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1941年「夏」戦時体制下日本はすでに敗戦することを社会科学的に予測しえていたが,昭和天皇裕仁は納得ずくで大元帥の立場から大東亜戦争開戦に賛成する御名御璽に応じたのは,勝算ありと期待したからだったが,敗戦となるや東條英機のせいにして自分だけは戦犯から逃れ延命するという姑息に遁走,これを利用してマッカーサーもまた自分の栄誉をさらに昂揚させようと企図した戦後敗戦史(続編の1)

【断わり】 「本稿(続編の1)」の前編はつぎのリンク先住所である。できればこちらをさきに読んでもらうのが好都合である。


 ※-1「プーチンのロシア」によるウクライナ侵略戦争の犠牲者数

 1)「ウクライナとロシア両軍兵士の死傷者,推計100万人… 米紙報道」『読売新聞』2024年9月18日 18:38,https://www.yomiuri.co.jp/world/20240918-OYT1T50134/

 この記事を引用する前に,まず関連するこういう話をしておきたい。

 ウクライナ情勢に関する昨年秋における宇露両国の死傷者総数が100万人を越えたという数値・統計は,その後に半年近くが経過した現時点ではさらに,もっと増えている。

 その後において,とくにロシア側は,ひどいときには2000人を超える戦死者まで記録する日もあったりで(これはウクライナ政府側発表の数字だがそれほど盛っているとはみられなかった統計である),

 その後さらに5ヵ月が経過した時点になって,ウクライナ側の公表してきた関係の数字をさらに足すと,4万5000人程度の戦死者とこの数倍に当たる戦傷者が推算されうることになる。なお,このあたりの推計がいくらか上下にぶれる点は仕方のない事情なので,その多寡にぶれが生じる分析・解釈に関しては,それ相応の斟酌を願いたい。

 以下に,冒頭記事の本文を引用する。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは〔2024年9月〕17日,2年半に及んでいるロシアのウクライナ侵略での両軍兵士の死傷者数が推計で約100万人に達したと報じた。

 ウクライナ軍に関しては自国の推計値として死者約8万人,負傷者約40万人としている。ロシアについては,西側の情報機関の推計に基づき,戦死者数が最大約20万人,負傷者数は約40万人としている。

 英国防省は17日,露側の死傷者数が約60万人とする推計を発表した。戦場での自軍の死傷者数の公表をめぐっては,ロシア,ウクライナとも消極姿勢が際立っている。

『読売新聞』2024年9月18日

 つぎに紹介するのは,今年(2025年)2月に入ってからの報道となる。

 「ウクライナ,人口100万人減か 50万人が死亡,移住も50万人」『毎日新聞』2025年2月1日 09:13,https://mainichi.jp/articles/20250201/k00/00m/030/017000c が,さらにつぎのように報じていた。

 ウクライナ国立銀行(中央銀行)は〔2025年1月〕30日,ロシアによる侵攻などの影響で,昨年約50万人が国外に移住したとする報告書を発表した。

 ウクライナメディアは31日,司法省の統計を基に,昨年約50万人が死亡したと報道。二つのデータを合わせると,人口が1年間で約100万人減少したことになる。

 中央銀行は昨年の国外移住者数について予測の範囲内とする一方,侵攻の影響で流出が続き「労働力不足が深刻だ」と分析した。今年も20万人の流出をみこんでいる

 国外での生活に適応すれば,帰国を望む人の割合は減ると予測し「現状では大勢が迅速に帰国するとは考えづらく,労働力不足は続く」とした。(共同)

『毎日新聞』2025年2月1日

 2) この2025年2月段階になると,それまでの「ロシアがウクライナ国内に対する民間人まで意図的に狙った攻撃」にひどく悩まされてきたウクライナ軍側は,多種多様なドローン兵器の活用によってとくに最近は,ロシア空海軍の主要な基地だけでなく,軍需品工場や石油精製施設を破壊するために集中的な攻撃を繰り返しおこなっている。

 その攻撃は,ロシア国内に対する攻撃として,ロシア軍側の継戦能力を徐々に削っていくために実行されているが,米欧側から大量の軍事支援を受けているウクライナ側は,民間人を標的とする,それもロシアのように意図して殺すための攻撃はしていない(というかすることはできない)。

 この2~3日のそれもユーチューブ動画サイトで「宇露戦争」の様相を監視していると,ロシア軍はとうとう「ロバやらくだ」まで機動力(?)として動員(活用?)しだした。

 ロシア陸軍のそれもとくに戦車は,すでに1万1千台もウクライナ側に撃破されている。この3年もつづいてきた宇露戦争の過程で,ロシア側はものすごい損害(人員と兵器の損失)を被っている。そのなかでくわえては,松葉杖を使っている負傷兵までが隊を編制して登場している。ユーチューブ動画には,その負傷兵の姿まで視聴できる。

 前段の話題が作り話でなければ,つまり,その様子を教える動画がウソ(フェイク)でなければ,装甲兵員輸送車すら用意できないまま,兵士たちを最前線に送りこむロシア軍の現状,その「人間生命の軽視ぶり」は,さすが,督戦部隊を彼らの背中の後方に常置させている国の軍隊だけのことはあた。というしだいで,ひとまず納得がいくような「自国軍兵士に対する非人間的な取扱要領」が,ロシア軍内で決められているらしい。

 それに,ロシア軍の兵士たちの民族別の人種面に関した構成の内容もまた,ユーチューブの放送によってある程度は理解できる事情になったが,スラブ系のロシア・白人たちよりも,ロシア連邦を構成する各共和国のうちで,先住のアジア系などの少数民族系から送りこまれた兵士たちが相対的に目立ち,なにやら,モスクワ地域から兵士に徴集されている若者が,もちろん正式にいないわけではないものの,ロシア的な徴兵方法(兵員調達)に関する内部事情については,分かりにくい要素が,だいぶ不詳のままに残っている。

【参考動画】 -小泉 悠の指摘-


 3)「ウクライナ ロシア軍事侵攻以降 軍死者 4万3000人 支援呼びかけ」『NHK』2024年12月9日 6時44分,https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241209/k10014662121000.html が教える「宇露戦争の犠牲者数」の推定に関して

ウクライナ兵士として死んだ人たち
(引用する記事から紹介)

 以下にこの記事の本文を引照する。

 --ウクライナのゼレンスキー大統領は,ロシアによる軍事侵攻が始まって以降,ウクライナ軍の死者は4万3000人にのぼると明らかにするとともに,アメリカをはじめとする国際社会に対し,さらなる支援を呼びかけた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は〔2024年12月〕8日,自身のSNSに投稿し,ロシアによる軍事侵攻が始まった一昨年2月以降のウクライナ軍の死者数について「戦場で4万3000人の兵士を失った」と明らかにした。

 侵攻によるウクライナ軍の兵士の死者数は,今年〔2024年〕2月にゼレンスキー大統領が初めて公表した4万1000人から1万2000人,増加した。また,負傷した兵士を治療した件数は37万件で,負傷兵のおよそ半数は戦場に復帰していると答えていた。

 一方,ロシア軍の死傷者は死者が19万8000人,けが人が55万人以上だと主張したうえで,今年〔2024年〕9月以降のロシア軍の死者数は,ウクライナ軍の5倍から6倍だと指摘した。

 補注)このゼレンスキーが指摘する両国軍の「死者率の対比」についてもまた「盛っていた話」かもしれない要素を割り引いておくにせよ,宇・露のあいだにおける「戦死・戦病者数」として,このように公表された数値は,

 ロシア側の犠牲者数が相対的にあまりにも高率だという「事実」に接して,その人間の命を軽くみていた「戦争遂行体制」に鑑みてもただちに,第2次大戦中のスターリン式になる戦争遂行「観」を想起させる

〔記事に戻る→〕 そのうえで,ゼレンスキー大統領は「プーチン氏を止められるのは,平和の指導者となりうる世界の指導者たちの力だけだ。プーチン氏を止めるには,アメリカと全世界の支援が必要だ」として,アメリカをはじめとする国際社会に対し,さらなる支援を呼びかけた。(記事引用終わり)

 先月(2025年1月20日),アメリカ大統領に復活したドナルド・トランプは自分中のディール戦術を駆使し,宇露戦争にともかく歯止めをかけるのだという強い意向を明示していた。

 だが,いますぐにロシアが戦争を継続するのを止め,いますぐに休戦(ないしは停戦,そして終戦)に応じるとしても,今後におけるロシア経済は,これまで3年間にもなるウクライナ侵略戦争のために,しだいに戦時体制を深化させざるをえなくなっていたゆえ,この国家経済に与えた好ましくない影響は,すでに経済統計(正直に公表していないものだが)の上に明確に現われている。

 いうなれば,その戦時体制的に非常時である緊急体制を反映させるほかなくなった病状,換言すれば「国家全体の衰弱過程」そのものは,いままで,戦争を遂行する過程において,なんとかゴマカシつづけてきたけれども(⇒人間の身体にたとえばいえば「失血」状態がつづいていたが,ただまだ卒倒して死ぬかもしれない段階にまでは至っていない),

 戦争事態そのものが進展し,深化していくなかで必然的に浮上してこざるをえない,それも「戦時体制」にもとから固有の「その深刻な諸問題」は,自国のありよう全般に対して,それ相応の悪影響をじわじわと浸透させてきた。


 ※-2「戦争経済学」が教える戦時体制の非常時的負担

 『日本経済新聞』2012年12月3日朝刊の「経済教室」に,猪木武徳(青山学院大学特任教授)が寄稿した「〈歴史と思想に学ぶ〉戦争は社会を変える,戦後も尾を引く統制『大義』超える経済コスト」

 と題した論説が掲載されていた。この寄稿は3千4百字近い文章なので,ここではなるべく,※-1に深い関係をもつと判断できる段落のみ抽出し,紹介することにしたい。

 a) 経済権益をめぐる国際紛争は,膨大な犠牲と悲劇をもたらす戦争の一大原因となってきた。戦争は国際経済や国民経済の構造を変換するだけでなく,戦後社会をも変える。

 戦時中に開発された軍事技術が戦後民間に転用され経済発展を促した例がある一方,統制を通じ官僚機構が肥大化するなど,戦争は経済と社会にさまざまな帰結をもたらす。

 発明や発見は人間の知的好奇心の産物であるが,発見された知識や科学的原理を産業に生かす,いわゆるイノベーションは,歴史的にみるとほとんどつねに「利潤」と「戦争」によって動機づけられてきた。とくにに工業化によって生産設備が巨大化した20世紀の2度の世界大戦は,イノベーションのペースを加速させた。

 軍事技術と民生技術は不可分であり,とくに前者が後者を牽引してきた。日本で「ゼロ戦」開発に従事した技術者が,戦後,国鉄や自動車産業に流れ,自動車や新幹線の設計にたずさわった話は,つとにしられている。

 インターネットの誕生も,起源をどこに求めるかは論が分かれるが,米国国防総省が始めた分散型コンピューター・ネットワークの研究プロジェクトが大きく貢献したとされる。

 戦争が技術革新を刺激するのは,国家が存亡の機にさいして経済への統制を強め,企業レベルの損得勘定を超えた多額の開発予算をつぎこむからである。

 補注)宇露戦争のなかでは,従来の戦争の仕方・技術として一気に浮上し,注目されている対象が,とくにウクライナ軍がドローンという民生用技術を戦争用に徹底的に応用し,兵器・武器として積極邸に活かしはじめた事実であった。

 この地球上において繰り広げられてきたいろいろな戦争史の舞台・場面において,このたびとくに一大変革をもたらして事実が,それも現在進行形で持続的に開発させられる動向が生まれそうなのであるが,世界各国がすでに「ドローン活用技術を軍備の一環」として基本的に「必要不可欠の〈兵器・武器〉たる意味づけ」を,否応なしにするようになったところにみいだせる。

 〔記事に戻る→〕(中略)

 戦争が一国の政府に求める緊急対策は数多い。

 (中略)

 米国も英国も似たような動員をかけた。米国で女性の労働力率が飛躍的に上昇したのは,この勤労動員が契機であったことが,米国経済史の研究でも明らかにされている。

 b) ただ,いうまでもなく戦争は多大な犠牲を伴う。人命の損失はその最たるものだろう。20世紀の両世界大戦はいわば「総力戦」であり,それぞれの国家の人口のかなりの割合を戦場へと駆り出した。外敵から国を守るには,独立国はどれほどの資源を投入しなければならないのだろうか。

 (中略)

 20世紀の総力戦は,スミスの時代とは戦争の形を完全に変えた。実際,大英帝国で,第1次大戦によって動員された兵士は600万人近く,そのうち約80万人が命を落とした。

 第2次大戦では死者数こそ38万人とこれを下回ったが,ドイツ軍によるロンドン空襲などで非戦闘員の犠牲が多かった。終戦後,英政府が国民に対して清算すべき(経済面での)負債はきわめて大きくなった。

 補注)宇露戦争中においてすでにたくさんの犠牲者が発生しているが,ウクライナがロシアから一方的に受けている民間人や非軍事施設に対して,それも露骨に意図された無差別攻撃は,国際法に違反するだけでなく,まるで中世の野蛮な戦争方式そのものである。

 むろん,戦争行為そのものがそもそも「人を殺し,モノを壊し,社会を崩壊させる」野蛮な軍事行動しか意味しえない。けれども,ロシアのやり方はあたかも「戦争のための戦争」をするがごとき態になっている。

 (中略)
 〔記事に戻る ↓ 〕

 c) 一般に戦時体制へと移行すると,……戦争は途方もないコストと犠牲を国民経済に強いる。もちろん戦争は個別の「正義」がぶつかりううもので,経済計算で戦うか否かが決まるわけではない。しかし経済的側面に限っても,戦争は国家に大きな損失を与える。国家間の対立を武力で抑えても,真の解決にならないことは戦後の「負担」を考えれば明らか……。

 戦争が終わると,とくに敗戦国には財政負担が重くのしかかる。日本の場合も財政負担は,東南アジアへの戦後賠償を除いても巨大な数字になった。

 1946年度予算は,一般会計歳出では「終戦処理費」が396億円と歳出総額の3分の1を占めて最大の費目をなし,公債発行額は345億円になった。「終戦処理費」が占領軍の経費の一部をも含んだのだから,その額は大きくならざるをえなかった。

 補注)なお,宇露戦争を遂行してきたロシアが公表してきた国家予算は,以前から軍事費が3割台になっていた。この国家予算に占める軍事費の割合は,戦争をする国家体制下では必然的に強いられるほかない予算の比率である。

 しかし,この3割台という比率の数値が,現状において戦争遂行中であるロシアの場合,それも特別軍事作戦と銘打って開始した中身を「本当に反映させた比率」であるかどうかについては,疑いをもって接する余地がないわけではない。

 なにせ,ロバやらくだまで駆り出して戦争を遂行中であるロシアの政治・経済の現状は,この国経済力をいかほどのものかと推測するに当たっては,とまどわさせられる要因となっている。

【参考画像資料】 -昭和戦前期における大日本帝国軍事費の推移-

軍事費比率3割にはそれなりに意味があると解釈できる

〔記事に戻る→〕 ましてや賠償義務負担を考慮すると,戦争のコストはさらに莫大なものになる。第1次大戦後のドイツへの過酷な賠償請求はつぎの世界大戦の素地を作った。逆に,賠償請求権の放棄も,損害に関する最低限の経済的清算を避けたという点で,戦勝国と敗戦国の関係に禍根を残す。

 20世紀以降,戦争は武力だけでなく,思想戦,経済戦の傾向を強めた。米国が中東での一連の軍事介入を停止し撤退するのも,継続の経済的コストが,戦争の「大義」を支えられなくなったという事情があることは否定できない。

 d) 以上,トルストイの小説『戦争と平和』(1865-1869年)を思い浮かぶが,宇露戦争はフィクションではなく,実際の話である。つぎの『毎日新聞』2025年2月11日に掲載されていた記事を参照しておこう。

この記事のなかに記述されている宇露両軍の犠牲者数が
「それぞれ7万人ずつ超」だという指摘には強い疑問が残る

 この『毎日新聞』の記事のなかには最後に「殺し合いがいかに無意味化」という文章が添えられていた。

 だが,あの「ロシアのプーチン」は自国の兵士たちの命のひとつひとつを,ともかく,なんとも思っていない。鉄砲玉という日本語があるが,それであった。

 旧KGB出身である彼の脊髄神経系・回路にとっての人民の命は,「ただの数の1」でしかありなかった。気に入らない他人を殺すことなどなんとも思わない人間(?)である彼ゆえ,そのように自国民をみくだすのは,ごく自然な道理であった。

 本稿の前編で登場していた有澤広巳は,日中戦争開始直後,昭和12年8月28日に発刊された『戦争と経済』と題した著書のなかで,こう語っていた。

 「国防経済における国民の生活水準の低下は止むをえざる事実となる。これはつまり戦争準備の態勢が国民の生活水準の一部を犠牲として行はれることを意味するのであって当然である」(20頁)。

有澤広巳『戦争と経済』の発言

 なお有澤廣巳の同書からは,本ブログ筆者が参照している現物だと,同年中の10月5日に重刷された第4版から引用してみたが,当時において同書は10日ごとに増刷りされていた。

 日中戦争が開始された直後だっただけに,学術的な書物の体裁にもかかわらず,発売当初から同書は,好調な売れゆきになっていた。

 もっとも,有澤廣広巳は「本稿(前編)」において,すでに登場させた人物であり,日本が太平洋戦争を開始するに当たり,事前に「総力戦研究所」という研究機関を設置し,その戦争を始めた場合に「勝算ありや・なしや」を総合的に研究させていた。

 その機関には有澤もくわわっていた1人の学究であったが,大日本帝国と名乗ったこの国であっても,英米というこれまた大国と干戈を交えれば,どういう結末になるかについて有澤は先刻,十分に承知していた。

 e) 太平洋戦争(大東亜戦争)が開始されてから実質1年と1ヵ月が経ったころ,当時,慶應義塾大学の武村忠雄が書いた本,『戦争経済学』(慶應出版社,昭和18年1月20日発行)は,戦争過程が深まるにしたがい必然的に発生していく事象を,つぎのように表現していた。

 蓋し統制経済段階に於ては,軍需産業の拡張を通じ,不断に生産力(生産財と労働力)は生産循環過程から失はれ,その遊休生産力は枯渇し,既に凡ゆる生産力は動員されてゐる。他方財貨の生産循環を伴はぬ貨幣購買食が蓄積されてゐるから,インフレの危機を孕みつつある。斯かる状態の下で戦争に突入すれば,インフレの危機は急速度に拡大する(64-65頁)。

武村忠雄『戦争経済学』昭和18年1月

 「ロシアのプーチン」は,ウクライナ侵攻はあくまで「特別軍事作戦」であり,戦争状態なのではないと断わっていた。それも,短ければたった3日間でウクライナは降伏すると豪語したうえで,2022年2月24日に始めていた「プーチンのロシア」のためのその侵略行為は,3日どころかいまでは3年目を迎える,2025年の2月12日にまでなった。

 武村忠雄がいまから82年前に解説したとおりの「結果」になった「大日本帝国における戦時体制の本質」の場合は,その「政治と経済」のなかでもとくに「戦時経済の構造と機能」の実際に関しては,経済学の見地から鮮明にそれも事前に予断ではなく語っていたことになる。

 ロシアも実は,そうした戦争経済学が分析し,説明するとおりの顛末をたどってきている。この記述が喋々するまでもなく,ネット空間にはその点を明確に指摘し,かつ専門的な見地からの解説も与えられている。


 ※-3【断わり】 「本稿」の「続編その1」の末尾で断わった点,ロシア戦時経済体制に関する日経に掲載された寄稿の紹介とその吟味はさらに順延されて,次稿「続編その2」に記述することになる

 要は,いまもなお「ロシアのプーチン」が,ロバやらくだまで動員して続行しているウクライナへの侵略戦争は,米欧からの軍事支援を頼りに,いままで3年近くも必死かつ果敢に抵抗してきたウクライナ側が,ドローン戦術を高度に発展させたかたちで,徐々にロシア軍を苦しめてきた。

 ロシアの戦い方は基本,第2次大戦型であって,もっぱら物量作戦が用いられた。ウクライナに支援する米欧側諸国に対してプーチンは,「戦術核を使うぞ,使うぞ」と,なんどか脅しをかけていた。だが,本当にはそのようにはできないできた。

 陸海空軍全体の次元においてとなっているが,ウクライナ軍が当初から戦力的には完全に劣勢に置かれていたなかで開発し,実戦において効果的に作戦を展開することになったドローン戦術は,ロシアの戦力をこれまで,確実にかつ効果的に削いできた。現在の時点でウクライナ軍側は,兵力要員の不足に苦しむなかに置かれているが,それでも相当敢闘に戦っている。

 それに対してロシア側は,これまで世界第2位の軍事大国だと自他ともに認める強国であったつもりが,米欧の軍事支援を頼りになんとか戦い抜いているウクライナ軍が,最近ではロシア領内に攻め入りこの領地を維持している戦況の展開も生まれてもいて,今後に予想される休戦(などの)交渉に臨んで有利な条件を確保しようともくろんでいる。

 アメリカの大統領に再選されたトランプは「オレ様が宇露戦争を止めさせるぞ,24時間でそうさせてみる」と最初は豪語していたが,とんでもないホラであったにせよ,プーチンとは意思疎通がしやすい間柄にいるトランプだけに,この戦争を終結させるべく「ディールが得意だ」という自分の力量をこのさい,どの程度にまでそしてどのように実現できるか,いちおう期待はかけてよい要素がみいだせないのではない。

 ここまで論じた段階では,この※-3の表題のようにすでに断わってみたとおり,このたびロシア戦時経済が遭遇している「戦争経済ゆえの困難・隘路」の発生については,『日本経済新聞』が連載した学究の寄稿をとりあげ吟味するつもりであったが,さらにその記述の公表は順延になり,「本稿(続編の2)」において論述することにした。

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【付記】 「本稿(続編の1)」にさらに続く「本稿(続編の2)」の
     リンク先住所はこれである。

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