四五歳を過ぎた頃から水を飲むだけで太っていくとはよく言ったものだ。 由美は、今日もダイエットのため、川原でウォーキング中だ。歩いたところで痩せるどころか日に日に太っている気がして、ふと足並みが遅くなり、川面に目が行く。 一枚の葉っぱが流されている。途中岩にぶつかりながらも流れには逆らえず、どこまでも流されている。 由美が物心ついた頃は高度経済成長期に入っていて、いつも競争させられていた。由美は、一生懸命勉強もして、部活もして、それなりの成績を修めてきたことが誇りである。
夜の九時三十分に授業が終わる。今日は金曜。土日は休み。サッサと来週の授業準備を終えて、十時には帰りたいなぁと思ってファイルなどを片づけていたら、 「せんせーって鯰食べたことあります?」 「鯰は食べたことないなー」 「俺、鯰さばけるんっすよ。めちゃくちゃ美味いっすよ。」 「鯰ってどっかに売ってるの?」 「釣るんっすよ。俺明日、霞ヶ浦に鯰釣りに行くんです。」 ここは、世田谷区の隣の狛江市にあるちいさな塾である。そこで私は教室長をしている。といっても、チェーン店のうちの一店舗