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5年国語「銀色の裏地」(光村図書)の魅力を探る—子どもの成長を描く物語の教材研究
5年国語「銀色の裏地」の教材研究
今回は、5年生の国語教材「銀色の裏地」について教材研究を進めていきます。この物語は、子どもたちが友人関係の変化や孤独感を経験する中で、どのように前向きな視点を持てるかを描いた作品です。
1.作品の概要
主人公は理緒。クラス替えで親しい友人と離れ、一人になることへの不安や孤独を抱えながらも、新しい友人関係を築いていく物語です。そんな理緒に影響を与えるのが、高橋さんの存在です。
高橋さんが語る「銀色の裏地」の話を通じて、理緒は困難な状況にも希望を見出せることを学びます。雲の裏には太陽の光があるという比喩が、作品全体を象徴するモチーフとして登場します。
2.物語の構成と読みどころ
物語は「導入 → 葛藤 → 転機 → 変化」の流れで展開されます。
① 導入(最初の場面)
クラス替えで親しい友人と離れ、理緒は孤独や不満を感じる。
「三人いっしょじゃないなら、公平に一人ずつにしてほしかった」といった理緒の心情がリアルに描かれている。
② 葛藤(理緒の心の揺れ動き)
友人関係の変化に適応できず、気持ちが晴れない。
母親の「今日もいい天気」という言葉に反発するが、これが後の伏線となる。
高橋さんとの出会いを通じて、新しい関係性が生まれ始める。
③ 転機(プレーパークの場面)
高橋さんが「銀色の裏地」の話をする。
「すべての雲には銀色の裏地がある」ということわざを通じて、視点を変えることの大切さが示される。
④ 変化(結末)
理緒は「曇り空の向こうに太陽がある」という考え方を受け入れ始める。
母親の「いい天気」という言葉の意味を理解する。
以前の友人関係に固執せず、新しい関係を築こうとする兆しが見られる。
このように、物語は「成長の途中」で終わることで、読者が自分の経験と重ねて考える余地を残しています。
3.作者の工夫
① 会話のリアリティと子どもの心理描写
「三人いっしょじゃないなら、公平に一人ずつにしてほしかった」という理緒の気持ちは、子どもたちにとって共感しやすい。
友人関係の変化に対する理緒の複雑な感情が丁寧に描かれている。
② 象徴的なモチーフ「銀色の裏地」
初めは「曇り空=沈んだ気持ち」として登場するが、最後には「雲の向こうに光がある=希望がある」という新しい視点に変わる。
この比喩表現によって、読者は自分の経験と重ねて考えることができる。
③ 高橋さんのキャラクターの配置
最初は理緒が苦手意識を持つ相手として登場し、少しずつ関係が変化していく。
高橋さん自身も「最初から理緒を助けようとしたわけではない」ため、自然なキャラクターとして描かれている。
④ 母親の言葉の伏線
物語の序盤で母親が言う「今日もいい天気」という言葉が、最後に「視点を変えることの大切さ」として回収される。
一見何気ないセリフが、物語全体のテーマにつながる工夫がされている。
4.まとめ
「銀色の裏地」は、
✅ リアルな心理描写 で子どもの感情を丁寧に表現し、
✅ 比喩や伏線 を活用することで、読者が自分の経験と重ねやすい物語になっています。
✅ 物語は「成長の途中」で終わり、読者が自分で考える余地を残していることも特徴的です。
この作品を通じて、子どもたちが 「視点を変えれば前向きに生きられる」 ことを学べるように、授業の中でしっかりと問いを立て、深い学びへとつなげていきたいですね。次回は、この分析をもとにした授業計画を投稿予定です。
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