小説「風の華」序章(4)
校舎の裏庭は静かだ。たまに園芸部の生徒たちが来て、小さな畑を耕したり、苗を植えたりしているのを見るくらいだ。
華は、潤が来るのを待っていた。
「人の口に戸は立てられぬぞ」
そんなセリフをどこかで聞いた気がする。
潤と翠が二人きりで歩いていたという話は、一日であっという間にクラスメイトたちに広がってしまった。
この際、二人のことなどどうでもいい。
(なんで、わたしまで巻き込まれなければならないの)
華は不愉快だった。いても立っても居られない思いで、昼休みに潤を呼び出してもらうよう、凛に頼んだのだ。
昼食をすませた生徒たちの歓声が遠くからきこえてくる。学校のフェンスの上を、ちぎれた雲が漂っている。華はなんだか自分だけが取り残されたような気持ちになった。
「華ちゃん」
ふいに後ろから呼ばれて、華は我に返った。
「え?」
あらわれたのは、翠だった。華は胸の鼓動が早まるのを感じた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?