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「トイレのないマンション日本列島としての原発立国体制」が当面してきた根本的錯誤,原子力エネルギー依存症の後始末につながらない議論の記録(前編)

 ※-1 「原発を語る自由はあるのか? -言論を萎縮させる見えない力(ちから)-」という討論会が2012年4月に開催されていた

 その討論会が開催された日時は,2012年4月11日であって,「3・11」のちょうど1年と1カ月あとになる。開催場所は,弁護士会館クレオABC,壇上に登ったパネリストは,フリージャーナリストの志村嘉一郎と当時俳優であった山本太郎の2人,司会を務めたのは東京弁護士会人権擁護委員会委員佃 克彦であった。

 注記)前後する記述の出典は, https://www.toben.or.jp/know/iinkai/jinken/pdf/gennpatsu20120411.pdf である。この会議(パネルディスカッション)の場において志村嘉一郎と山本太郎が交わした全発言は,このリンク先住所をのぞけば,読める。

 以下に山本太郎の発言から一カ所,志村嘉一郎の発言から3カ所の抜粋して引用する。これら引用は,要するに「日本の原子力村」という存在をめぐり,それも2011年の東電福島第1原発事故以前におけるその〈権勢ぶり〉が語られた中身に,とくに止目してなされている。

 ▼-1 (山本太郎から)

 そこのホームページに書いてあったんですよ。「持続可能なエネルギーではありません」って。

 原発は沢山のゴミを生んで,そのゴミを何万年も保管しなければならないのにその問題を先送りしているんだと。つまり,核のゴミの処理・保管の方法がなにもみつかっていないということが書いてありました。

 ガラス固化体にして地層処分みたいな形にしても100年単位でしか管理できない,しかもその耐久性さえも分からない,というようなことが書いてあったんです。

 「なるほど」と。原子力ってそういう問題をはらんでいたんだということをそのときにしったんです

 ▼-2(志村嘉一郎から)

 a) 電力業界は「チェルノブイリは炉が違うんだ」といっていました。「炉の形が違うし,ロシアは技術が未熟だ。日本の炉はもっと技術が安定しているし全然違う。」とか「日本ではああいう事故は絶対に起こらない」と説明をしていて,私もそれをそのとおりだと思っていました。
 
 補注)いまとなっては〈笑い話〉にもなりえない「日本側の『根拠のなかった過信のほど』が指摘されていた」が,思うにこの慢心ぶりのあげくのはてが東日本大震災によって惹起された東電福島第1原発事故の惨禍発生だったという結末になる。

 東電側がまともに,もっと真剣になって,超巨大地震の発生が日本古代史からの物証によって「確実に襲来してくるという予測」は事前に察知できていたにもかかわらず,「営利資本の本性」をむき出しにしたために,東電福島第1原発事故を起こさせてしまった。

 その事実は同じ超巨大地震にみまわれた東北電力の女川原発は,しかしかろうじて事故発生を防ぎえたとはいえ,ともかく防潮壁を事前に構築しておき高波の被害に耐えた事実に比較して,東電福島第1原発事故の発生は「未必の故意」に相当した。

 「アマゾン通販」から「参考文献」として紹介するが,たとえばつぎの本がすでに公刊されていて,そうした問題点を真っ向から指摘・批判していた。

 2023年に発行されたこの本を書いた島崎邦彦については,この「アマゾン通販」で上の本を紹介するだけのつもりだった。けれども,この本のすぐ下になんと,2001年にすでに公刊していたつぎの本も書いていた。

 2001年に「あした起きてもおかしくない大地震」は2011年3月11日午後2時46分に東日本大震災となって発生した。ところが,現在の2025年1月現在では南海トラフ地震という超巨大地震の発生が80%の確率で,つぎのように予測されている。

 政府の地震調査委員会(委員長・平田直東京大学名誉教授)は〔2025年1月〕15日,マグニチュード(M)8~9程度が想定される南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率を,これまでの「70~80%」から「80%程度」に引き上げたと発表した。平田委員長は「(80%程度とは)いつ起きてもおかしくない数字」と述べ,引きつづき「備え」を進めるよう求めた。

 注記)「南海トラフ巨大地震の30年内発生確率『80%程度』に引き上げ 政府地震調査委」『Science Portal』(科学技術振興機構)2025年1月17日,https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20250117_n01/

南海トラフ地震の到来予測

 以上,関連する話題に触れておくために,関連する別の材料を途中に入れて紹介したところで,本論に戻る。

〔記事に戻る ↓ 〕

  b)「司会: そのような認識はいつ変わったのですか?」

 志村嘉一郎〔から 〕  やっぱり昨年3月11日の地震ですね。テレビをずっとつけっぱなしでみていました。福島の原発が爆発して,記者会見には東電の社長・会長が出てこない。それから,通産省,経産省の記者会見もしどろもどろということで,「これはおかしいぞ」と思いまして,われわれはだまされていたんじゃないかと感じました。

 補注)東電福島第1原発事故の経過が展開されていくなかで,つぎのような出来事があったが,この事実をわれわれがしることになれば,この国の中枢部に救っている病巣に対して非常な不安感・不信感を抱くのは,あまりに当然である。

 以上,パネリストとして「フリージャーナリストの志村嘉一郎と当時俳優であった山本太郎の2人」が登場し,「3・11」の東電福島第1原発事故を境に,われわれの原発体制に対する基本認識がすっかり変わらざるをえなくなった事態を,語っていた。

 関連させては,「3・11」直後,つぎのように説明される事実が記録されていたので,こちらも併せて紹介しておきたい。

 日本科学技術ジャーナリスト会議・小出重幸「福島第1原子力発電所事故とその後事故調査委員会報告書から考える」『日本原子力学会誌』第63巻第2号,2021年2月から〈当該する段落〉を引用する。

 ここでさきに,中村幸一郎関連の画像を挙げておく。2011年3月12日の時点においてこの審議官の発言を聞いた政府・当局は,この本当の事実を国民たちに伝えたというので,即刻更迭した。

この指摘「原子炉における核燃料溶融」は
原子力核工学の初歩的知識で簡単に当然いえる事実であった

ところがこの中村幸一郎審議官はまずいことをいったとして更迭された
「ホントのことはいっちゃダメ」ということであった

 事故の対応のまずさ,混乱,失敗,それはだれにも起こりうることだが,失敗に直面してもそれを直視し,事実を語ろうとしない行政官,原子力技術者たちを,人びとは信頼できないのだ。

 信頼失墜に結びつく未解明のエピソードが,いくつも残されている。

 〔2011年〕3月12日,原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官が,炉心溶融(メルトダウン)の可能性を発表したあと,この事実が政府によって撤回され,中村審議官も更迭された。

 補注)これは「真っ赤なウソ」のその1。炉心溶融(メルトダウン)の可能性は〈事実の必然性〉に関する認識の表明であって,可能性の範囲での事実把握としては,りっぱというか当然のなりゆきであった。

〔記事に戻る→〕 また,3月14 日には,東京電力が官邸に「炉心溶融」の情報を伝えたあと,東電は「炉心溶融」の言葉は使わないよう求められていると判断した対応をとり,それ以降,5月の発表まで,炉心溶融の事実は国民に隠され,信頼はいっそう,失墜した。実際には誰がどう発言して,組織的な情報隠しがおこなわれたのか,経緯は明らかにされていない。

 補注)これは「真っ赤な嘘」のその2。何々という言葉を使わないからといって,その言葉が意味する事象が起きていないと思いたがるのは,悪しき言霊感覚による知覚症状のマヒを意味し,なんら科学的根拠にもとづく発言ではない。

『日本原子力学会誌』第63巻第2号,2021年2月,21頁

〔記事に戻る ↓ 〕

 志村嘉一郎〔から 〕 東京電力が株を持っている上位30社のなかに,テレビ局は東京放送ホールディングスを66万5280株,テレビ朝日を3100株持っているんですね。その保有目的は,「当社事業の円滑な遂行のため」
と書いてあります。

 なぜ電力会社がテレビ局の株をもっていることが遂行のためになるか分かりませんが。それから,フジテレビの場合は,フジテレビと,それからフジホールディングスの両方の監査役を前の東電の社長だった南さんがやっていますね。

 NHKは,経営委員に東電OBを抱えていた。日本テレビは読売系ですから,読売と日本テレビは正力松太郎さんがつくった。正力さんとは原子力発電を進めてきたいちばんの神様みたいな人で,これはもちろん原子力推進ですね。

 あとテレビ東京は日本経済新聞が大株主。日本経済新聞はいま,原発推進です。ということで,テレビ局はがんじがらめにからめ取られているんです。

 それから,東京電力の広告宣伝費が年間大体210億円です。電力会社全体だと年間900億円くらいになるんじゃないかと思われます。これで新聞にも広告を出しますし,雑誌にもテレビにも出すわけです。

 本にも書きましたが,朝日新聞はオイルショックのときに広告がなくなっちゃって意見広告を紙面に載せることを解禁した。そのときに電気事業連合会が原子力の意見広告を出しててきて,これを朝日が受けいれた。だんだん朝日新聞の記事本体にも原発推進の考えが入りこんでくる。

 そしていつのまにか朝日新聞の編集のほうも「ノー・バット」を「イエス・バット」にして,原発はどうしても必要だという論調に変わったのです。読売新聞はもともと賛成ですし,毎日新聞も反対から賛成に変わった。

 〔志村嘉一郎から 〕 東京電力に2011年9月現在で天下りが51人いるんですが,そのうちの32人が警察官僚です。その32人のうち1人が警察庁のキャリア官僚で,残りの31人が各県警の出身OBです。だから,51人のうちの31人が各県警の出身の警察官。

 これがどこに散らばっているか分かりませんが,こういう人たちはおそらく反対派の情報とかいろいろな情報を取っているんではないかと思います。異常ですね。

 いずれにしても東京電力というところは情報を取るのはすごいです。テレビも新聞も全部チェックしています。もしかしたらこの会場にも来ているかもしれません。

 そういうすごいところですから,やっぱり気をつけなくてはいけないと思いますね。(2012年4月11日の討論会からの引用・終わり)

 「3・11」によって発生した21世紀の記録に残る原発の過酷な事故,東電福島第1原発事故にもかかわらず,当時,腰が抜けてしまい身動きできなくなったような東電の社長清水正孝の代わりになって,それこそ八面六臂の対応(活躍ではないそれ)を披露したのは,自分の娘を正孝に嫁入りさせていた当時の東電会長勝俣恒久であった。

 この人のなんというか,高慢チキそのもので,初めから人を食ったかのようにみえる威圧的な顔つきは,いまもなお非常に印象が強く残っている。先日,2024年10月21日,83歳で他界していた。

東電福島第1原発の太平洋側に防潮壁を作る予算をケチった
元東電会長・社長勝俣恒久

この画像は国会において並みいる議員たちを前にして
この表情であったという証拠写真らしき一葉


 ※-2「〈迷走プルトニウム〉葬られた『19兆円の請求書 反旗翻した経産官僚の懸念が現実に」『毎日新聞』2025年1月24日 05:30,最終 1月24日 05:50,https://mainichi.jp/articles/20250123/k00/00m/040/163000c

 1) この記事が昨日,2025年1月24日の午後になって毎日新聞社から配信されていた。本ブログ筆者は実は,いまからほぼ8年前の2016年11月7日に,その『19兆円の請求書-止まらない核燃料サイクル-』(2004年4月2日公表,2005年12月4日更新)という文書の存在に気づき,ネット上から入手した。

 今日,現在でもその文書がみつかると思い検索してみたが,つぎのリンク先住所に公開されていた。これは「絵・画像」としては,当該のリンクが表記されない形式(絵図化が不可らしい)なので,アルファベット中心の表記にしておく。

  ⇒ http://kakujoho.net/rokkasho/19chou040317.pdf

 その文書は「21世紀になってからの原発問題の深刻な様相」の展開を,より現実に即して説いていた事実に接したのをきっかけに,本日のこの記述として更新,再生し,活用することが有益ではないかと感じた。この1頁目だけとなるが,紹介しておく。

日本の原発が電源に占める比率をこの「往時」の3割は無理としても
2割にまでは「戻したい」と必至に画策している
のが経済産業省エネルギー庁

 そこでまず,『毎日新聞』が昨日(2025年1月24日)配信した当該記事が,日本の原発体制をめぐりいったい,そのなにを,しかも『19兆円の請求書-止まらない核燃料サイクル-』を材料にとりあげ,議論しようとしていたのか,この点をしることから本稿の記述を開始したい。

2025年1月23日『毎日新聞』の池田知広が撮影した画像

この画像の上部に出ている文句に関しては
この脚注欄から出てつぎの本文で触れることがあった


 いまさら説明するまでもなく誰にでも既知のCMとして,「やめられない,止まらない」という,カルビーの「かっぱえびせん」の宣伝用のキャッチコピーがあった。このうたい文句は,スナック菓子の歴史に残る名コピーとしてしられ,現代では慣用句のひとつとして使われるまでになっている。

 この「止(や)められない,止(と)まらない」という台詞でヤユ的にされる対象に挙げられていたのは,日本の原発体制であり,核燃料サイクル事業の,まるで「カゴに入れられたハツカネズミがみずから勝手に輪の中をクルクルと走る」あの様子に似た「これまでの経緯」であった。

 2) ここからは『毎日新聞』が2025年1月24日に配信したその記事そのものを引用する。なお,もう一度その記事の出所を明示しておく。

 ⇒「〈迷走プルトニウム〉葬られた『19兆円の請求書 反旗翻した経産官僚の懸念が現実に」『毎日新聞』2025年1月24日 05:30,https://mainichi.jp/articles/20250123/k00/00m/040/163000c

 a) 原発の使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」は,再処理工場が完成しないままコストが膨張し続けている。だが約20年前〔2005年のこと〕,この事態を予想し,警鐘を鳴らした経済産業省の官僚たちがいたことはあまりしられていない。なぜ警鐘は葬られ,政策は見直されなかったのか。

 同時公開の記事があります〔引用する記事のなかにリンク先住所が指示されているほかの記事〕 〔が以下の2点の記事〕

  ・核燃料サイクル事業費,工場未完でも22兆円超 さらに膨らむ見込み   ・費用かさみ続ける核燃料の「全量再処理」 利害絡んで進まぬ見直し

同時公開されていた関連の記事

 「見て見ぬ振りはできない」

 「19兆円の請求書-止まらない核燃料サイクル」。20数ページからなるこんなタイトルのスライド発表形式の非公式文書が国会議員やマスコミの一部関係者に配られたのは,2004年4月ごろのことだった。関係者によると作成したのは,経済産業省で原子力などを担当していた中堅クラスの6人だ。

 b) 文書内で請求書と表現されたのは,電気事業連合会がその年の1月に公表した資料「原子燃料サイクルバックエンドの総事業費」のこと。2006年から40年間で総額18兆8000億円がかかると試算していた。

 文書は「建設費用はうなぎ登りに膨らんでいる」「核燃料サイクルについてはいったん立ち止まり,国民的議論が必要ではないか」と痛烈に指摘した。

 当時,欧米各国は核燃料サイクルの中心となる原子炉の開発に失敗し,経済性にも疑問が生じていたため,構想からつぎつぎと撤退していた。

 ところが国内では楽観的な見通しで計画が立てられ,巨費の支出がみこまれていた。そうした状況下で経産官僚たちに課せられた任務は,巨費をいかに広く,薄くみえないように電気料金を通じて回収していくか,ということだったという。

 c)「肥大化の恐れがある実態をしってしまった以上は,国家公務員として,みてみぬふりをして国民を裏切るわけにはいかない」。今回,毎日新聞の取材に応じた官僚の1人は,「反乱」に踏み切った当時の心境をこう語る。2004年2月から約2カ月間,勤務時間外に議論を重ねて文書を作成した。

 問題提起の時期には意味があった。建設中の六ケ所再処理工場(青森県)で,放射性物質を実際に使用した試験がおこなわれる直前だったのだ。試験のあとは,長大な設備系統が高レベルの放射性物質で汚染されるため,工場を廃止した場合は除染や廃棄物処理に1兆5500億円かかると見積もられていた。

 一方,汚染前に解体すれば,3100億円で済む。官僚たちには「試験が始まってしまえば,後戻りができなくなる」との危機感があったのだ。いまも正しかったと確信。

 d) しかし,2004年12月にウランを使った試験が強行された。作成メンバーだった別の官僚は,新幹線に乗っている時に「六ケ所再処理工場で試験開始」のニュースが流れるのを電光掲示板でみて,心底がっかりしたことをいまも鮮明に覚えている。

 2006年3月には実際の使用済み核燃料を使った試験もおこなわれ,再処理工場は高濃度の放射性物質で汚染された。

 試験強行は,再処理工場の建設中止によって,使用済み核燃料の行き先がなくなり,原発を止める事態になるのを避けるためだったとの見方が強い。結局6人のうち数人は,原子力の担当を外された。

 e) 問題提起から20年余りが経過したが,再処理工場はいまだに完成していない。当初の完成予定は1997年だったが,トラブルが多発し,安全対策の強化が求められるなどして延期が繰り返されてきた。2024年8月には27回目の延期が決まり,いまは2026年度完成予定だとされている。当初計画から約30年も延びたことになる。「請求書」の額はいまや22兆円を超えた。

 「やっぱり費用は増えていたのだ」。官僚たちは問題提起が正しかったことをいまも確信している。「再処理工場は動かず,お金がかかり膨らんでいるのに,無関心な人が多すぎる。電気料金を通じて長年にわたり広く薄く負担しているのは国民なのです」

 以上,『19兆円の請求書-止まらない核燃料サイクル-』(2004年4月2日公表,2005年12月4日更新)を,現在になってとりあげてみなおし,吟味ししてみた『毎日新聞』の記事である。

 その文章が作成され配布された当時は,おおげさにいえば経済産業省エネルギー庁関係者たちの「反乱的な含意がこめられた文書」であったものとなっており,その後は実質,黙殺状態におかれつづけてきた。

 しかしながら,現在にまで至っての話題としてみるに,核燃料サイクル事業はその願望していた核心がなんであったのか,いかなる意義(というよりは問題:難点)があったのかを,あらためて再考する必要がある。

 このたび,『毎日新聞』が記事を制作し,2025年1月24日配信した記事の見出しが『19兆円の請求書 反旗翻した経産官僚の懸念が現実に」であったわけだが,日本原発史にとって観過できない文書の存在となって,それなりに意味を現在になっても,十二分にもちつづけている。

 以上の記述部分は本日,2025年1月25日に書き下ろした段落であった。このことを断わるのは,つづいて記述される以下の部分が実は,ほぼ8年前に一度書いて公表していたものだが,ブログサイトの移動にともないお蔵入りさせていた文章であったものが,「本日の記述の論題」にドンピシャリ的中した内容であったのを思い出し,これをつぎの※-3以下に連結させるべき諸章として復活・再掲することになった。


 ※-3 2016年11月6日のNHKの放送が廃炉問題の至難さをとりあげ放映したら早速,翌日の日本経済新聞が「原発の必要性を間違えて・力説する」,それも『原子力ムラの使徒』の立場から「原発不可欠説」を祈祷する識者の見解を「寄稿させて」いた

 2025年になっても同じ状況にあるが,原発推進派の懲りない面々がまだまだウヨウヨ生存しているこの国の内部は,※-2までに論及されてきたごとき,すなわち「亡国へと向かわせるしかない原発エネルギーの利用状況」にさいして,

 高速増殖炉によって核燃料が国産化できるなどといった妄想を唱える原子力工学者が,社会科学的知見を決定的に欠如させたその立場でありながらもなお,意図的な観点をもって扇動的に「原発推進論」を,そして同時に「核燃料サイクル事業」の必要性も主張する「この国的な実情」は,まことに非科学的かつ反合理的の極地に突進したがっていた。

 1)「〈NHKスペシャル〉廃炉への道『調査報告 膨らむコスト~誰がどう負担していくか』」

 この番組は,チャンネル・NHK総合テレビで,2016年11月6日(日) 午後9時~午後9時55分に放映されていた。ジャンルはドキュメンタリー・報道特番である。「番組内容」は,こう説明されていた。

「概要」  廃炉など福島第1原発の事故に費やす費用が膨らんできているが,東京電力だけでなく国民が負担することでそれを賄っている。廃炉をどう進めるか,コスト面から考える。

「詳細」 廃炉など東京電力福島第1原発の事故に費やす費用はどれほどなのか。NHKが独自に取材したところ,膨らんできていることが明らかになった。

 これらの費用は本来,東京電力が負担することになっているが,それが難しいため国民が一部を負担することで仕組がなりたっている。40年とされる廃炉を進めるためにコスト面で課題となっていることはなにか,負担の仕組はどうなっているか,そして今後に向けてなにが必要か,考える。

 補注)東電福島第1原発事故現場の後始末事業が「あと40年で片付く」と自信をもって請け負える専門家は,1人もいない。当面の話としてならば,あと1世紀は「ともかく,そのための期間とみなし覚悟しておく」必要があると,ひとまず断わるほうが無難である。

 2) 出演者ほか,語り;西島秀俊。

 註記)この注記のアドレス(次記〔 ↓ 〕のもの)は,番組表に関するものであって,今日の時点ではこの期日の前後関係に関連はないものとなった。それでもひとまずリンク先住所としてここに,備忘の形で置いておくことにした。

 ⇒ http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2016-11-06&ch=21&eid=24094&f=46

 さて,関連の頁においてはさらに,この番組がつぎのようにも解説していた。

      =廃炉への道 2016 調査報告 膨らむコスト
              ~誰がどう負担していくか~=


 メルトダウンした3つの原子炉を同時に「廃炉」にする,世界でも例のないとり組み。その長い道程を記録していくシリーズ「廃炉への道」。
 
 福島第1原子力発電所の事故から5年半が経ち,核燃料の除去など,技術的な困難があらわになるなか,もうひとつの難題が浮かび上がっている。事故収束に向けた費用が想定以上に膨らみ,現行の仕組では持続的にまかなっていくことがきわめて難しくなりつつあるのだ。
 
 人件費や技術開発費の増大だけではない。住民帰還のための除染のコストや,賠償費の膨張も著しい。またこうした費用をまかなっていく「仕組み」も,壁にぶつかっている。さきごろ東京電力も,負担の厳しさを訴え,さらなる国の追加支援を求める方針を示した。
 
 こうした「コスト」の問題は,廃炉の方法や住民帰還など政策の根幹にかかわる。番組では,廃炉を「コスト」という切り口から徹底検証する。いったいどれだけ膨らむのか。その負担は誰がどのように担っていくのか。事故コストの全体像を可視化し,持続可能な「廃炉への道」を考える。
 
 註記)http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20161106

廃炉への道

 東電福島第1原発事故現場は,廃炉問題を中心にさらに賠償問題および汚染除去に対処するために,今後に向けては継続的に,膨大な経費(費用:コスト)が発生しつづけるほかなくなっている。

 より判りやすくいえば,原発の建設費にかかった経費・維持費,その後の廃炉工程全般にかかるらしい経費,福島第1原発事故では事故によって発生していく対策費などを総計するとなれば,たとえば,東京電力として福島第1原発を稼働させることで稼いできた収益(利益)などでは,とてもではないが,追いつかないほどの水準まで損失(不利益)が発生している。

 現在に至っては,そうした事実がじわじわと理解されるほかない状況にまで至っている。

 本ブログ,昨日〔ここでは2016年11月6日〕の記述,

 主題「『高価・危険・不安の原発』再稼働にこだわる日本原子力ムラの反国民的・非合理的な政治経済価値観,いまどき原発に執心する固陋・愚昧のエネルギー政策に未来はない」

 副題1「原発の再稼働は必要ではない」,副題2「『愚者の楽園:日本原子村』が日本をダメにしつつある」では,ここ1週間ほど〔当時〕のあいだに報道された原発関連の諸記事を,筆者なりに整理して並べてみながら,その問題点を再確認してみた。

 付記)その〔2016年11月6日〕の記述は,別途再復活させるつもりであるが,本日のところはひとまず「あとまわし」という措置で素通りしておくことにした。

〔本文記事に戻る→〕 昨日〔2016年11月6日〕にNHKが放映した特番「廃炉への道『調査報告 膨らむコスト~誰がどう負担していくか』」は,まさしく原発のダメさ加減を,事実の経過を観察しつつ報告していた。

 ところで,その放送がなされた直後の,本日〔11月7日〕の早朝にはすでに,この番組の筋書きを文章に起こしているブログがみつかった。これには聞いておくのが便宜な内容があった。


 ※-4「NHKスペシャル『揺らぐアメリカはどこへ 混迷の大統領選」 を見てみた』『まるいの日記』2016年11月07日,http://fanblogs.jp/sumanonikki/archive/720/0)

 --なお,以下の引用においては,引用者が a) b) c) の見出しを,連番として付けてある。

 a)「膨大になっていく経費」 福島第1原発の廃炉問題が重要な局面を迎えているという。最長40年かかるとみこまれる廃炉へ向けて,日々7000人が働いている。

 廃炉のための費用が,今後どれだけかかるのかハッキリしていない。徐染のための費用は,当初3.6兆円と見積もっていたが,すでに 4.8兆円に達した。福島県の住民に対する費用は毎年1兆円ずつ増え,6.8兆円に達している。はたして,その費用を誰が払うのか。

 本来,事故以前の枠組では,損害賠償金を売電業者である東電に負担を負わせるはずだったが,多額の債務を一度に負わせると破綻させてしまうので,「金融機関→国→原子力損害賠償支援機構→東京電力」という「カネの流れ」を作り出した。そして,最終的には税金や電気料金というかたちで国民にツケをまわす仕組になっている。

 福島第1原発周辺の放射線物質が残るかぎり,安全に生活できない。放射性物質をとり除いたり,なにかを覆いかぶせたりして害を減らす除染が欠かせない。その徐染のための費用を誰が負担するのか。

 b)「ゾンビ会社に新株を発行させ資金調達」 財務省は国に負担を負わせないために東電に負担を求める一方,経済産業省は東電が破綻するのを心配して国が負担する案を提示した。テーブルを叩き合う激論のすえ,みつかった落としどころは,国が東電株1兆円分を購入し,株の売却益で賄おうというオソマツなものだった(笑)。〔←笑うに笑えない笑い?〕 

 〔引用されている当該記述者の吐いていた感想は,( )内に記述されていた〕〔ので,つぎのように「⇒」を冒頭に足し,参照しておく〕

 (⇒ 株価というの不安定なものだが,年金を株で運用し始めたりするところをみると,安倍政権は株に対して楽観的な見方をしているのだろうか)

 当時,東電株が値上がりし1株1000円強で売れば,徐染費用が賄えると試算していた。しかし,除染費用が当初の見積もりよりかさんでいるため,1株当たり1430円で売らないと除染費用が賄えない状況だ。

 (⇒ さて,東京電力の株価を確認してみよう) ここで東京電力の東証1部の10年チャートと東電株式〔2016年〕11月4日の現在値が図表で紹介されている。

東電株価図表1
東電株価図表2
東電株価関連諸統計


 c)「いまだに見通しのつかないデブリとり出しの難題」 株の売却で除染費用が賄えなかったら,今後あらためて検討するそうな。福島第1原発の廃炉のためには,原子炉からデブリをとり出す必要がある。

 福島第1原発のデブリは,原発事故のさい,核燃料の大部分が高温のためにドロドロに溶けだして,それが原子炉を突き破って散らばり,冷え固まったもの。人間が近寄ったら命の危険が生じるほど強烈な放射線を発しているため,どこにどんな状態で存在しているのか確認できない状態にある。

 当初は,このデブリをとり出す費用に2兆円かかるといわれていたが,専門家によるとそれだけで済むはずないという。東電はいくら費用がかかるか分からないまま,国に支援を求めている(⇒ 結局,国民が払う税金で賄おうという腹か)。

 デブリのとり出しのために2兆円を超える多額の費用を計上しなければならなくなることは,国も東電も,もっと早い段階で分かっていたはずだが,国民への説明を先送りしていると思われる。

 補注)デブリの取り出し作業については,以前,本ブログ内で言及したことがあるが,昨年中にはなんと8ミリグラムのそれが採取できたといい,この成分分析を鋭意おこない,事後につづく予定である,さらなるその取り出し作業のために参考にするという話であった。

 「3・11」から早14年目を迎えるこの時期になっても,そのようにスローモーション歩調でのデブリ取り出しの進捗具合に終始している。

 この調子だと半世紀,1世紀の単位でその作業の進展を観察していくほかない,つまり,完全に絶望的な気持ちにさせるような「大事故を起こし溶融した原発3基に対して,同時におこっていかねばならない困難な作業」が,目前に絶壁のようにそびえ立っている。東電側もおそらく,今世紀中に終えられるなどとは,寸毫も思ってはいない。

 d)「国策民営だったが,いまでは国営私営で〔ともにになう〕尻ぬぐいが永遠に続く模様」 いくらかかるか明確にしないまま国に支援を求めていた東電だが,国がなかなか折れないせいか,廃炉のための費用が年間800億円から数千億円かかるといいはじめた。国は,経営努力で費用を捻出するよう求めている。

 会計検査院が,東電の帳簿等を調べたところ,東電が負担する額が増える一方,利益に占める負担金の割合が減ってきているという。当初は,利益の半分を原発問題のために払ってもらうという話もあったらしい。(⇒ うやむやにしたのだろうか)

 現在,廃炉費用について公の場で議論しないまま,国民の負担が大きくなっていくことが心配されている。「福島県では,9万人が避難生活を送っており,復興の見通しが立たない。誰も歩んだことのない廃炉への道が続く」。(ここで引用・参照は終わり)

 補注)2025年1月現在だと,その避難生活をまだ継続している人びとの数は2万7千人ほどと把握されている。だが,この数値が減少してきたからといって,避難を余儀なくされた体験をもっていた,そのほかの人びとがいまでは,安寧と安心をえたその後における生活境遇に恵まれている,といった保証が誰にでも提供できているのではない。

 「福島県の人口の減少率 1.31% 全国で6番目に高くなる」『福島 NEWS WEB』2025年4月15日 18時02分,https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20240415/6050025913.html という現象が,東電福島第1原発事故とのあいだで,いかほど相関関係をみいだせるかという問題は,統計学にもとづく精査の余地がある。けれども,一般論としては過疎地の性格を有する地域の多い福島県全体の特性よりも,原発事故にその基因を求める方が,より妥当性ある観察たりうる。

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【付記】 「本稿(前編)」の続き後編は,以下のリンク先住所となる。


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