[最近読んだ本の話#3] -「ごめん」が言えなくなった時-
2023/5/9
大好きだけど、どつきたくなってしまう時もある。
手がかかってしんどくて投げ出したくなる時もある。
できないことが増えて、忘れてしまうことが増えて寂しいときもある。
だけどやっぱり大好きな家族で、一緒に過ごす時間は大切だ。
そんな地味だけど大事な気持ちを思い出させてくれるそんな本です。
著者のにしおかすみこが家族(認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父)と過ごすドタバタな毎日を綴った本。
話は著者が引っ越し先を契約しようとした日になんとなく実家に帰ったところから始まる。
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「ただいま」
月曜日の十一時過ぎだったか玄関で靴を脱ぎながら、久しぶりの実家臭がゆらゆらまとわりつくのを感じる。・・・・・・うちってこんなに臭かったっけ?
(本書 1.実家が砂場になっていた P.9)
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家族の介護はこんなふうに唐突にやってくるの人の方が多いのではなかろうか。この時の著者も「実家に戻って住もうなどと、その時は夢にも思っていなかった」と言っている。
たまたま実家に戻ったら急に様子がおかしい家族がいて、自分の世話ができなくなっている。「どうしたどうした?」と手助けしているうちに介護生活が幕を開ける。
認知症という病気に対してどう接したら良いのかの知識もないまま、以前のように一緒に生活をしようとすると予想もしない反応が返ってくる。急に怒り出したり、泣かれたりして「自分はどうしたら良いのだ」と途方に暮れる。。。
この本のおすすめなポイントは、著者のつぶやきだと思う。
著者も例にもれず急に始まった介護生活に圧倒されている。だけど毎時間のようにハプニングがあり疲れてくたくたで泣きたくなる状況の中で、読者が思わず「ふっ」と笑ってしまうようなつぶやき(ツッコミ)を入れていく。
毎日変わらない家族の様子。なんなら時間が経つにつれて悪化していく状況の中、「ふっ」と笑えたのであればその時間は愛しいものになるのではないか。
イライラして家族に八つ当たりしてしまっても「ごめん」の一言が言えない時だってある。それでも家族の日々は続いていくのだから、少しでも笑えるタイミングがあったらいいなと思う。
本書は介護に疲れた私たちの気持ちに寄り添い、変わらない現実の受け止め方を変えてくれる。
これからも介護をしている家族の気持ちが少しでも楽になる本を紹介していきます。自分が楽になりたいがために探している本です。
同じ状況のあなたにも効果があったらいいなと思います。
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