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銀河鉄道999 2巻 第8話 永遠という残酷

「化石の戦士」
停車駅 第6惑星

 999が置石をされました。
 昭和のころはわりと簡単に線路に入れたので子供の遊びで線路に置石をすることもありました。しかし今では重大事故につながるのでそんな事をすれば厳しく罰せられます。
 かなり大きな石だったらしく999は脱線し、岩だらけの星に不時着してしまいます。これは銀河鉄道の安全管理に問題があると言わざるを得ませんね。

 しかしそんな不祥事もこの星の異様な光景に忘れ去られてしまいます。
 なんと岩の表面をよく見ると無数の人体が掘られているのです。しかもメーテルによるとこれは誰かが掘ったものではないとの事なのです。

 この状況をみて「Dr.ストーン」を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし999は40年前の作品なのでこちらが元祖と言えるかもしれません。ただ、人が石になるというモチーフは古代の神話よりあるのでそれほどめずらしいものではないと思います。むしろ松本氏の発想が素晴らしいのはこの後の展開です。
 この珍しい人の彫刻は常に盗掘の対象になっているようです。そういえば鉄郎のお母さんも機械伯爵に剥製にされていました。機械の体がもてはやされるこの時代には永遠性を表すものに価値があるのかもしれません。それも本来有限である生身の体は特に珍重されたのではないでしょうか?
 そして鉄郎はこの世にも珍しい光景に我慢ができず列車を降りてしまいます。いつの世も若い好奇心に勝てるものはないですよね。
 そして美しい女性の石像を見つけました。

「いくらなんでもこりゃあんまりだ 自然の岩がこんなすごい形になるはずがあるか!!」

 まわりにはたくさんの骸骨が転がっています。鉄郎が少しづつこの星の秘密に気付きはじめたとき、1人の男が日本刀で切りかかります。鉄郎はなんとか一命はとりとめるものの背中に大きな傷ができるのでした。

「あとかたもいたみもなくなおせるのに・・どうせだからなるべくかっこよく盛大にぬい目の残る旧式なやり方でぬってくれっていったのはあなたよ鉄郎」
 メーテルも呆れています。

 でもこの気持ち男の子ならわかるでしょう。「俺ケンカしてきたぜ・・」というやつです。そしてこの傷は今後鉄郎のトレードマークになっていくのです。
 しかしこんな大怪我をしてなぜ助かったのか理由は後でわかります。

 怪我をした際にパスを盗まれた鉄郎はメーテルと一緒に取り戻しに向かいました。先ほどの女性の石像のすぐ近くに宇宙船の残骸が横たわっており、2人は中に乗りこみます。
 そんなとこに入るなんて危ないなと思ったとたん、案の定あの男に襲われました。しかし今回は鉄郎が戦士の銃を持っており、男は撃たれます。

 死に際に男は化石化ガス雲により仲間がみな石になってしまったと語ります。そして長い年月盗掘者との戦いに嫌気がさし、盗掘者ではない鉄郎に撃たれて死にたかったというのです。
 初めは石になった仲間を守るために戦っていた気持ちはよくわかります。しかし長い月日がたつうちに守っているのがかつては仲間だった石の塊だと気付かされたのではないかと思います。
 少し薄情だと思われるかもしれませんが時間というのは時に残酷なものだと思うのです。単調な仕事、介護、ストレスなど短時間であれば何でもないのに時が経つに連れて自分を壊す凶器に変わる事もあるのです。

 この男は何年戦い続けていたのでしょうか。おそらく元に戻る事はない仲間たちを、初めは全て守るつもりだったと思います。しかし最後は一番大切だと思われるあの女性の石像を守ることだけが男の信念を保っていたのではないでしょうか。

「なあ もし化石を元にもどすことができるようになったらやってくれよな」
 最後に一縷の望みを鉄郎に託して男は息絶えるのです。
 
「時間の静止した星が宇宙には所々にある その止まった時間が再び動き出した時宇宙の歴史がどう変わるのかだれにもわからない 動いている星も止まっている星も遠くから見るとみな同じようにまたたいているだけだ」

長い時間だと思っているのは人間だけで宇宙からみると人の一生など瞬きする間の事なのでしょう。
 切ない無常感を残してこの物語は終わります。

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