ペダルを踏みこんだーいつでも

「ペダルを踏み込んだーいつでも」

息子がフォートナイトをやりながら、口ずさんだ歌が、間違いなく聴いたことがあるはずなのに、どうしても思い出せなかった。

そして、めっちゃ名曲なのに！と地団駄を踏んでいると、お風呂に入ろうとした妻が、去り際に

「坂道じゃない？」

と言ったけど、絶対違うし、たぶん、ゆずの「夏空」から連想した発言だと思ったら、案の定そうだった。

まあ、前から分かってはいたけど、いろいろとざっくりしすぎな人である。

仕方がなく白旗を上げた僕が、グーグル先生に尋ねたら、その曲は、

僕がめちゃくちゃ好きだった女性ヒップホップシンガーの歌で、ということは、必然的に、とてもニッチな曲なわけで、これを息子がいったいどこで知ったのか、という新たな疑問が生じたけれど、それについては、なんだかうまくはぐらかされてしまった。

まあ、細かいことはともかく、

親子の趣味はなんとなく似てくる

ただそれだけの話なのかもしれない。

でも、趣味くらいは似てもいいけれど、僕みたいな人間には絶対になるなよ

残念ながら、その夜はそんなふうに言いたくなるような気分の夜だった。

まあ実際には言わなかったけど。

代わりにあの歌詞を僕も口ずさんでみた。

ペダルを踏み込んだーいつでも

君だけを見つけたこの目に

あまりにもたくさんのことが飛び込んできてー

うん、やっぱり名曲だ。

そして、やっぱり

僕みたいな人間には絶対になるなよ

なんてかなしいことはもう二度と思いたくないから、こんなにも臆病で嘘つきでダサいお父さんではあるけれど、また今日から諦めずに頑張ることにするよ。