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原子力村は昔「原発は炭酸ガスを出さない」などと世間に向けて愚昧な虚説を喧伝した(1)

 ※-1 原発が炭酸ガスを出さないという「安全神話」並みの大ウソ

 a) 今はもう昔になるが,原子力村からは,まず「原発は炭酸ガスを出さない」という正真正銘のウソが広められていたが,

 これがいつの間にか「稼働中は炭酸ガスを出さない」という説明に変質したと思いきや,

 最近は「稼働中であってもほとんど炭酸ガス出さない」という具合に,さらに変転(空転?)させてきた。

 以上のごとき言説の移行は,いったいどのように受けとめたらよかったのか?

 「原発は炭素ガスを出さない」と説明する原子力村的に特有だったデタラメな言説は,まさしく虚偽のイデオロギーの典型見本であった。
 付記)冒頭の画像は文中に引用されているものを借りた。

 だが,いまだにその残滓を懐かしがり,そして原発は炭酸ガスの排出量が少ないのだから,地球環境の温暖化にかける負担は少ないのだなどと,おおよそ科学的とはいえない日和見の非知見を,いままでさんざんばらまいてきた。

 補注)なお,本稿の初出は2022年12月27日であり,本日2023年9月18日に更新することになった。

 岸田文雄政権は2021年10月4日に発足していたが,この自民党の「世襲3代目の政治屋」は,防衛費を2023年度の予算から5年をかけて倍増(GDP比率で一挙に2%に増やし)させはじめたが,国民生活のために予算確保は超・渋チン状態のままであった。

 そして,2023年9月13日に内閣を改造していたものの,自民党政権が創価学会公明党との野合体である事実は周知のことがらであるところへ,まるで重ね餅の要領でもって,統一教会との縁切りすらできないまま,そしてもともと関係のあった国家神道的な極右勢力とも濃厚に親密でもあったというべき,その全体の様相をみると「キメラ的でかなりみっともなかった権力政治」を,現状維持させようとするばかりであって,変革というにふさわしい動きなど起こしようがない体制を,旧態依然に整備(?)してきた。

統一教会とはいまだに腐れ縁だらけの内閣改造人事

 b) それでいてこの首相いわく「変化を力にする内閣」だと。だが,統一教会との腐れ縁すらまともに吹っ切れない自民党議員たちをけっこうな数,この内閣のなかに取り入れていた。

 ということで,2023年9月に実施された『毎日新聞』の世論調査は,つぎのような結果になっていた。

『毎日新聞』2023年9月18日朝刊1面
ところで「青木の法則」によれば
「内閣支持率」+「政党支持率」で
ちょうど50となり
危険水域の上限になった

 問題は,統一教会との決別どころかいまだに密着した大勢のまま,しかもその関係がまだ深くある自民党の議員たちまでを,岸田文雄は,今回(2023年9月13日)に造した内閣の閣僚(大臣・長官)に多数登用していた。

 この「世襲3代目の政治屋」はやはり,「世間の常識のカケラすらないボンボンの甘ちゃん世襲議員」のまま,一国の首相になっていたというわけか?

 c) 参考にまで『朝日新聞』が1年前の2022年8月に実施していた世論調査について触れてみるが,これが,いまや数少ないまともな新聞紙の1社である『日刊ゲンダイ』がとりあげては,つぎのように論評していた。

   ◆ 自民党と統一教会の“腐れ縁”「断ち切れない」76%                    支持層さえも期待薄 = 朝日新聞調査 ◆
 =『日刊ゲンダイ』2022/08/29 12:55,
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/310506

 旧統一教会との関係を「断ち切るべきだ」は82%だが……。自民党は統一教会と完全決別できるのかどうか,自民党支持者でさえ “期待薄” とみていることが分かった。

 朝日新聞が〔8月〕27,28日に実施した世論調査で,政治家と統一教会(世界平和統一家庭連合)をめぐる問題について質問。首相の対応を「評価する」は21%,「評価しない」が65%だった。

 政治家は統一教会との関係を断ち切るべきかどうかについては,「断ち切るべきだ」が82%,「その必要はない」が12%。圧倒的多数が決別を求めているのだが,

 一方で,自民党の政治家が統一教会との関係を断ち切れるのかどうかについては,「断ち切れる」はわずか16%で,「断ち切れない」が76%と4倍以上だった。

 自民党支持層でも「断ち切れる」は28%にとどまり,「断ち切れない」が64%だった。

『日刊ゲンダイ』2022年8月29日報道

 ところが,2023年のこの9月になって世論調査をした『毎日新聞』の結果も,この『朝日新聞』の世論調査,それも1年ほど前の2022年8月に実施されていたそれに類似しており,国民・市民・庶民たちの意見は,自民党政権は「統一教会との関係を断ち切るべき」だという批判などになお維持されていたゆえ,われわれが懸念していたとおりの結果が示された。

 2022年8月時点の『朝日新聞』世論調査は,統一教会と政治家(ただし自民党議員と関係のみにあらずだが)の関係を断ち切るべきだという8割にも達する結果を伝えると同時に,その関係が断ち切れるかいう質問に対して,断ち切れないという答えた率も7割6分あった。

 2023年9月時点での最新となった『毎日新聞』世論調査は,1年ほど前の『朝日新聞』世論調査が,岸田文雄政権に対して国民・市民・庶民側がすでに向けていた「疑いの目線」を,当時の状況のなかにあっての理解だが,「自民党政権内と統一教会との腐れ縁」については,その後も「多分解消できないものとなる」と予測し,つまりドンピシャリに的中させていた。

 d) もっとも,政権党と統一教会との癒着問題を除去すべだという問題は,われわれの目線にも分かりやすくとらえられたのに対して,岸田文雄政権の立場にとってその問題は,当初からたいそうむずかしいものだ,と受けとめられていた。

 ともかく岸田文雄はこのたび,そうした国民・市民・庶民が希望・期待する方向とは《完全に真逆の内閣改造人事》をおこなった。この首相は,自民党と統一教会との腐れ縁を完全に絶つための努力を,まともにおこなう気がまったくない事実を自白した。

 岸田文雄は「世襲3代目の政治屋」として政治家になった理由(志望・動機)に関係してであったが,しかも子どもたちから「首相になったらなにが一番やりたい仕事かと質問された」さい,その答えが振るっていた。「それは人事だ」とのたもうたのである。

 『経世済民』などにかかわって一国最高指導者がになうべき,もろもろの任務・仕事のなかから「そのなにか」を選ぶのではなく,自身の「内閣の人事イジリ」が,自分が首相になって一番関心のある「内閣総理大臣の仕事(?)」だと,それも子どもたちから問われてそう答えた。

 こうなると,もはや呆れてモノもいいたくなくなる程度まで落ちていた「凡才未満」の,政治家ならば「完全に失格」の「世襲3代目の政治屋」が,現にまだこの日本国・最高責任者の立場に就いている。

 2022年8月に実施されていた『朝日新聞』の世論調査がすでに明確に提示していた「国会議員たちと統一教会との縁切り」の問題など,いっさいなされることもないまま,2023年9月まで漫然と過ごしてきた岸田文雄政権は,今回2023年9月の『毎日新聞』の世論調査でもまたもや最低の内閣支持率25%を記録したのは,以上のような理由・事情ゆえの結果であって,それなりに必然の結果だといえる。

 e) 本日のこの記述は原発問題関連であった。岸田文雄という首相はやはり2022年8月下旬,日本では「原発の再稼働のみならず新増設までおこなう」と,これまた国家官僚(ここでは経済産業省の者たち)が説く方針を鵜呑み,それも消化不良も起こすまでもなく,オウム返しのごとく復唱していた。

 原発を今後において新増設までしたら,この国におけるエネルギー政策の基本路線,つまり,再生可能エネルギーを中核とするスマート・グリッド,これをくわしくいえば,

 IT技術を活用し,発電所の供給側と家庭や事業所などの需要側の電力需給を自動制御し,需要に応じて発電施設からの電力を効率よく配分する電力制御技術をもった電力網の構築・展開は,全面的に(とくに時間的に)阻害されるほかなくなる。

 NECのホームページには,つぎのように説明されていた関連の頁があるが,これは前段の方向「再生可能エネルギーを中核とするスマート・グリッド体制」を100%以上にも意識したうえで,自社の将来がめざすべき目標がどこにあるかを,とくにエネルギー政策について説明している。

原発(原子力エネルギー)は「持続可能な再生目標」に
まっこうから逆らい,否定し,なおかつ破壊することは
いまでは承知の事実

  本日における本稿の話題は原発問題であったが,旧稿を復活させるに先立ち,以上のように前提の議論をしたところで,つぎの本論に進みたい。


 ※-2 半世紀以上も昔から「原発は炭酸ガスを出さない」と断言していた。ついこの間までは「原発の稼働中は炭酸ガスを出さない」と説明していた。ところが,最近になると「原発は稼働中は炭酸ガスをほとんど出さない」という具合に「表現を変質させた」

 以上の3時期でのように原発は「炭素ガスをそれぞれなりにいちおうは『出さない』」と説明してきた「原子力ムラの発展的な言説行為」は,完全かつまた不完全にも,もともとデタラメな言説であり,いわば「そのたびに・なんちゃって」の「コトバ遊びの言説」であった。

 【参考図解】-原子力村を描いてみた2つの図解例-

ペンタゴンとしての原子力村の相互利害関係図
     
国民・市民・庶民はまるで蚊帳の外

  ★ 本日の主題 ★ 

 原子力というエネルギー源は,元来「原爆・水爆」などの核兵器専用であったはずだから,民生用のエネルギー電源として使用してきたいままでの路線が,そもそも過ちから出立していた。

 ましてや,再生可能エネルギーの導入・利用・展開に妨げとなるもっとも有害無益なエネルギー電源が原子力であった。放射性物質の物理・科学的なエネルギーを電力生産のために応用した点が,基本的に錯誤そのものであった。

 

 ※-3 アイゼンハワーの国連演説

 1953年12月8日,当時のアメリカ大統領,ドワイト・D・アイゼンハワーが,ニューヨークの国連本部で開催された「原子力の平和利用に関する国連総会」で,「原子力の平和のための利用」を提唱した。

 けれども,このアイゼンハワーの演説は,その後に「エネルギーとしての悪魔性」を大いに発揮していく「原子力発電の反人類史的・非人間的な方途」を,しってかしらずか分からぬが,必然的に発現していくほかなかった未来を予告していた。

 アイゼンハワーのこの演説からつぎの段落を引用しておく。この発言は,21世紀になっている現在,エネルギー問題の全体的な状況に照らして判断するとしたら,すなわち再生可能エネルギーの導入・発展が時代の必然的な趨勢のもと,すなわち,いまでは「百害あって一利なし」の内容であったというほかない。
 
 以下の引用は「前略」と「後略」ありなので,途中の段落のみ適宜に引き出している。

           ♠ 平和のための原子力(1953年)♠

  米国は,軍事目的の核物質の単なる削減や廃絶以上のものを求めていく。
 核兵器を兵士たちの手から取り上げることだけでは十分とはいえない。そうした兵器は,核の軍事用の 包装を剥ぎ取り,平和のために利用する術をしる人びとに託さなければならない。

 米国は,核による軍備増強という恐るべき流れをまったく逆の方向に向かわせることができるならば,このもっとも破壊的な力が,すべての人類に恩恵をもたらす偉大な恵みとなりうることを認識している。

 米国は,核エネルギーの平和利用は,将来の夢ではないと考えている。
 その可能性はすでに立証され, 今日,現在,ここにある。

 世界中の科学者および技術者のすべてがそのアイデアを試し,開発するために 必要となる十分な量の核分裂物質を手にすれば,その可能性が,世界的な,効率的な,そして経済的なものへと急速にかたちを変えていくことを,誰一人疑うことはできない。

 原子力の脅威が,人びとの,そして東西の国々の政府の脳裏から消え始める日を早くもたらすために,現時点で講ずることのできる措置がいくつかある。

 そこで私は以下の提案をおこなう。(後略)

 注記)この “Atoms for Peace , The Dwight D. Eisenhower Presidential Library and Museum” の日本語訳は,「ドワイト・D・アイゼンハワー,国務省出版物,米国の歴史と民主主義の基本文書大統領演説」『AMERICAN CENTER JAPAN』https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/2375/ から引用。 

アイゼンハワー演説,1953年

 

 ※-4 必然的に発生した原発の大事故

 アイゼンハワーのいった大事なところ,つまり「核分裂物質を手にすれば,その可能性が,世界的な,効率的な,そして経済的なものへと急速にかたちを変えていくこと」が,実際には,はたして,どのような出来事となって出現していたか?

 それは,通常に想定されうる従来の事故とは「桁違いに未曾有の」,つまり「深刻かつ重大な原発の事故」発生になっていた。

原発事故の段階基準

 最初,アメリカがまずその先例となる事故,スリーマイル島原発事故を起こした。時は1979年3月28日。事故の程度(レベル)は5であった。

 つぎ,ソ連で原発事故として “最高度のレベル7” になるチェルノブイリ原発事故が起きた。時は1986年4月26日。

 そして,日本もその最高度のレベルとなった東電福島第1原発事故を起こした。時は2011年3月11日。    

  アイゼンハワーは原発が事故を起こすシロモノだという事実は,必らずしも念頭に置かないでその演説をしていた。科学技術はなんであっても「表と裏,利点と不利点がある」ことは,通常の理解力があれば容易に察知できるはずである。

 原爆はあくまで戦争用の兵器であり,大規模で強力な敵(国)破壊を目的とする。原発は電力生産用であるからいちおう,原爆とは一線を画せる各技術の応用である。

 しかし,そもそものそのふるさ:大元は核エネルギーであって,この物質に本来的に固有であった “きわめつけの危険性” に対する制御可能性は,人類・人間の立場からすれば,いつでも絶対的に保証しうる性質のものではなかった。

 

 ※-5「亡国の首相の虚偽発言- under control -」

 安倍晋三が,2020年に開催を予定していた東京オリンピックを招致するために,2013年9月に開催されたIOCの会議のなかで,「東電福島第1原発事故現場」は「アンダーコントロール」だといい,なんら問題はないとも断わり,いわば「大ウソ」をつく芝居を打っていた。

 安倍晋三はその場で,「核エネルギー」「に本来的に固有である」「危険性」に関してならば,絶対に「嘘にしかなりえないウソそのもの」を吐いていた。安倍はその罪業的な発言を放った事実によって,常識ある世間においてならば,未来永劫に語りつがれる大失敗を意図して犯した。

 ところで,この安倍晋三にとってお気に入りであった「極右・反動政治の女性運動家の櫻井よしこ」というマドンナ老嬢がいた。そして,この女性が原発を大好きにしていた事実は,原爆という兵器を強く意識した立場・イデオロギーに淵源していた。 

 その櫻井よしこ女史が口にしてきた原発推進論,そして核武装必要性に関した発言の支離滅裂ぶりは,以前から鮮明であった。科学技術方面の基礎知識が蓄えられていた場所に,ずいぶん無縁であったと察せられる彼女の立場は,原発の問題に関してあれこれ発言するたびに露呈・発散させていた「自分のカッコウの悪さ」に気づいていなかった。そのリクツの「無理・無体」ぶりばかりがめだっていた。

 1) 櫻井よしこの得意とした情宣活動として,大手紙に出す「意見広告」があった。原発関連では “高速増殖炉を諦める” なという「非科学的,非合理的」で「反経済原理的かる反環境保護的」なエネルギー問題に対する意見を表明してきた。

この人は原発・原子力エネルギーの本性を分かっていない
この人は核燃料サイクルの実現がそれほどむずかしく
また危険であるかも分かっていない
もしかすると「無知は力」?

 しかし,この「高速増殖炉の建設を止めるな,諦めるな」という原子力ムラに対する応援団会長(マドンナ的に高齢化したチアガールリーダーの立場)みたいな役割は,はたして現実的に意味のある立場として「このような自身の主張」を説明できていたのか。

  その答えは「完全に否」であった。半世紀以上からこの高速増殖炉の商用化をめざした研究開発がなされてきたものの,いまだに完成品としては実現されていない。まだまだ実験的な段階に置かれている。いってみれば錬金術にも感じられる試みが,ただ性懲りもなく継続されてきた。

 2) 高速増殖炉の回想

 世界における高速増殖炉--FBR,Fast Breeder Reactor,高速中性子を利用して燃料を増殖するための原子炉--開発の歴史は古く,米国において1946年に臨界に達した小型高速実験炉クレメンタイン(熱出力25kw)から始まった。

 その後,1950年代には英国とソ連が,1960年代にはフランスが相次いで高速増殖炉開発に着手し,さらに遅れて西ドイツ及び日本が着手した。その後各国の研究開発は着実に進展した。現在は,フランス・英国・ソ連では,原型炉段階から実証炉段階に進もうとしている。

 注記)第6章「新型炉と核融合の研究開発 (参考)諸外国の動向」『原子力委員会ホームページ』http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/wp1977/sb2060501.htm
 
 前段の原子力委員会(内閣府原子力委員会,http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/index.htm 補注))によると,この高速増殖炉に関する説明は,以下に記述する状況になっていた。

  補注)なおこの原子力委員会は,その設立の意義をつぎのように説明している。これをさきに引用しておく。

   我が国の原子力の研究,開発及び利用は,これを平和の目的に限り,安全の確保を旨とし,民主的な運営の下に,自主的にこれを行い,成果を公開し,進んで国際協力に資するという方針で,将来のエネルギー源を確保し,学術の進歩と産業の振興とを図り,もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目指して行うことを定めた原子力基本法……1955年12月19日に制定されて,本格的に始まりました。

 原子力委員会は,これに関する国の施策を計画的に遂行し,原子力行政の民主的な運営を図るために,この法律によって1956年1月1日に設置されました。

 原子力委員会の役割は日本の原子力利用の歩みとともに見直されてきました。もっとも最近の見直しは,2014年12月16日に施行された改正原子力委員会設置法です。

原子力委員会・高速増殖炉の説明

  3) 小出裕章の説明

 小出裕章は「高速増殖炉」について,こう説明している。

 今日ようやくにして利用されている原子力発電所の原子炉では,燃えないウランがプルトニウムに変換される効率が低く,そのような目的にはとうてい役に立たない。

 そのため,原子力(核分裂エネルギー)をエネルギー資源として意味のあるものにするためには,高速増殖炉と呼ばれる原子炉を実用化しなければならないことが,原子力開発の当初から分かっていた。

 ところが,この高速増殖炉と呼ばれる原子炉は乗り越えなければならない技術的な課題がとてつもなく多くあり,原子力(=核開発)にかかわったほとんどの国が一度は高速増殖炉開発に取り組んだものの,そのすべてが失敗してきた。

 注記)「高速増殖炉に託した夢」〔『小出裕章のホームページ』内の記述〕,http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kid/npower/fbrhist.htm

 この「高速増殖炉と呼ばれる原子炉」の「実用化」は,半世紀以上の歳月をかけて来たが,いまだにその本格的な稼働・利用を実現していない。

 4) ネット上で閲覧できる関連のホームページには,たとえば「日本における高速増殖炉開発の経緯」https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_03-01-06-01.html  が,「更新」の日付を1998年3月の状態で,つぎのように説明していた。

   〈概  要〉

 わが国の高速増殖炉(FBR)の開発は,原子力委員会が昭和41〔1966〕年5月に決定した基本方針に従って実施されてきた。

 昭和42〔1967〕年10月に動力炉・核燃料開発事業団(動燃(現日本原子力研究開発機構))が発足し,FBRのあらゆる分野で基礎研究や工学的研究を実施し,その集大成として実験炉(常陽)が昭和52〔1977〕年4月に臨界を達成,その後,順調な運転を続け多くの成果を挙げている。

 補注)文中の「順調な運転を続け多くの成果を挙げている」というくだりは,容赦なくいって,とても嘘っぽい。というのは,その「順調な運転」とは「多くの成果」を不具合や不首尾として記録してきた足跡を,そっくりそのまま裏返しにした表現であったからである。

 原型炉(もんじゅ)は昭和60〔1985〕年10月に着工,平成4〔1992〕年12月に総合機能試験を終了し,平成6〔1994〕年4月に初臨界を達成したが,性能試験中の平成7〔1995〕年12月に2次系主配管温度計部からのナトリウム漏えいが発生した。

 平成9〔1997〕年3月にナトリウム漏えいの原因究明を完了し,プラント全般にわたる安全総点検を実施している。一方,実証炉の開発に関しては,2000年代初頭の着工を目標に,昭和50年代前半から電力業界,動燃,日本原子力研究所(原研(現日本原子力研究開発機構))などが協力して研究開発を進めている。
  
 この1993年8月時点になる概要説明は,高速増殖炉のその後をもっともらしく記述している。だが,21世紀になって四半世紀近くが経った現在でも,なお「夢だと思われ大いに期待されてきたこの原子炉」である事実に変わりはないまま,その本来の機能・性能は,いつまで経っても実現できないでいる。

核燃料サイクルの開発はこれからも続くのか

 5) それどころか,技術開発論の初歩的な理解として観たこの高速増殖炉の「基礎実験⇒実用化研究⇒商用化達成」(一般的にいえば「基礎⇒応用⇒開発」)の過程がろくに進展させえないまま,つまり,試行錯誤とはいいえない段階に停頓してきた。

 補注)高速増殖炉に関連する情報について説明をしていくとキリがないので,ここではつぎの記述を参照することを勧めておき,本日の記述を終わりにしたい。

 以下に付記した『各情報』と称したホームページに収録された記述は,題名を「高速増殖炉先進国ロシアに負けるな?」とかかげていた。この「?」が要点となるべき論旨・基準となっているらしい。直接に以下の記事を読みたい人は,住所をコピペして検索してほしい。

 ⇒「高速増殖炉先進国ロシアに負けるな?」『核情報』2020年3月16日,http://kakujoho.net/npt/BN1200.html

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