原発を導入した大きな過ちを認めたくないこの国「日本」は下手をすると国土そのものが「原子力」という魔物エネルギーのために消滅するかもしれない
※-1 森重晴雄『差し迫る, 福島原発1号機の倒壊と日本滅亡』せせらぎ出版,2023年12月1日発行
数日前,この森重晴雄『差し迫る, 福島原発1号機の倒壊と日本滅亡』せせらぎ出版,2023年12月という本を入手し,一読してみた。以下にご覧のとおりなのが,この本の表紙カバー画像である。この本は,衝撃的な「東電福島第1原発事故『現場の実状』=『1号機が倒壊する危機』」を指摘・説明し,これを予防するための方策を,技術的に解説・主張している。
本書の著者,森重晴雄は,名古屋大学工学部で原子核工学科と,大阪大学工学部の土木工学科で学び,三菱重工に就職,勤務してきた経歴を有する人物である。なお,本書『差し迫る, 福島原発1号機の倒壊と日本滅亡』は,ブックレットの体裁で出版されていた。
ブックレットとはだいたい,薄い冊子状の「製本されていて表紙のある」本を指すが,本書も「あとがき」までで84頁の分量であるから,いかにもブックレットらしい造りになっていた。ただし,この本の表紙カバー画像は,前段の画像のように “衝撃的な警告の文句” が記載されていた。
森重晴雄はともかく,東電福島第1原発事故現場は,いま「危機的な状況」にあると警告を発している。
森重晴雄が末尾で著作権のことをうるさく断わっている点も留意し,またすでにアマゾンの書評には適切な紹介をした文章も掲載されているので,こちらまず引用・紹介するかたちをとりながら,この『差し迫る, 福島原発1号機の倒壊と日本滅亡』の概要・骨子を理解することにしてみたい。
★イエローケーキ(5つ星のうち 5.0)「終わらない3・11」★
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a) 福島原発事故収束作業はゆきづまっている。溶け落ちた 880トンもの核燃料デブリが原子炉圧力容器直下で鎮座し,相当分が原子炉格納容器底部にはみ出している。そして,この核燃料デブリが原子炉を支えるコンクリートを溶かしたため強度不足となり,震度6強の地震で原子炉圧力容器ごと倒壊する可能性が高い。
それだけでも3・11を超える大事故だが,核燃料プールを巻きこめば放射性ダストの飛散により史上類例のない惨事となる。つまりわれわれは,日本滅亡と隣りあわせ運任せの日常にある。この現状を本書は,科学にもとづき淡々と明らかにしてゆく。
b) 思えば,2011年「3・11の東日本大震災」から12年もの間〔あと40日ほどで13年にもなるが〕,日本社会は福島原発事故をみてみないふりしてきた。その象徴が東京オリンピックだ。覚えているだろうか,このオリンピックが「復興五輪」と呼ばれていたことを。
いまとなっては噴飯もので,東京オリンピックのト〔と〕の字も話題にならない。復興どころか,日本の衰退を全世界にさらけ出したからだ。われわれは高度経済成長の果てに突きつけられた,この敗北をいいかげん認めなければならない。
補注1)東京オリンピックで一番暗躍的にうごめいていたのが,あの森 喜朗元首相であった。この老害政治屋は「いまだけ,カネだけ,自分だけ」の典型的な悪例見本であって,しかも,故安倍晋三の師匠格にあたるというのだったから,この国の最高指導者たちのその資質水準の低劣さといったら本当にそれこそお話にもならない。
その安倍晋三は2013年9月,「2020東京オリンピックの開催」を誘致(を実現)させるため国際会議となったIOCの舞台に出席したさい,東電福島第1原発事故現場のことを “under control” などと,平然と大ウソをつくことにさえ,まったくためらいをみせなかった。
補注2)「『答弁本文情報』平成18(2006)年12月22日受領 答弁第256号。衆議院議長 河野洋平殿,内閣総理大臣 安倍晋三」は,「議院議員吉井英勝君提出巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問に対する答弁書」をもって,つぎのように,不誠実かつ不埒に回答していた。
安倍晋三はこのように,以前の「第1次政権の時期にあっても」,原発が事故を起こすことなど「絶対にありえない」という具合に,国会において応答をしていたのだから,
この「幼稚と傲慢・暗愚と無知・欺瞞と粗暴」であった「世襲3代目の政治屋」の話すこと・やることときたら,やはり論外の粗悪品であって,彼自身がもともとボンボン政治屋であった事実を,より確実にみずから実証していた。
第1次政権時の2006年12月であったが,安倍晋三が首相の立場から,日本共産党衆議院議員の岩井英明から提出された質問主意書に答えた文句は,通り一遍に「原発の安全神話」のご託宣をするだけであって,しかも,岩井英明議員をひどく小バカにしたごとき文面をもって表現されていた。
〔前段 b) のつづきとしての記述・本文に戻る ↓ 〕
にもかかわらず,まだ大阪万博や札幌冬季五輪といった昭和の戦後復興二番煎じ劇を演出し,その真打である原発再推進に執着している。小型原発や核融合など悪足掻きでしかない。
c) 読後,原子炉倒壊を防ぐことがわが国の最優先課題だと分かる。そして福島原発事故収束作業をどうするのか,考えなければならない。原子炉倒壊を防ぐにはどうしたらいいのか。核燃料デブリを取り出せるのか否か。著者は,日本の経済成長を支えた技術者らしい修繕案を提示する。
けれども,無限の熱エネルギーを渇望する非合理な社会に触れることなく,技術的かつ法的な合理性を囲いこみ抜き出しても通用せず跳ね返されるだろう。なにせ日本は,官民一体で放射能汚染水を処理水といいかえ,海に棄てる国だ。
そもそも核燃料デブリを取り出すべきなのか,仮に取り出せたとしてどこに保管するのか,展望はみえてこない。いまの政治経済体制のもとではどの政党が政権を担おうとも,みてみないふりを国是とする圧力に支配される。
d) われわれは「台湾危機」などにかまけている余裕はないはずだが,フクシマという本当の危機から目を背けるためならなんでも乗るらしい。そんな日本人の都合や俗世の権益争いなどお構いなしに,その時はやってくる。
崩壊寸前の原子炉を支えるコンクリートは,日々冷却水や地下水,放射線,潮風に晒されている。また幾多の地震によるダメージも蓄積していく。
本書は福島原発1号機に焦点を当てているが,2号機3号機も1号機と同様かより酷い状態だと考えられる。あえていえばもう手遅れであり,日本社会は文明転換の捨て駒になる覚悟をもつべきステージへ移行したのだ。
以上のごとき,この評者が,森重晴雄『差し迫る, 福島原発1号機の倒壊と日本滅亡』せせらぎ出版,2023年12月に向けた論評は,著者の森重よりもさらに深刻な調子で,東電福島第1原発事故現場の事故原発(原子炉)3基すべてを含めたかっこうで,現状を深く憂えていた。
森重晴雄の本の表紙画像(冒頭に挙げてあったもの)には「熊取六人衆」の1人として,2011年「3・11」に発生以前までは「原子力村」からの直接・間接の抑圧・迫害を受けてきた小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教〔で定年を迎えていた〕)が,下部にその顔を登場していたが,
この小出裕章は,東電福島第1原発事故直後からすでに「石棺」方式による,すなわちチェルノブイリ原発事故現場の後始末と同じやり方でしか,対応する手段がない点を強調していた。
補注)京都大学原子炉実験所は現在,京都大学複合原子力科学研究所に名称を変更している。なおここでは,小出裕章が公にしている文章・記事からつぎの『週刊読書人』に掲載されていた「汚染水の問題を語った」ものを紹介しておきたい。リンクの住所はつづけて記しておく。最後の部分(頁)からのみの引用になる。全体を読みたい人はリンク先から読めるので,クリックが必要。
⇒ https://www.go.tvm.ne.jp/~koide/Hiroaki/remark/Dokusyojin1013.pdf
【参考記事】-『情報速報ドットコム』2024年2月4日の記事を補足-
〔前段 d) のつづきとしての記述に戻る ↓ 〕
この意見の場合でも,森重晴雄が懸念していた点となるが,とくに東電福島第1原発1号機は震度6の地震に襲われたときだと倒壊の危険性が予見されるゆえ,本書『差し迫る, 福島原発1号機の倒壊と日本滅亡』がもっとも心配して強調するのが,1号機に対する「倒壊防止工事」が不可欠だという提案である。
森重晴雄は2023年5月6日,西村康稔経済産業大臣に東電福島第1原発1号機は倒壊の恐れがあり,それを防ぐための工法を提言したが,西村はそれは東京電力の問題としてとりあってくれなかったこと,さらに,川田龍平参議院議員が森重の意向を受けて,2023年5月10日と6月15日の2度,政府に質問主意書を提出したが,岸田文雄はまともにこたえていなかったとも語っている。(森重からの引照,終わり)
註記)以上,『差し迫る, 福島原発1号機の倒壊と日本滅亡』61-62頁を参照。
要は「1号機の倒壊対策」(森重晴雄)を講じたうえで,さらに「石棺」化工事(小出裕章が早くから発案していた対策・工事)をおこなうしかないのが,東電福島第1原発事故現場の実情だという観察であった。
もっとも,現状においては東電福島第1原発現場からは処理水という名を騙って汚染水を太平洋にぶちまけている状況にあるが,こちらの問題がまだ根本的に対策できていない現状もあり,こうした状態がこのままつづいていくうちに,
もしも,森重晴雄が心配するような震度6程度の強い地震に本当にこの現場が襲われたら,それこそ「なんの保障もかぎり」どころではない深刻・重大な事態が勃発する。
森重晴雄が警告するのがなにかといえば,こういう不安=危険である。
仮に,東電福島第1原発事故で1号機の倒壊事故が強い地震の襲来によって発生したとき,この倒壊事故をきっかけに,全国の原発までもドミノ倒しのように制御不能になってしまい,日本全土が高濃度の放射性物質におおわれ廃土と化するという「事態の襲来」である。
そのまま日本に住む人びとは多分1年以内に命を落とし,海外に逃れた人たちも難民化する。ごく一部の富裕層だけは海外に移住できたとしても,遠くない未来,地球全域が放射能に汚染されていく,というのである。
補注)『差し迫る, 福島原発1号機の倒壊と日本滅亡』5頁参照。
※-2 日本にも原発を導入せよといい原子力利用を煽っていた文献など
いまから70年も前の1954年(昭和29年)であったが,現在もむろん,原発推進の立場・イデオロギーを社是とする読売新聞社は,みずからつぎの本の編者になって,書名を『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にするか-』と称した〈原子力の啓蒙書〉を公刊していた。この本には,校閲者として,東大助教授・理学博士中村誠太郎の姓名も記載されていた。
2011年3月11午後2時46分,東日本大震災が発生した。この大地震が発生してから約25分後,15時01分にはまず,岩手県に大津波が到達し,その後,北海道から千葉県・房総半島までの広い範囲にまで大津波が押し寄せた。
この本『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にするか-』は,「原爆戦争は,荒廃のはげしさから,その手も不可能になろう」と楽観していたが(194頁),はたしてそのような解釈が可能であったかどうかは,いまだに疑問が着いてまわっていて,振り切れていないままである。
たとえば,現在もまだ進行中である,あの「ロシアのプーチン」が始めたウクライナ侵略戦争のなかでは,その間,プーチンが子分であるメドベージェフにこういわせてつづけてきた事実が記録され,なんども繰り返して,このように吠えさせている。
⇒「〈ウクライナ情勢〉 ロシア『核で反撃』,ウクライナが国内基地攻撃なら=メドベージェフ氏」『REUTERS』2024年1月12日午前 2:27,https://jp.reuters.com/world/ukraine/DZBBVJAUZ5M5HBKXZZZXMMT6II-2024-01-11/
他方で,原発反対である旗幟を明快に建てていた朝日新聞社は,1970年代にまでさかのぼってみると,原発問題の担当記者として著名であった大熊由紀子などが,原発問題に対しては積極的にとりくむかっこうで報道してきた事実もあった。
たとえば,朝日新聞科学部編『明日へのエネルギー』朝日新聞社,1974年は,この書名からも分かるように原子力にはそれなりに期待がなかったわけではない雰囲気をかもしていた本であった。
だが,同書は同時にま,「原子力がまだ多くの点で未成熟な技術だということも,安全性を考えるうえで大きな問題だ。本家のアメリカでさえ,いくつかのトラブルが起きている」(139頁)との懸念を示してもいた。
「1973年秋の石油危機で,産業界はにわかに原子力に期待をかけた」けれども,「もし日本が,いまの調子でアメリカ型の原子力発電所だけを建設しつづけていったら,こんどは『濃縮ウラン危機』に襲われる」(156頁)と断わることも忘れていなかったのである。
朝日新聞科学部編『明日へのエネルギー』は1974年の6月に発行されていた。ところが,1979年3月28日,アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所が,重大な原子力事故を発生させていた。この原発事故がアメリカにおける原発史に対して大きな抑制(ブレーキ)となっていた点は,その後における展開を一瞥するまでなく,周知の事実である。
しかしその間に,朝日新聞社科学部部大熊由紀子『核燃料-探査から廃棄物処理まで-』朝日新聞社,1975年は,啓蒙的な内容としてまとめられている本になっていたが,結局のまとめ方としては「つぎのように語る」といった錯誤のほうにはまっていた。
というのも,大熊由紀子は,こう結論するに至っていたからである。
いまから半世紀も前であって,しかも石油「ショック」というエネルギー危機の余韻がまだ収まらぬ時期における結論だったにしても,この発言じたいがあまりにも短見になっていった,と批判せざるをえまい。
※-3 日本の原発-出口がどこにもみつからない,つまり糞詰まり状態にある現状-
a) 伊東光晴『原子力発電の政治経済学』岩波書店,2013年10月が,当然,2011年「3・11」を踏まえての議論であったが,経済学者の立場から原発が「否であり,非である論拠」を挙げて,批判するための議論を展開していた。
b) 山本義隆『福島の原発事故をめぐって-いくつか学び考えたこと-』みすず書房,2011年8月は,「3・11」直後に着想して執筆,公刊した本であったが,たくさん寄せられているアマゾンの書評のなかには,こういう文章もあった。
山本義隆自身は,「一刻も早く原発依存社会から脱却すべてきである-原発ファシズムの全貌を追い,〔その〕容認は子孫への犯罪であると説いた」というのである。
c) 苫米地英人『原発洗脳-アメリカに支配される日本の原子力-』日本文芸社,2013年1月という本のセールス・トークはこう謳っていた。
この久米地の本が唱えている核心は,日本の製造業においては「大宗の1社」であったはずの東芝が,アメリカの原発事業をそれこそ「ババ抜きの要領」でツケ回しされるかっこうで引きうけたあげく,どうなっていたかとみれば,その直後において,自社の本体事業の「全体」までも巻きこまれるハメにまでなって,結局は崩壊させられていった事実を踏まえて観察してみれば,「日本の原発はアメリカの核燃料置き場〔になったの〕だ」という指摘の意味も,よく理解できるはずである。
だから,大西康之『東芝 原子力敗戦』文藝春秋,2017年という本が「19万人企業を滅ぼした思考停止の凡人たち」という宣伝文句を添えられて販売されていた事情も分かる。
当時,東芝がそうした蹉跌状態にはまりこんでていった時期に,伊丹敬之(いたみ・ひろゆき,1945年3月16日生まれ)という日本の経営学者がいて,一橋大学名誉教授となってから東京理科大学大学院経営研究科を経て国際大学(前)学長に就任したり,
しかも経営学分野初の文化功労者になってもいたけれども,以下のごとき経歴を積んできたなかで,東芝の取締役に就いたことによって「自分の人生に大きな▼点」を付けるハメになっていた事実は,そう簡単には黙過できない。
参考にまでいうと,東芝の混迷が表面化したきっかけは,2015年に発覚した不正会計問題にあった。混乱の最中,2006年に買収した原子力発電プラントメーカー,米ウェスチングハウス社(以下,WH)が巨額の損失を出してしまい,2017年に経営破綻した。 この影響のために東芝も,2017年3月期に9656億円の最終赤字を計上した,という経緯になっていた。
その間,学識経験者として,またとくに経営学者としての力量・風格を買われてだったと思われるが,伊丹敬之が東芝の外部取締役として参与していたわけである。
しかし,結果として観るほかないが,彼のその任務遂行は「節穴」だらけであったと酷評されて当然であった。しかし,その東芝騒動の直後に伊丹は新潟県にある国際大学学長に就任していた。
率直にいわせてもらうと,まるで「トンズラをこいた」みたいに〈這々の体〉で,東京理科大学大学院・科長から新潟の国際大学の学長に横滑り的に就任。実はその年度は,1945年3月16日生まれの伊丹敬之にとって73歳に当たる時期でもあり,実に優雅な人生の送り方になっていた。
なお,国際大学とは1982年に設立の,新潟県南魚沼市にある私立大学であり,略称はIUJ(International University of Japan)。 日本初の大学院大学で,学内の公用語を英語にした日本初の高等教育機関であった。少数精鋭教育を主眼とし,大学院研究科,研究所は世界ランキングでも上位に位置付けられる。スーパーグローバル大学創成支援事業のグローバル牽引型大学に指定されている。
最後に,つぎに挙げる3冊,原発関連の本は,いずれも好著で,原子力発電の問題に関して「否・非」である立場を,歴史的にも論理的にもものごとを明証しようとする論旨を開陳していた。
村田光平『原子力と日本病』朝日新聞社,2002年6月。
久米三四郎『科学としての反原発』七つ森書館,2010年9月。
土井和巳『原発と日本列島-原発拡大政策は間違っている-』五月書房,2010年9月。
また,つぎのこの本は,すでに有名人になっていた者が公刊していた。
蓮池 透『告発-日本で原発を再稼働してはいけない三つの理由-』ビジネス社,2018年2月。
蓮池 透は,東京理科大学を卒業後,東電に就職し,東電福島第1原発などに勤務していた。蓮池は1977年から2009年まで東京電力で働いた。原子力発電所や核燃料リサイクル業務を担当したが, 最初の赴任先が福島第1原発で,そこで3年半ほど計測制御装置の保守管理などをおこなっていた。
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