田舎に帰れない!
こんな曲でも聴きながら、読んでくださいな。
田舎っていいよね!
なんというか、自分が水呑み百姓だった頃の記憶を蘇らせてくれるディテールの宝庫だし。
例えば、
ばあちゃんちの居間と台所を仕切る木の枠に変な模様の入った擦りガラスがはめこまれた扉とか、
麦茶の入った、水滴がついてにぶく金色に光った真鍮製の大きなやかんとか、
和式のぼっとん便所は夜行くのがすごく怖かったのはなぜだろうとか、
仏壇のある部屋に飾られている大小さまざまな小判が飾られた額を見て、これいったいいくらになるんだろうとワクワクしたりとか、
タンスの引き出しを漁ると必ず出てくるどっかの銀行のノベルティの灰皿とかに勝手に胸ときめかしたりとか、
まあ意味があるかないかといえば、間違いなくないんだけど(笑)、どれも本当に自分の心の深層部にしっかりと刻まれている記憶ばかりだ。
そんな僕にとっての田舎の一番の思い出は、
幼稚園の頃、あたり一面田んぼだらけのおばあちゃんちの二階の畳の部屋で寝ていたときに聞いた汽車の警笛?の音だ。
田舎ならではの純度100%のガチの暗闇と静寂に少しビビッていた都会っ子の僕は、突然、
\ポッー!/
というあの音がどこか遠くの方から聞こえてきた瞬間、とても安心したし、それ以上に、うまくいえないけど、川平慈英風に言えば、まさしく
\くぅ〜!/
となったのであった。
しかし、祖父の遺産相続などのお定まりのゴタゴタがあったせいで、あのばあちゃんちにはもう20年近く帰れていない。
それは、おばあちゃんっ子だった双子の弟にとってとてもショック過ぎる出来事だったから、つい先日もその状況を打開するアイデアを彼に提案したところ、
「お願いだから、もうそっとしておいてほしい。」
と言われたばかりだ。
しかし、なんてことはない。
本当は彼のためなんかじゃなくて、自分が田舎に帰りたかっただけということに今更ながら気がついた。
そう、メタバースだVTuberだ言われているこの令和の時代に、それでも旧石器世代の僕は、たまに田舎印の油を身体に差すことで、自分はちゃんと不完全な肉体を持つhumanbeingだよねと自覚したいし、そして、そんな自分をまるごと抱きしめたい、と思っていたりしている。
ああ〜田舎に帰りてえなあ!