2度目の就職の話 【薬局編 ⑭】
当時の私は妊婦さんの身体を心配するよりも、周りの私への目が冷たく厳しくなっていくことに追い詰められていました。
そして前職の退職間際の頃から感じていたおなかの違和感…毎朝、急に便意を催すものの粘液だけが排出されるといったことが続き、それがいつしか粘血便に変わっていました。
母にそういった身体の変調を相談すると、
「トイレの壁のお父さんが作った物入れに注入軟膏があるわよ。」と父がストックしていたであろう大量の注入軟膏を指差すのみでした。
いまいち効かない気がするけれど、それを使う毎日。
ストレスと謎の体調不良が、日毎に私の体重を奪っていったのでした。
残業をする桐島さんのところへ技術部長が来て言いました。
「本当に聞いていた以上に会話の内容が訳分からないわ。」
私の噂話でした。
ふたりとも苦笑いをしています。
確か技術部長に薬局に入っていただいていた昼休みに仕事とは関連のない哲学的な話をしたことを言っているのでしょう。
訳分からないって、自分の理解力のほうに問題があるのにそんな言い方をする人間もいるのか…と驚きましたが、技術部長も桐島さんもこの機に及んでもまだ私が自分の状況(解雇されるか否か)を分かっていないと感じたのでしょう。
その数日後の朝、出勤してくると、病院の建物の前にひとりのOL風の女性が立っておられました。
OL風のかたは私に訪ねました。
「薬局はどちらかご存知ですか?」
すらりの背の高い笑顔が素敵なかたです。
「私もちょうど今から行くところです。ご案内しますね。」
私はそのかたの雰囲気を見て、なぜ薬局を訪ねて来られたのかその場で察知したのでした。
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