日本のデザインコンペは閉鎖的か? ③
どんなコンペにおいて、公平性は絶対ですよね? それがなければコンペは運営する意味がないどころか公に悪影響すら及ぼしかねないというのが私見です。
前回記事の続きです。
日本の主要デザインコンペにおける以下の問題点ですが、これが問題になる理由を説明していきます。今日は残りの問題2〜4にふれていきます。
[ 主な問題点 ]
問題1 審査員の主要メンバーが毎回変わらない
問題2 審査員も出品でき、投票できる
問題3 出品作品が誰が作ったかの情報がわかる
問題4 会員のみ応募が可能
※以上の問題はコンペ運営団体により、該当しないものもあります。
問題2
審査員も出品でき、投票できる
問題3
出品作品が誰が作ったかの情報がわかる
あるコンペティションにおいて審査会場に入らせていただいたことがあるのですが、これは不思議な光景でした。
そのコンペでは審査員自体は自分の作品には応募はできないのですが、他の審査員の作品には応募ができる。しかもどの審査員の作品かは情報を知ることもできる。そして考えます。
「これは公平なのか?」
つまり審査員が自分たちで評価をしあいながら、その他応募者からの作品も裁いていくわけですね。微妙ですよね。おそらく審査側も公平性を念頭に置きながら選考はするのだと思いますが、同じ傾向の作品を毎回出していれば、さすがにプロですからどの審査員が作ってきた作品かはわかるわけです。応募者の情報がわかる時点で作品評価の公平性はほぼないに等しい。
ではそれはなぜか? 純粋な作品への評価に「人」への評価が入る可能性が生まれるからです。
作品評価 (作品評価+人評価?)
大方のコンペにおいて作品の裏には「出品ラベル」というものを貼ります。このラベルは作家と作品をひもづけるためのものですが、それを審査会場で作品の裏を返せば誰が作ったのか見えてしまうのも微妙だなと。
以前出品したアメリカのあるデザインコンペではこの問題は非常に厳しくとりしまってました。まず出品ガイドラインには、作品上に作家を特定させる情報の一切を載せるなというルールを設けていたり、それがわかる場合は応募者に対して「直せ」とわざわざ指示を国外から飛ばして来たりと、審査体制における「公平性」が厳重に保たれているのが伝わってきてました。
問題4
会員のみ応募が可能
会員のみが公募作品に応募できるというクローズドの制度は今まで上げてきた3つの問題を超えて、珍しい体制だと思います。もう本当に不思議。
運営側の意図はわかりませんが、おそらくは
・クローズドにして年齢限定の受賞枠を設けることで、この受賞枠目当てに入る会員を増やしたい?
→ 実際わたしを入会を勧められた方は、これを推されました。
・国内のデザイナー育成のため?
→ もしこれが理由だとしても、コンペまでクローズドにする意味はあるのか疑問は残ります。
どうでしょうね。
いずれにしても、デザインコンペに鎖国はいるのか?ですね。
競争は内輪だけでしましょうねってことなんですが、日本のこのデザイン団体に関して言えば、世界のデザインの流れからみたときにかなりの独自路線でデザインの趣向が育ってきています。これをよしとしてきた結果、今の体制があるのだと思いますが、もう古いんですよ。やり方も考え方も。
地球の裏側からでもメールで作品を添付すれば数秒でモノは届きます。そんな時代に国内だけでやる意味はなにか? 仮に百歩ゆずって、クローズドでやることで国内のデザイン文化の醸成を狙っているのなら、鎖国を解いた後の日本の経済成長の背景にあったものが物語っていると思います。成長とは常に異質なもの同士が刺激しあい、ときに融合しあってより強い品種が生まれ、場合によっては革新的な表現が生まれえます。猫や犬も雑種の方が生き延びるでしょう? 関係ない?
後さらにいえば国内の「会員限定」なんて謎のルールもやめて、国内の「会員外」を含めることで競争を増やせばいい。今は就職せずに新卒が起業する人たちも増えていますし、デザイン業界に入らずにデザインを独学で学ぶ方や副業として仕事にしてスキルマーケットで頑張る方々も増えてきています。その人たちも含めていけばいいのではないかと。
このシリーズの初回でも語りましたが、クリエイティブの質の向上を狙うのであれば、条件は以下です。
・公平に審査する体制。
・クローズド体制の撤廃。
・ライバルを増やすことによる競争の激化。
これにつきます。
日本国内だけで仲良くしのぎ合う意味はもうないんですよ。
[結論]
審査員は審査だけ。コンペ出品を不可に。
作家の情報を審査時から隠す。
コンペ年齢枠と条件の撤廃。受け入れをオープンに。
くどくどと、批評してきてすみません。ここまであげてきた問題の全ては、いくつかの団体側から提起されているものではなく、わたしが内部の方との親交を通じて、長年にかけて個人的に疑問視してきたことを一度言葉にして整理して、皆さんに伝えて共有するに値する内容だと考えましたので書きました。
後続のデザイナーが少しでも理不尽な思いをしないために、記事で何かのきっかけを作れれば。わたしとしてはそれだけです。
次回はこのテーマの流れで、ついでに以下をお話しておきます。
「デザインコンペ出品は、成長に必要か?」