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大門坂から熊野那智大社、那智の滝へ

10月3日。夜来の雨は降ったり止んだりを繰り返し、明け方にとうとう本降りになった。昨夜は寝たのか寝てないのかよくわからない。熟睡していた時間は少なかったと思う。

時刻は6時過ぎ。大きな雨音を感じながら、本日の予定を決めかね、なかなか外に出れずにいた。

予定では熊野那智大社に参拝してから、熊野本宮大社へと移動。バスで発心門王子に向かい、そこから7キロほど古道を歩くはずだった。事前の調べでは天気は曇りのち小雨だったので、それくらいなら歩けるだろうと踏んでいた。

しかし蓋を開けてみれば朝から土砂降り。スマホでリアルタイムの天気を見ると終日の雨、午後からは雷雨になっている。山の天気、強弱はあれど楽しみながら歩けるレベルを越えている。発心門王子から歩くことを諦めるとして、そのぶんの予定が一気に空白になってしまった。

結果、とりあえずは熊野那智大社、熊野本宮大社を参拝。その後は翌日に行くつもりだった玉置(たまき)神社に向かうという形で予定を繰り上げた。雨の強さ次第では玉置神社も中止、もう一度予定を考え直す。

大門坂⇛熊野那智大社【和歌山県東牟婁郡那智勝浦】

大門坂入口、雨は少し弱まっている

大門坂は那智大社へと向かう石畳の古道。古くから多くの修験者、皇族、貴族が歩いた道だ。苔むした階段と杉の巨木に囲まれた、いわゆるな「熊野古道」として最も連想されやすい道だと思う。距離が短く景観良好なため、熊野古道を気軽に体験できるルートとして大人気…のはずだが、この日は誰もいなかった。

石畳に入ると木々に遮られて雨はだいぶましになる。霧に包まれて薄暗いが、雰囲気としては自分が想像して求めていたものと一致するので、気分が上がる。

先の見えない石畳の階段が延々と続く。少し心細いが静けさと滴り落ちる雨音が心地良い。

大門坂を抜けると、外界は土砂降りとなっていた。時間が早いため参道のお店はすべてシャッターが閉まっている。滝のようになっている階段をのぼり本殿を目指す。靴はぐしゃぐしゃに濡れているので、気にせず歩く。

この日、最も強い雨が降る
雨雲に包まれ景色は何もまったく見えない

参拝客はちらほらいる。石畳は滑るので砂利道を歩く。参拝後に巨大なおみくじを引いた。中吉。

那智大社の神使は八咫烏(やたがらす)。『古事記』のなかでは、熊野を通る神武天皇の道案内役として登場している。

神社の横には那智山青岸渡寺の立派な本堂があった。そこを抜けると三重塔と那智の滝が一緒に見えるスポットがあるが、三重塔は工事中でシートがかかっていた。

飛瀧(ひろう)神社、那智の滝【和歌山県東牟婁郡那智勝浦】

工事中の三重塔を抜けて、なんとなくの感覚でつづら折りをくだる。途中、脇道に石畳の古道が見えたのでそちらを通ると、飛瀧神社前のバス停に出た。

飛瀧神社は那智の滝を御神体とする社殿を持たない神社。祭神はオオナムジ(大国主命、オオクニヌシノミコト)。入口は上り階段になっているが、鳥居をくぐって進むと下り階段になっている。奈良の脳天大神龍王院と同じく、神域の奥深くへと入っていくようで面白い。

那智の滝、落差133m、滝壺の深さは10m

いつの間にか雨は弱まっていた。境内は霧雨なのか、滝の飛沫なのかわからないような水気に包まれている。滝はまっすぐ落ちているところが立派で迫力がある。霧雲に隠れて空から水が落ちてきているような、むしろ空に向かって登っているような、そんな風にも見える。

滝にさらに近づくため、入場料を払って奥へと進んだ。朱塗りの手すりで囲まれた舞台まで来ると、飛んでくる水がより体にかかる。少し雨も降り始めるが横から飛沫もくるので傘はあまり意味がない。

帰り道、どこから来たのか階段に鹿が居座っていた。滝の音で気取れないのか、こちらが近づいてもなかなか動かずに一生懸命に苔を食べている。少し足音を立てると、鹿はようやくこちらに気づき、軽やかなステップで上へと駆け上がった。「もう一口だけ」と言わんばかりに苔をついばむと、こちらを一瞥してから、そのまま森のなかへと消えていった。

つづく

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