてはほとんどの物を収納する用途に使われていました。 サイズの多様さやその数には、シェーカーコミュニティにおける整頓、収納の重要さがよく現れています。 UNOH Oval Box No.0 to No.5 (Maple) シェ

          オーバルボックスから知る