解決策は
夫のいびきが酷いので、今を挟んで別々に寝ている。にもかかわらず毎朝四時ごろには私の部屋のドアを開け顔を覗かせ、
「今日は何曜日?」
「えー、ドアの前に”今日は●曜日”って書いた紙が貼ってあるでしょ。見てないの?」
「いや、どうせならお前の顔見て聞いた方がいいから」
「そうかあ、美人の女房の顔がそんなに見たいのね」
「ぶ人だろ、お前ちゃんと鏡を見てきたら」
「あ~ら、鏡よ鏡よ鏡さん、こんな亭主にはもったいないほどの女房です」
まるで版を押したような、こんなやりとりで一日が始まりだしたのは認知症の夫が要介護3になってからだ。それまでは、新聞を見たり、自分の時計を見たり、カレンダーの前でしばし考えながらも、自分で曜日の確認をしていた。
そもそも、曜日を気にするのは、月水木曜日にデイサービスがあるからで、それをとても楽しみにしているからだ。
そこはNPO法人で仲間は、程度の差こそあれ皆認知症で、10人前後。毎回、みんなで今日一日を何をするか決めてから動き出すらしい。天気が良いと、公園やらいろいろなところに出かけ、昼食は外食したりみんなで作ったりとかするそうな。とにかく、いろいろな事を同じ仲間とするのは楽しいらしい。
デイサービスの日は、九時過ぎに迎えがあるので曜日を聞かれるのは20回程度ですむ。しかし、それ以外の日は最悪!テレビの前にも冷蔵庫のドアにさえも、”今日は●曜日”って書いた紙を貼ってあるのだが……
もう私は、20回目からは聞こえないふりをして、無視することにした。
そうしたら
「お前、聞こえないの。耳hが遠くなってくるのは認知症の始まりだよ。調べた方がいいよ」
さすがに頭にきて、一日に何十回と聞かれるのが、私にとっていかにストレスになっているのかを話したら、しばらく黙っていたが、
「俺だって好きで忘れているんじゃない。お前が言ってくれた時にちゃんと覚えるんだけど、すぐ忘れちゃうんだよ。どうしてこんなふうになっちゃったんだろうな」
しみじみと、初めて言った夫の言葉だった。
私は返す言葉がなかった
そして、エンドレスの一日がまた始まっていく。
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このエピソードは水頭症手術前です。しかも、まだ、そこまで悪くなってないころ。このあとさらに症状が進みました。
ちなみに、水頭症の手術をしたあとは、自分でも新聞で確認するようになりました。母にも聞きますが
先生には、認知症が進んでいるから、水をぬいたけど、記憶力とかは改善しないといわれました。でも、自分でも確認するようになったのが素晴らしい!
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