草木染めヨガマットプロジェクト
「草木染め手織のマットを作りたい。」
2017年。南インドの小さな町でそれは始まりました。
南インドのエコビレッジ、オーロヴィルに3ヶ月滞在している最後の週に突然降りてきたインスピレーション。「草木染め手織のヨガマットを作る!」それは世界最大のエコビレッジと言われるオーロヴィルのヨガスタジオでボロボロになった樹脂のヨガマットの山を見たときに閃いたことでした。「ヨガマットってなんてサスティナブルでないんだろう!!宇宙との調和を目指すのがヨガなのに、結果的にヨガがゴミを生産しているなんて絶対おかしい!!」すぐに友人のインド人に布を織る職人を紹介してほしい、と連絡しました。
調べ始めて分かったことは「布を織る」職人というのはかなり減ってきていると言うこと。染めたり、紐を編んだり、裂いた布を織ったりと言う職人はまだいるのだけれど「糸から布を織る」ことができる人はどんどん減ってきていて家に織り機はあっても使っていないと言う職人さんがほとんどという現状でした。そんな中知り合ったのがハンモックを作るシャクティという職人さん。彼は子供の頃からハンモック作りに関わってきていて、地域の手仕事販売所の交流の中で「手織り」を知り、この文化に興味を持ち、文献などを読み漁り、独自に「織り師」を探しあて、その村の職人と交流を始めたとのことでした。私たちはシャクティにお願いし、その村の人たちに草木染めの糸でヨガマットを編んでもらうことを依頼しました。もうインドから発つ3日前くらい、ギリギリの出来事でした。
はじめての草木染め手織ヨガマット
それから半年後、インドからはじめてのヨガマットが送られてきました。私たちが選んだのはバタフライピーやジャックフルーツなどを使って染められた紫と緑の糸。打ち合わせを重ね、オーガニックコットンの白い糸と合わせながら柔らかい色合いで織ってもらえるようにお願いしていました。ちゃんと絵に書いて伝えたつもりだったけど、何枚かはシマシマのストライプにされてしまったり、白を混ぜずにそのままの色で織られてしまったり。インドあるある的な自由さも混じりながら、素晴らしいヨガマットが届き感動!!
その時届いたのは15本くらいでしたが日本で紹介し始めたところ大好評。ヨガをする方はもちろんだけれど、特に「赤ちゃんや動物などがすごく喜んでゴロゴロするから不思議!!」「瞑想が気持ちい!!」なんて嬉しい声をいただきながら、全てのマットがすぐに売れてしまいました。シャクティーに連絡をすると大喜び。すぐに第二弾を送ってくれました。第二弾を開いてびっくり!!
「勝手に生まれた瞑想マット」
インドらしい白い土嚢袋に包まれた荷物を開いてみると、中身はヨガマットの半分のサイズの短いマット。「あれ?」シャクティに連絡をしてみると、「これは瞑想マットだよ!このマットは瞑想にもいいからね!」と、勝手に半分サイズの瞑想マットを作ってしまったようでした。最初は戸惑ったのだけれど、インド人は神様に動かされて直感で動くことがあるから信頼しよう、と、受け止めた半分のマット。これがなんとも使いやすくて大好評。ヨガマットの上に敷いて使ったり、玄関マットとして使ったり、ヨガマットと合わせて使えると2枚持ちしてくれる方も現れたり、ヨガはしないけれど瞑想はするよ、という方に使ってもらえたり、やっぱりインド人の直感は大切だなぁ、なんて感心してしまったのでした。
2年目のオーロヴィルではシャクティーがヨガマットを作っている職人達の住む織物の村に連れていってくれることになりました。「近くだから!」と言って朝の5時に出発。話が見えないまま、みんなで車に乗ってぎゅうぎゅう詰めになってドライブ。
その時の映像がこちら↓
シャクティーが連れていってくれた村は私たちが住んでいた街から車で8時間。インド人の「まぁ、近い」は本当にあてにならないのです。(国が大きいから!!)
ついたところは水道やガスのない小さな可愛い村。電気だけはかろうじてあり、携帯の充電や電球などは使っているけれど、あとはほとんど木や水を使ってエネルギーにしている素朴な村でした。村にはお寺と学校があり、畑があり、生活は身近なところで賄っている感じ。村の人たちみんな仲良く、人懐っこく、私たちがついたら、珍しい外国人に大騒ぎ。「肌の色が白い!!」と大興奮で写真を撮られまくり。「私たち、黄色いんだけどね。」なんて突っ込んでも「white peopleだー!!」と大騒ぎ。外国人がほとんど1人もいない街での久しぶりの反応にたくさんのおもてなしを受けながら村を回りました。
この素朴な村では当然、織物も木製の古いものを使っていて、電気などの外部インフラに頼らずに、一段一段手作業で丁寧におっていました。お金のために仕事をしているのではなく、仕事が暮らしの一部としてある。あたりまえの暮らしがそこにありました。仕事が暮らしのリズムを支えている。仕事は労働ではなくてクリエーション。人々は仲良く、笑いあいながら仕事をし、子どもを共に育て、男も女も仲良く、ゆっくりおしゃべりをしながら火を起こして日々の糧を調理していただく。そんな、お金に支配されない理想の豊かな暮らしがそこにはありました。
織り物マスター
「彼は織物マスターだよ。この集落の織物を取りまとめている。」
村の一番奥の織り場で、そう言って紹介されたのは白い褌のおじさんでした。
とにかく元気なおじさん。細い糸から織っている私たちのヨガマットはこの織物マスターにしか織れないそうで、全てをこのおじさんが1人で織っているとのことでした。「工場に頼んだ方が安い」ということで、どんどん工業化が進み、村ではほとんど仕事がなく、安く短期間で作れるさき織りマット(工場で余った布を使っておるリサイクルマット。300円くらいで売られている。)だけは村の女達が織り、庶民の日用品として販売できているものの、糸で布を織ることのできる本物の職人の数はどんどん減ってきているそうです。村の若い男達は遠くの工場に出稼ぎで働きにいって、織物とは関係ない仕事につくようになり、村に残るのは女子どもだけ。村に必要なのはお金ではなくて、織物の仕事。彼らの文化を表現していく仕事。お金を送られることで壊れていく、世界の「発展途上国」を見て来ているだけにまだ循環があって、豊かさを守ることのできるこの村は私にとっての希望でした。
「仕事があれば、この村の職人達が織物を続けられる」
そう思ったシャクティは、彼らにヨガマットの発注をして、ヨガマットを織ってもらい、街で販売するというプロジェクトを思いつき、数年前から村に通って活動していたのでした。日本と同じように「プラスチック樹脂のマットこそがヨガマット」という雰囲気が浸透しているインドの街では、なかなか布のマットは売れずに困っていたところ、私たちとの出会いがあったのでした。インドの化学染の糸はなかなか発色が強く、その成分も不自然に強いというのが私の印象。感覚的にそのあまりに強い発色のマットをヨガで使う気にはなれず、環境負荷の少ない草木染めの糸でマットを編んで欲しいというのが私達の要望でした。「織り物の村を守りたい」「職人達が織り続けられるように、仕事を生み出したい」というシャクティの思いが私たちを引き寄せ、「環境負荷の少ない地球に還るヨガマットを作りたい」という私たちの思いがシャクティを動かし、草木染めヨガマットの製作が始まっていたのです。一年前はプロジェクトをちゃんと動かすことに必死でゆっくり話をすることもできませんでしたが、ヨガマットが出来上がった2年目にしてやっと、どうして私たちがこのマットを作るようになったのか、お互いの思いを深く知り、どんなエネルギーに動かされていたのかを知ることになったのでした。
コロナ禍やインドあるあるで郵送が遅れ(3年越しでやっと全部届きました!)挫けそうになる瞬間もありましたが、やっぱりこのマットを見るたびに、この素晴らしいマットを世に送り出したいし、この素晴らしいマットを織る褌のおじさんに、これからも織物を続けてもらいたい。あの村があのまんま素朴なまんま続いてほしい、そのためにあの村に織物の仕事を繋げていきたい、と思うのです。
この2年間、細々とではありますが、草木染めヨガマットは全国のヨガを愛する人たちのもとに飛び立っています。
アサナ(ヨガのポーズ)だけではなく、カルマヨガ(行為のヨガ)の一部として。
環境に優しい素材を暮らしに取り入れていくこと、環境に負荷の大きい素材を暮らしの中から取り除いていくことは、世界への暴力を減らします。そしてそれは自分への無意識な暴力を無くしていく事でもあります。ヨガが教えてくれるアヒムサー(非暴力)の精神は、搾取から生まれる創造ではなく、愛から生まれる創造の仕方を教えてくれます。作り手、届け手、使い手、みんなの優しさと思いやりに満ちた生産、創造だけが、これからの世界を本当の意味で満たしていってくれます。
このヨガマットを暮らしの中に取り入れることを通して、そのことが心とカラダの隅々まで浸透していきますように。褌のおじさんたちの美しい素朴な暮らしが纏うエネルギーを、私たちが受け取れますように。
世界中に優しさと思いやりを込めた創造(=生産)の想いが広がっていきますように。そんな願いを込めて、この草木染めヨガマットをご紹介しています。
織物の村を支えるために購入をしたい方はこちらから↓
マットについてもっと知りたい方はショップから↓
ヨガマットの旅の動画はこちらから↓