1980年代における日本原発妄想史の解明(その4)
※-1 直近の原発関連報道
2024年10月27日に投開票が実施された衆議院解散総選挙の数日後,東北電力女川原発2号機が,なんと東電福島第1原発事故「以来13年半ぶりに再稼働した」というニュースが報道されていた。
しかし,機械工学の一般原理的な理解・認識(理論上の常識のことだが)に照らして考えよう。現在において日本の原発は60年まで稼働させてもよいと,一気に変更させたがごときあつかいは,問題がありすぎた。
「その装置・機械・部品など」が稼働していなかった時間は,その耐用年数から差し引いてうえで,その「60年という期間」を積算すればよいとした計算方法が提示された。
そのように,ごく最近になってだが,原発の壽命は40年から60年に延長すると付則されたのだから,まともに会計学や経営学を学んだ者たちの立場からいえば,その変更された措置は「驚き桃の木山椒の木」であった。非常識もはなはだしい「原発の耐用年数」(壽命の再定義)であった。
ちなみに東北電力の女川原発2号機は(3号機も同型機であるが) 定格電気出力82万5千キロワットである。女川原発の1号機は1984年6月に営業運転を開始し,2018年12月21日にその運転を終了していた。
今回ニュースに取り上げられた2号機は,1995年7月から営業運転を開始していながら,2011年3月11日に発生した東日本大震災と東電福島第1原発事故の影響を受けて,いままでなんと13年半ぶりに再稼働できたというのである。
クラシックカーの再生・復活ではあるまいに,ふつうの装置・機械であれば,その間未稼働状態にあったものを,13年半もの時間が経過したあとに再利用するというのは「考えもの」だというよりは,工学的な思考原理に照らして率直にいうまでもなく,趣味で動かそうとするならばさておき,危険な冒険そのものになる可能性,大である。
原発の場合は,再稼働させるために膨大な復旧のための予算を特別に確保し,関連する諸工事を済ませている。とはいっても,なぜか原発の壽命延長の件になるとこればかりは,必死の形相で原発を「再稼働させるためで」あれば,なにがなんでも,つまり「なりふりかまわぬ」であるかのような姿勢でもって,その「努力が集中的になされてきた」様子は,確かに記録されている。
だからそのためであれば,換言すると「原発は本来,非常に危険な原子力を燃料に焚いて電力を生産する装置・機械である」から,安全性を確保するためには,「3・11」後に格別にきびしく措置せざるをえなくなったその対策のためにかかる工事費が,大幅に急増せざるをえなくなったのである。
ところでよく考えてみたい。旅客機でその間に13年半の空白があった航空機を,つまり,その間は格納庫に入れっぱなしであったこの旅客機を再利用して運用する勇気が,航空会社にありうるか? もちろん原発と旅客機との技術的な特性には大きな差異があるが,たとえ話としてはそのように比喩としてだが,基本点を比較論的に問うてみる余地があった。
しかも,原発という装置・機械の熱効率は13年半前「33. 33%」であったものが,この間にどれほど改良・改善されたかと問えば,その向上はまったくなく同じであった。従前でありつづけており,いつまで経っても「半世紀以上」,その性能に変わりは生じていなかった。
これほど情けない,進歩のない,おまけにこれからもその可能性がゼロである「理工学的な応用技術物」としての原発が,なにゆえ日本の経済産業省・エネルギー資源庁では〈好物〉たりえてきたのか?
なお,女川原発各機の原子炉格納容器はすべて沸騰水型原子炉(BWR)である。ただし1号機はマークⅠ型 であり,2号機と3号機はマークⅠ改良型である。東電福島第1原発の1号機と2号機は,マークⅠ型であった。
要するに,原発の技術的特性とその経済的問題とが交叉する論点を,まともに真剣に考えようとする者からは,原発の技術経済的な特徴そのものには奇怪な,いいかえれば「まともなビジネス性原則」など通用しない要因が混ぜこまれている事実が感知されうる。
【参考記事】-「コンバインドサイクル発電」があるが,これはガスタービンによる発電とスチームタービンによる発電を組み合わせた発電方式で,ガスタービンコンバインドサイクル発電とも呼ばれているもので,その熱交換比率は60%前後にまで到達している。熱交換比率の見地からいえば原発は前世紀の遺物的な発電方式-
※-2 AIが大量の電力を需要しているから原発が必要だという理屈は,以上の※-1のごとき疑問に応えずに「いいたいこと」ばかりを,一方的にまくしたてている。
『毎日新聞』2024年10月30日朝刊7面「経済」には,このような記事が出ていた。この動向は手っとり早く,余り物の原発の再利用を狙ったアメリカの実業家たちの方途として報道されていた。
なお,この記事は,スリーマイル島原発で最近,閉鎖された原発1号機をとりあえず「再利用」するといったごとき〈無謀で冒険的な企図〉が報道されていた。さすが金儲け主義の総本山アメリカ合衆国での出来事であった。
しかし,このすでに御用済みになったオンボロともいえない原発を再稼働させようとする試図は,端的にいて大それた目標をかかげたことになる。この新聞記事の中身のついては,つづいて批判する記述をおこなう。
とりあえずは,この記事の内容全体に漂う突飛さを中心に,その「休止になったスリーマイル島原発の再利用」に目をつけた「彼らのいいぶん」は,つぎのように批判されていい。
まず基本的な誤謬から説明する。上に画像で紹介した記事から,問題となる当該の段落を抜粋し議論する。
a)「原発は二酸化炭素(CO2 )を排出しない安全電源で,増加する電力需要を満たすことができる。今後数十年にわたってエネルギーを生み出す新たな原発技術を後押しする」
これに対しては,まず断わっておくべきが,太字にした文言は完全に間違いであったこと。
そもそもの話,原発も炭酸ガスを大いに発生させる装置・機械であった。くわえていうと,ここで「原子力=安全電源で」などと最初から騙りはじめるのは,いい加減にしておくべき言説であった。
事実に反した “弩・ヘリクツ” にもなりえない以上のごとき意向は,「原発のやっかいさ」を全面的に棚上げしたどころか,この大問題じたいの実在すらも,もとから気づいて「いたか否か」はしらぬが,初めから完全にその点は抹消しておきたかたかのようにも受けとれる,この種のアメリカ資本家・経営者群の着眼と発想は,ある意味「狂気の沙汰」だと形容するほかない。
だいたい,スリーマイル島原発事故は「レベル5」(その危険度の最高レベルは7だが)であっても,その後におけるアメリカでの原発建造の調子をいちじるしく減退させていた「歴史の事実」を展開させた実録を,まさかビル・ゲイツたちはなにも気づかずに,しかも今回のように,休止状態になっていた,つまり,オンボロどころか危険きわまりない原発を再利用するといった企図は,冒険家が未知の目標に挑戦する話題ならばともく,成功体験しかない彼らが取り組むべき類いではなかった。
日本国内では以前からとても盛んになっていたが,昔の蒸気機関車を復活させて観光用に動かすかたちあったが,あちこちの地方の鉄道会社がそれなりの営業運転をおこない,それなりによい評判をえている。
しかし,そのSLの運転はあくまで「観光用であるから」,往事みたく特急列車を牽引させることなどない。観光用に乗車客に楽しんでもらえるように運行している。
SLの観光目的での営業運転は,関東地方ではJR東日本がつぎのように「高崎⇔水上」間でその運転をおこなっている。地方の各鉄道会社は営業そのものがきびしくなっていた以前の経営環境を少しでも打開するために,SLの運行による観光路線の設営に努力してきた。
〔記事引用に戻る ↓ 〕
b) アマゾン,グーグルはともに大企業の社会的責任として脱炭素目標をかかげており,従来は太陽光や風力など再生可能エネルギーで目標を達成する方針だった。だが,電力を「爆食い」するAIの台頭で戦略に狂いが生じた。
AIデータセンターの新設に向け電源確保に躍起となっているMSが目を付けたのが,閉鎖した原発の「復活」だ。1979年に炉心溶融事故を起こし,5年前に閉鎖した米東部ペンシルベニア州のスリーマイル島原発を再稼働させ,その電力を20年間にわたって100%購入する契約を原発所有会社と結んだ。2028年までに約84万キロワットの供給を受けるシナリオを描く。
MSが再稼働をめざすスリーマイル島原発も,米原子力規制委員会(NRC)による安全審査が必要だ。事故を逃れた1号機のみが対象だが、閉鎖した原発の再稼働は前例がなく,審査をクリアするのは容易ではなさそうだ。
以上の記事の内容は,ビル・ゲイツらのこのようなもくろみが実現するみこみはまだ不確定だという指摘もしていた。
ビルたちは,前例があるとかないとかいった問題の次元で発想するのではなく,自分が必要だとみこしている電力需要を発掘(さらに開発・導入・利用)するためには,再生可能エネルギーの領域のほうが,よほど投資にみあう将来になりうるはずだという算段ができないのか?
要は,目先の営利目的のためには手段を選ばずであり,ともかく走りだしたことになるのか?
ビル・ゲイツほどの大金持ちが,再生可能エネルギーの分野がすでにあれこれ開拓され利用もされていく途上にもある現実,つまり,これからもまだまださらに開拓・利用される領野でもある再エネ志向を差しおいたかっこうで,
手っとり早く「廃品利用」ではあるまいに,あの,しかも原発事故を起こしたスリーマイル島原発事故2号機のとなりにある「1号機の稼働を復活させ電力を供給させる」のだ,といったごとき,21世紀的に粗暴な原子力・エネルギー観はとうてい許容できない。
※-3 1980年後半において深刻化していた各災害問題
さてここからがようやく本記述(1・2・3)につづく「本稿(4)」の本論的部分に入る。
1) 『朝日新聞』1988年12月7日朝刊「ウラル核事故 ソ連側認める」
旧ソ連邦が崩壊した原因として大きく聞いたのが,いうまでもなく「チェルノブイリ原発事故」の発生と,これにともなっていた大きな「原発災害」の発生であった。
1) の標題の記事を紹介する。これは「ウラルの核惨事」という核事故が1988年当時から約30年前,つまり1958年ころに起きていたというニュースである。
2) 「『ウラルの核惨事』詳細公表を約束 ソ連科学アカデミー ペリホフ副総裁にインタビュー」『朝日新聞』1988年12月13日朝刊)は,「チェルノブイリ原発事故も言及『30キロ以内なお立ち入り禁止』」と見出しをかかげた記事を報じていた。
1988年から30年が経ったのは2018年であるが,チェルノブイリ原発事故から2024年だと36年の歳月が経過している。「プーチンのロシア」が2022年2月24日にウクライナ侵略戦争を開始したのち,つぎのようなある種の非常に危険な状態が現在もまだ解消されていない。
3)「30年前,ソ連で核惨事? スウェーデン社衛星写真を分析 現場に新原子炉」『朝日新聞』1988年12月3日朝刊。2) の記事と同一朝刊の報道。
4)「『宇宙でジワリ 放射能 “汚染” 『ソ連原子炉衛星が犯人』NASA」「探査計画への影響 神経尖らせるこめ SDIでは汚染源にも」『朝日新聞』1989年1月4日朝刊。この見出しのSDIとは「戦略防衛構想」の頭文字略。
※-4「第3自民党がキャスティングボードを握る政治の危険性!!」『くろねこの短語』2024年10月30日, http://kuronekonotango.cocolog-nifty.com/blog/2024/10/post-8ee073.html がいうことには……。
このブログ『くろねこの短語』の「昨日の記述」を引用する。原発への関説あった。10月27日の衆議院解散総選挙に合わせたのように,東日本地域でようやく原発の再稼働に漕ぎつけたのか? ともかく「原子力村」に本籍を置く関係者たちには朗報。
各災害の問題をとくに兵器・武器の関連で,最後に取り上げておきたい。
※-5 沈没したのは潜水艦だけではなく,水爆を搭載した爆撃機もあったはずだが……
さて,こういう関連の事件もあった。
さらにくわえてこういう出来事もあった。これはアマゾン通販による本の紹介を借りて示唆しておきたい。
この本を宣伝する文句は,こういう文言になっていた。
「3・11」東日本大震災の発生食後,おける米軍の「トモダチ作戦」に参加した同国の兵士たちは,フクシマ原発事故によって被ばくしていた。被ばくによる健康被害に苦しむ彼らは,東京電力等に対して裁判を起こしたけれども,その公訴はむなしく棄却される。その背後にあった不都合な真実を,膨大な資料と緻密な取材によって明らかにする問題作。
要は,原発があるかぎり,これが原爆との双生児であった起源・由来からして,あまりにも当然な経緯となるほかない点が,「原発ならば秘密,原爆ならば機密」という政治ならびに軍事の要求を最優先させる。だが,どうしも関連する内情はつねに秘匿しておかねばならない「国家側の立場・利害」は,むやみやたらかつ問答無用にその専横性,横暴性を発揮する
※-6 ソ連君だけでなくアメリカ様のほうでも軍事用原発災害
まあ,こんなしだいに各災害の問題が起きていた。こちらはアメリカ合州国などでの現実問題。
最後に紹介する記事がこれ。
原発の事故,そして核兵器を搭載した軍用機や軍艦関係が事故を起こす「可能性の問題」(確率の問題)は,21世紀のいまの段階に至って,増えることはあっても,けっして減ることはない。
「ウクライナ侵略戦争」をみずから始めていながら,それでも「自国がウクライナ側から侵略を受けている」かのように,たいそうおおげさ騙れる「ロシアのプーチン」は,またぞろ「核兵器を使用するかもよ」と,アメリカやNATO諸国を相手に恫喝していた。
この男,自分の頭のなかにはともかく,「殺るか,殺られるか」のそのどちらしかない旧KGB出身者の1人であった。
---------【参考文献の紹介:アマゾン通販】---------