どこにでも行ける自由(播州赤穂にて)
だいたいご存知と思いますが、
わたしは結婚していません。
一人を貫きとおすつもりはなかったのに、
まあなんとなくそうなってしまいました。
高校生のわたしが知ったら、
嘆き悲しみそうだけど、
ごめんなさい。
案外それなりに幸せにやってます。
どうかどうか、嘆かないで笑
三十代の頃、
シングルの同僚たちは、
さっさとマンションを購入していました。
人生設計ちゃんとしてるなぁ
と感心しながらも、
わたしはとてつもない力を持つ反面教師(母)の影響で、
ローンを組むのも嫌だし、
(何しろ借金がイヤ)、
その場所に固定されるのも嫌で、
しがらみをなるべく持ちたくなかった。
マンションや持ち家を持ちたいなど、
これまで微塵も思ったことがありません。
すっと姿を消した、母と同い年のお友達は、
「いや、持たないほうがいいかもしれない」
アトリエ兼住居をぼうっと眺めながら、
ぽつんとつぶやいていたことも忘れられないのです。
彼女は、生涯シングルで、パタンナーの仕事をされていました。
1mmも、
一軒家を持ちたいと思ったことのないわたしが何を血迷ったか、
はじめて「いいなぁ」と思ったエピソードを。
四か月ほど前、
淡路の洲本に行ったときのこと。
歩いて歩いて、路地を曲がって、ふと横を見ると、
一軒の住居に目がとまりました。
表に白い木の柵があり、
日陰の面積の多い小さな庭には草木があり、
平屋のおうちは多少年期がはいっていて、
白い塗料がところどころまだらにはげて、グレーになっている。
わたしは立ち止まって、眺めながら、
〝雨が似合いそうなおうちだなぁ”
と、思いました。
雨にぬれるあじさいとか似合いそう。
白い塗料がはげてグレーになっているところ、
なんだかあーちゃんに似ている。
このおうちは、あーちゃんに似合いそうだ。
雨が降る日に、
ソファーに腰かけて、
窓からその様子を眺める光景が思い浮かびました。
「で、それからその平屋のことが気になって」
「うんうん、なんでもあーちゃんファーストやな?」
「続き聞いてよ」
ここは、播州赤穂の観光スポット、
きらきら坂にあるカフェにて。
古民家(平屋)をオシャレにリノベーションしています。
昨年、ミラクルが重なって、十二年ぶりに再会できたともだち。
「せめて、年一回は会おうよ」
という約束を今年も、赤穂で果たすことができました。
昨年もそうだったけど、
彼女とは直前であっても、
なぜかしらスケジュールがぴたっと合う。
まるでしくまれていたかのように。
「で、初めていいなと思った平屋の続きだけど」
「うん」
彼女に会う二日前、
ひさしぶりに淡路の洲本に行きました。
イベントだらけの四日間の休日、
わたしにとってはゴールデンウィークです。
用事をすべて終えたとき、
「ああ、ひさしぶりに、あーちゃんに似合うおうちを見てみたいなぁ」
気まぐれにそんなことを思い、
どこにあったかわからないうちを、
推理しながらあっちこっち歩いたのです。
見覚えのある目印を見つけ、
「あ!この通りだ!」
とわくわくしながら白い柵のあるおうちを目がけて足早に向かうと。
あれ?
なんということでしょう。
平屋と思っていたおうちは、
実は二階建ての大きなおうちで、
そのおうちの左隣に平屋の、
ほったて小屋がありました。
二階建てのおうちは、記憶のとおり、
白い外壁が少しはがれてグレーっぽい箇所もあるから、
間違いはないと思います。
どうやら、脳は、小屋(物置)と住居の外壁をドッキングして、
都合よく記憶していたようです。
しばらく、脳の勝手な妄想に、
唖然としながら眺めていたのでした。
「いかに記憶って正しくないか、の証拠よね」
「ほんま」
「続きがあって」
「うん」
二階建てのおうちは、
よく見ると、昭和のテイストが感じられる模様入りのガラス戸から、
布団や毛布らしきものが積み上げれているのが見えますが、
人が住んでいる気配を感じませんでした。
前回は無人の印象はなかったのに。
でも、表に「売り」とも何も看板は出ていません。
やや、訳ありのように感じました。
「ハンコ押してきた!?」
「んなわけ!あんな大きなおうち買う資金力ないよ!」
笑いながら、
それでも過去に1mmも、家がほしいと思ったことがないわたしが、
ほんのり、淡路に移住するのもいいな、
と明るく、空想できたことはよかったと思えました。
しかし、
脳のでたらめな記憶よ 笑
このあと、
雑貨屋さん「あれやこれ屋」さんに向かう。
ちょうどイベントをやっていて、
出店者さんたちとお話していたら、
尼崎から先日、赤穂に単身で引っ越してきた、
といういくつか年上の方がいました。
子育ても終わり、
自由で、身軽で、
行きたいところに行きたいなって。
なるほど~
来るべきときが来たら、
そのとき行きたいところに行けばいいんだ。
そこは、
淡路かもしれないし、
赤穂かもしれないし、
また別の場所かもしれない。
リトルがきっと、そのときふさわしい場所にきっと連れていってくれるから、今はあれこれ考えなくていい。
またときどき、
パフェをいただきながら、
今いてくれる友達を大切にしながら、
大好きな絵を大切にしながら。
最後までご覧いただきありがとうございました☺