見出し画像

えんがわ日和#2 -ちゃちゃらんちゃちゃん-

「ちゃ、ちゃらんちゃちゃん…月が〜出たで〜た…」
電話越しで大好きな盆踊りの音楽を歌うと、祖母はニコニコしながら楽しそうに手拍子をしていた。

今日は高齢者施設に入居している認知症の祖母にテレビ電話をかけた。
祖母がカメラに映った私を孫だと理解できた瞬間ニカッと笑ってくれたのを見てホッとする。
もう私の名前は言えないのだが、私の結婚式を強烈に覚えてくれているようで私のことを「お嫁ちゃん」と呼んでいる。
お嫁ちゃんでもなんでもいい。私だとわかってくれればそれでいい。そして、名前を言えなくなっても結婚式を覚えてくれているのは孫としてとても嬉しい。
だけど、正直いつ私のことをわからなくなるかと思うと不安である。1分1秒でも長く私のことをわかる時間を伸ばしたいから今日も私は電話をかける。

「ちゃ、ちゃらんちゃちゃん…」楽しそうに手拍子をする祖母にずっと会えたらいいのに。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?