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やっぱり敵わんなあ

今週末、大阪の実家に一人で帰った。

本当は年末年始に家族3人で帰省するつもりだったけど、うっかり百貨店で高級おせちを予約注文してしまったばっかりに行けなくなってしまったから(両親にはナイショね)、京都でnoteの友人と会うついでに、ふらっと立ち寄ったのだった。

みんなとの待ち合わせ場所は、実家の近くにある焼肉屋さん。

少し早く着いた僕が座敷のテーブルで待っていると、ほどなくして、父と母と双子の弟が現れた。

赤いチェックのネルシャツ姿の父は、相変わらず実年齢(78歳)よりもぐっと若く見えて、子供の頃から憧れていたそのハンサムすぎるルックスをキープしていた。

そんな父はあの独特のいたずらっぽい笑顔を浮かべながら、僕を一瞥するなり、

「なんやまた肥えたんとちゃうか?」

と先制パンチ?を仕掛けてきた。

母と弟は、「そんなことないよ〜」としきりにフォローしてくれたけど、確かに前回会ったときよりも2kg弱体重が増えたから、さすがの父の観察眼に内心、タジタジとなってしまった。

そして、タッチパネルであーだこーだみんなで言い合いながら、料理を注文した後、本当に四人だけでこんなふうにご飯を食べるのはいつくらいだろう?と思うくらい、久しぶりのN.O.T.E家の晩餐が始まった。

最初こそみんなで、父が先日行った矢沢永吉のコンサートの話題など他愛のない話で盛り上がっていたけど、気づいたら父と僕の会話の応酬を、母と弟がハラハラしながら見守るという構図に変化していた。

というのも、僕も父もこの久しぶりの邂逅に明確な目的を持って臨んでいたからだ。

その目的とは、すなわち

僕は

父と母と弟を安心させたい

であり、

父は

僕や僕の家族が大丈夫なのかちゃんと確認したい

というものだったと思う。

だから、父は、母や弟が、まあまあと何回か諭すくらい踏み込んだアドバイスをしてくれし、それに対して、僕も決してはぐらかすことなく、感謝の気持ちを述べながらも、自分たちの考え方や今後のビジョンについて丁寧に説明した。

確かに客観的に見たら、僕も妻も息子も決して順風満帆な状況とは言えなかったから、父が心配するのは当たり前だった。

でも、まず僕のことは、話している内容以上に僕の話しぶりを見て安心、いや信頼してくれたと思う。

ただ不登校の息子(孫)と先日の肺炎にかかってしまった妻に対しての不安は僕の話だけでは払拭できていない様子だった。

それにしても、自ら口下手を自認して僕たちが子どもの頃は家ではほとんど無口だった父が、この日はとにかくよくしゃべる、しゃべる。

それに負けてはなるものか、と僕もぺらぺら喋るから、母と弟は完全に蚊帳の外になってしまっていた。

でも、二人に申し訳ないと思いながらも、僕はこの父との会話のラリーを楽しんでいた。

帰宅後、一計を案じた僕は、カメラ電話で、妻と息子に電話をかける。

スマホ画面を父と母に見せながら、祖父母と孫の久しぶりの対面を演出したというわけ。

そしたら、孫の顔を見るなり、あのダンディな父の顔が見る見るうちにフニャフニャに破顔してゆくのが分かった。

確かに、食事中にも、孫のことは実の子供以上に可愛くて仕方がない、って呟いていたけど、その言葉が紛れない真実だということが本当に分かりやすすぎるくらいよく分かった(笑)

その後、居間(決してリビングではない)のコタツを囲みながら家族四人、みかんを食べながら、昔みたいにぐだぐだ過ごした後、たまたま僕が持ってきていたじいちゃんの形見の銀塩カメラ(Nikon F)で、記念の集合写真を撮って、その日は終わったのだった。

そして翌朝、始発の新幹線に乗るために、まだ空が薄暗いうちに、父が運転する車に乗って出発する。

ハンドルを握りながら、父が僕に語りかけてきた。

「あんなふうにいろいろ言ったけど、昨日、〇〇(孫の名前)の顔を見たら、思っていた以上に元気そうで安心したわ」

その一言に、おお僕の一計は成功したぞ、と心の中でガッツポーズした。

でも、妻のことはまだ心配していたから、帰ったら改めてちゃんと彼女と一緒に対策を考えようと肝に銘じた。

そして、駅に到着する直前、父はとてもさりげなく、でもとてもしっかりとした声で、

「俺が死んだら、お母さんのことをよろしく頼むな」

と僕に告げたのだった。

「う〜ん、去り際もカッチョすぎるぞ。」

人(特に母)を小馬鹿にするとか、いろいろ駄目なところもたくさんある人だけれど、やはり父には敵わなんなあ、と改めて思ってしまった。

でも、今回はそれ以上に嬉しかったことがあったことに、このとき同時に気づいたのだった。

それは、今までは会話が途切れたときは必ず僕から話題を振っていたのだけど、今回は、ずっと父の方から話しかけてくれたということだった。

そんなささいなことがなぜだかとてもうれしくて、気づいたら僕の瞳には、まるで朝露みたいな水滴が溜まってたのだった。

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