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菅 義偉首相(2020年当時)が学術会議新会員6名を拒否した問題(3)

 ※-1 2020年秋,当時の菅 義偉首相が「学術会議新会員6名を拒否した問題」の歴史的な意味は,この菅の旧特高的な政治屋としての資質を丸出しにさせただけなく,安倍晋三政権を継いだ悪政をさらに進化(?)させたつもりであった

 実は学問のなんたるか,歴史になかに生きてきた自分が首相の1人として今後,どう記録され・断罪されるか,昔もいまも,なにも分っていなかった単細胞的な「国賊的自民党国会議員」のなれのはてが,菅 義偉であった。

 この国の民主主義や学問の自由が破壊されてきた記録=様相は,世紀末でもないのに,実に哀れなこの国の「経済3流・政治4流」国的な品位・品格のタダレた本性を,如実に表現するものであった。

 付記1)冒頭の人物(男性)は朝堂院大覚。後段で言及がある。

 付記2)「本稿(3)」の前編はこちらである。
   ⇒  https://note.com/brainy_turntable/n/n668b50ac6b95

 菅 義偉による学術会議新会員6名拒否は,さきに安倍晋三がつとにその模範を示してもきたように,科学も学問も理論も,そしてこれらの実践もなにも判らぬ政治屋たちが「学術研究の世界をぶち壊してきた」結果,「いまや後進国日本:衰退途上国」の哀れな姿ともなって,目前に歴然として展開されるようになってしまった。

 2024年なってより明快になっている,それもあらゆる方面・領域において日本の実力(国力)が低下・沈滞してきた現象は,とりわけ安倍晋三の第2次政権から菅 義偉ならびに岸田文雄の政権へと移動するなかで,ますます深刻化するばかりであった。

 2024年になって大問題になったが,主に自民党国会議員たちの「パー券裏金問題」の悪用は,自分たちの上級市民的なゼイタクな生活水準を維持することだけに汲々としてきた,それもとくに自民党に多い「世襲3代目の政治屋」たちの「反・非・逆〈選良〉」としての行動ぶりは,

 その自民党の下駄の歯にこびりついたク▼としてならば,すでに完全に一体化した「公明党というオカルト政党」(国土交通省大臣の椅子を常時割り当てられているこの創価学会党)とも手を組んだかたちで,つまり,両党がたがいに表裏一体化したかたちとなって,この日本国の没落に多大な負の貢献を果たしてきた。

 彼らに課せられたその「国家的任務の遂行には完全に反した,すなわち本末転倒の国家運営ぶり」は,まさに亡国のかつ逆賊的な存在意義しかみいだせないほど体たらくでありつづけてきた。

 とりわけ,安倍晋三の第2次政権期(2012年12月26日~2020年9月16日)以降,彼奴等は本当にそうした国賊であったと指弾されるほかない存在として,われわれの網膜に色濃く焼きついている連中であった。

 そんなこんな体たらくもはなはだしいこの日本国政治・経済の惨状のなかで,この根腐れ状態のなかに埋没してきた自公民であったが,「統一協会や日本会議や創価学会など」に支援されてきた,つまり旧態依然たる「20世紀的遺物・遺制風の政治体質」に即しているからこそ,この記述でとりあげ批判する菅 義偉も,首相になるや早速,その立場から自分も手出ししたのが「学問の破壊」「言論・思想の自由の否定」であった。

【参考画像・資料】

上方部分が主旨で下方部分は
菅 義偉が介入した意図

 

 ※-2「菅首相が学術会議の任命を拒否した6人はこんな人 安保法制,特定秘密保護法,辺野古などで政府に異論」『東京新聞』2020年10月1日 21時01分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/59092 による紹介

 この『東京新聞』の記事はこう説明していた。

 「政策提言をおこなう国の特別機関「日本学術会議」が,新会員として内閣府に推薦した法律・歴史学者ら6人の任命について,菅 義偉首相が拒否していた問題」

 6人は安全保障関連法や特定秘密保護法などで政府の方針に異論を示してきた。政府の意に沿わない人物は排除しようとする菅政権の意図が浮かぶ。

 ■ 東京大社会科学研究所教授の宇野重規教授(政治思想史)
  2013年12月に成立した特定秘密保護法に対し,「民主主義の基盤そのものを危うくしかねない」と批判。「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼び掛け人にも名を連ねていた。2007年に「トクヴィル 平等と不平等の理論家」でサントリー学芸賞受賞。

 ■ 早稲田大大学院法務研究科の岡田正則教授(行政法)
  「安全保障関連法案の廃止を求める早稲田大学有志の会」の呼びかけ人の1人。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設問題をめぐっては2018年,他の学者らとともに政府の対応に抗議する声明を発表。

 ■ 東京慈恵会医科大の小沢隆一教授(憲法学)
  2015年7月,衆院特別委員会の中央公聴会で,野党推薦の公述人として出席。安保関連法案について「歯止めのない集団的自衛権の行使につながりかねない」と違憲性を指摘し,廃案を求めた。

 ■ 東京大大学院人文社会系研究科の加藤陽子教授(日本近現代史)
  憲法学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」の呼びかけ人の1人。改憲や特定秘密保護法などに反対してきた。2010年に「それでも,日本人は『戦争』を選んだ」で小林秀雄賞を受賞。政府の公文書管理委員会の委員も務めた。

 ■ 立命館大大学院法務研究科の松宮孝明教授(刑事法)
  2017年6月,「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法案について,参院法務委員会の参考人質疑で,「戦後最悪の治安立法となる」と批判。

 ■ 京都大の芦名定道教授(キリスト教学)
  「安全保障関連法に反対する学者の会」や,安保法制に反対する「自由と平和のための京大有志の会」の賛同者。

 加藤陽子にいわせれば,要するにこういう問題の背景・事情があった。

この加藤陽子は東大政治学者・伊藤隆が育てた学究であるが
この伊藤とは真逆の立場・思想を加藤は選んだ

  その伊藤 隆については,こういう指摘がなされていた。

 私〔藤原辰史〕にとって衝撃的だったのは,やはり東大名誉教授の歴史学者の伊藤 隆さんですね。加藤陽子さんとか,鈴木 淳さんとか,御厨 貴さんとか,綺羅星のような歴史学者を育て,輩出した人なんです。

 私にとって伊藤 隆さんの研究は,実証主義的な日本現代史の研究者としてまず記憶されています。一方で,彼はずっと新しい歴史教科書をつくる運動,そしていま,育鵬社の歴史の本の主要執筆者です。僕が一番衝撃だったのは,伊藤さんが「歴史から学ぶ必要はない」といったこと

 歴史から学ぶ必要がないと歴史学者がいうというのは天変地異に等しいと思います。つまりこれはいま,起きている世界中の歴史修正主義,ロシア,ポーランド,ハンガリーから日本まで,あらゆる国で起こっていることですけど,問題は「現在」にしかないという考え方のように感じました。

 過去のいろいろな複雑な経緯があって現在の問題が起こっているのですが,それを考えるのは意味がないいということを,ほかならぬ伊藤さんという歴史家がいったことが,僕にとってはほんとに衝撃でした

註記)「〈著者インタビュー〉歴史と教育と愛国と 斉加尚代 × 藤原辰史 『何が記者を殺すのか』刊行記念対談」『集英社新書プラス』2022年6月24日,https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/ 以上の引用は藤原辰史が発言した部分から。

伊藤隆という反動形成であった東大の学者であったから
菅 義偉のような政治屋からは無条件に
大歓迎される政治学者であったはず

 ところで,2024年7月7日実施の東京都都知事選挙で3選された小池百合子は,それより7年前であったが2017年の都知事会見の場で,フリーランス記者横田 一が投じた質問に対して

 「(自分の気に入らない〔旧〕民進党国会議員たちは〈希望の党〉には合流させず」)排除いたします」

という応答をしたがために結果,その排除された者たちが立憲民主党を結成する経緯を生んでいた。

 要は,橫田 一はフリーのジャーナリストとして,当時における日本の政局を根幹から動すジャーナリストの役目を果たしていた。それだけに,自分の思惑をパンク(頓挫)させられた小池百合子側は,この橫田には恨み骨髄であり,事後いっさい相手にしようとしなくなった。

【参考記事】-『読売新聞』2021年10月6日の記事-

 
 ここでは,つぎの日本政治史に関した説明図を参照しておきたい。

このように現在における政党勢力図はとくに野党側は四分五裂状態
もっとも最近の自民党内は単なる肥だめ状態で早めに分解掃除しておく必要あり

日本では二大政党勢力の形成が未熟でこのように「政治4流国」であること以外
なにも特徴がない小選挙区制の実際運用もその狙いが全然実現されていない

なによりも世襲政治によって「世襲3代目の政治屋」のうつけ者たちが
国会の赤絨毯を不要に汚すしか能のない怠惰な一群となって
国政のまともな運営を根本から妨げている

 その後の小池百合子は橫田 一を天敵あつかいしてきたが,むしろ「日本の国民・市民・庶民たち」にとって有害無益で最大のお邪魔虫,つまり「最悪のお騒がせ」が,このまさに,黒百合の悪い意味にたとえられても文句がいえない喰わせ者だったこの都知事であった。

 日本の政治屋のなかで嘘つきの男性版の最高峰が安倍晋三だとしたら,その女性版は文句なしに小池百合子であった。

 40年以上も前の一時期,小池百合子とこの家族をしばらく,丸抱え的に世話をしてきたことがある朝堂院大覚(1940年12月9日生まれ,本名:松浦 良右)は,百合子のことを「嘘をつきまくる女」だと決めつけるくらい,悪評を投げつけていた。

朝堂院大覚は今年で84歳になる

 2024年7月7日の都知事選で彼女は当選したが,現在,公職選挙法の捜査対象になる可能性が高く,下手をすると辞職を余儀なくされると分析しているのは,元東京地検の関連する法的事情にくわしいヤメ検若狭 勝であった。猪瀬直樹の “二の舞が演じられる可能性” がありそうだという予測が立てられている。

 

 ※-3「本稿(3)」の本論

 2016年に首相が安倍晋三であったとき,学術会議「第23期の補充人事」任命の件にさいし,当時の「学術会議が候補として挙げていた複数人」が官邸側から拒否されていた。2020年になって,その「第25期の新会員6人」が任命されなかったとき,首相は菅 義偉に代わったばかりであった

 この2人の政治屋は,第2次安倍政権のとき「悪代官と悪庄屋」的なゾンビ・コンビとして悪業のかぎりをつくし,跋扈跳梁していた。さらに,菅 義偉が首相になってからというもの,いよいよ「両悪の散華」が広範囲に拡散されはじめると,その弊害の害悪性はとりとめがなくなった。

 学術(科学研究)の大切さなどろくに理解できていない,この世襲3代目の首相のために,日本の学問展開はさらに落ちこんでいく経路に向かい,いまやその悪影響だけがしっかりと日本の学術研究を蚕食するまでになった。

 日本はアジア・アフリカ諸国のなかでは比較的大人数のノーベル賞受賞者を輩出してきたが,現在に至りその受賞者たち自身が懸念するのは,今後において日本からは受賞者が出にくくなるのではないかという点であった。

 それでいて漢字もろくに読めないし,書けもしなかった安倍晋三や,学問研究とは完全に無縁である事実を明確に自白した菅 義偉,東大入試には3回落ちて早大に進学したせいか,学歴を訪ねられると「開成高校出身です」と応えるがごとき,最近歴代のこの3首相によるこの国の為政であったとなれば,これでなにかが善くなるという見通しなど始めから皆無であった。

 「こんな人たち」が日本の政治の頂点に居つづけてきたのだから,この国の学問・研究もまた凋落傾向を余儀なくされそうだという展望は,きわめて深刻な知的状況を意味する。

 ノーベル各賞が発表されている時期は10月だが,2022年と2023年は日本から輩出できていなかったこの受賞者であったが,今年2024年はどうなるか?

 本稿(3)の本論となった段落にまで来たので,あらためて本記述全体の要点を付記しておきたい。

  要点・1 本当の事実(真実)を研究してほしくない一国の最高指導者こそが,その国の存立・未来にとってみれば「最大の有害」人物。

  要点・2 戦時中(敗戦前)の旧大日本帝国時代,とくに社会・人文科学の分野に対する弾圧の記録は,なにを意味していたのか。忘れたか?

  要点・3 というよりは「いまだけ・自分だけ・カネだけ」だった安倍晋三の元政権から菅 義偉の前政権を経て,さらに岸田文雄の現政権になったところでも,

 日本政治の一大特性である「ウソの,ウソによる,ウソのための政治」に,なんら変化なしであった。つまり,彼らには国民たちの安寧を願う気持など,頭の片隅にさえない。嘘ばかりの政治屋に期待してはいけない。

 岸田文雄は,現在においてそのしんがりの首相としては,「嘘をつきまくっている」という自己認識すらもたないから,よりいっそう悪質。

  要点・4 専制的・独裁主義志向の為政を,民主主義の根本理念を充てて合理的に説明できる理屈などありえない。これは古今東西の普遍的な真理であった。

  要点・5 無教養人たちが政治を司ると一国の為政がどうなってしまうか,好例・見本的にとくにその無残さをみごとに体現させていた首相が菅 義偉であった。

 

 ※-4「共同・船田・任命拒否は闇討ち。失楽園も時効で,冷飯船田〔元〕は,石破〔茂〕と共に小沢の元に帰ってくる事である」『阿修羅 http://www.asyura2.com/』2020 年 10 月 07 日 10:55:26,http://www.asyura2.com/20/cult28/msg/570.html から 

(前略) 石破〔茂〕のように自民党に戻ったものの,見限った宮沢自民党よりもひどく,戻った橋本のころよりもさらににひどく,気違い部落(ママ)になった自民党は,もう,なんだかんだいっても

 自民党といわれた自民党はなく,自民党議員が馬鹿でも官僚がしっかりしているから大丈夫という評価ももはやなく,自民党のプリンスといわれた船田は馬鹿〔安倍晋三のこと〕のつぎも二浪で法政の馬鹿〔菅 義偉のこと〕のもとで一丁上がりでいいはずがなく,小沢のもとで三度目の政権交代に汗を流すべきである。

 註記)引用元は※-4の題字の個所。〔 〕内補足は引用者。

自民党議員はもう馬鹿バカりなのか

  以上枠内の引用は現在では使用禁止の用語も混ざっていたそのまま引用した。その点は断わっておきながら,あえて参照している。また,補足したとおり「馬鹿」とは安倍晋三のことで,「二浪で法政」とは菅 義偉のこと。

 人間に関するのことがらだから,馬鹿なほうに属する人がいくら大勢いてもなんら不思議はないし,大学に入学するのにどこの大学であっても何浪しようとかまわない(菅が大学に進学した時代は大学受験浪人生は珍しくはなかった)けれども,それが人間性の切磋琢磨や人格形成に「艱難汝を玉にす」るかのような形跡が,まったく観取できなかった。

 要は,誰であって正々堂々と生きていける権利がある。成蹊学園内でトコロテン方式で大学まで進学しようが,法政大学に2浪して入ったとしても,なんらまずいことはない。

 補注)岸田文雄は前述に触れたとおり東大を2浪したのち,早大に進学していた。

 だが,絶対的にいけないと断定されてよかった「彼らにまつわる基本の問題点」は,日本国総理大臣になっていながら,完全に支離滅裂・没論理・我利私欲だけの為政(「いまだけ・自分だけ・カネだけ」)を,熱心にやってきたことにあった。

 いまや総じて,「暮れゆく途中にあるこの国(最近では後進国だとか「衰退途上国」だと呼ぶほかなくなっている)」に対してさらに,その沈淪の速度に対して拍車をかけるためであるかのごとき為政しかできていなかった彼ら指導者の実在じたいが,この国にとって一番の深刻な問題になっていた。

 安倍晋三が亡国かつ国恥の首相であって,「私利・私欲のための内政」(「ウソの,ウソによる,ウソのための政治」⇒「私物化・死物化・負の遺産化」政治)しかおこないえなかったとすれば,菅 義偉は,そのアベにつづいて「私怨・私恨の采配」しかやろうとしていない。彼らに共通する1点は,まさしくきわめて度量の小さい,日本の憲政史上,最悪の首相たちであった事実を,就任以来それぞれに明確に実証してきた。

 補注)岸田文雄は「異次元のなんとか」などとトンチンカンな采配を振るおうとしてきたが,やることなすことのすべてが見当違いであって,この程度の悪さに関してならば,異次元的な評価を与えられないわけではない。

 この岸田文雄にも話が至ったところで,「世襲3代目の政治屋」の非常識,つまり世間知らずの唐変木ぶりは,嫌というほど国民たちに突きつけられた。ところが,肝心の当人がその自分の表看板である「異次元の常識」そのものの「非常識的な異次元ぶり」に関してすら,ほとんどといっていいくらいもともと自覚症状がなかった。

 要は以上の3人にあっては,この日本国を破壊し,倒壊させるための為政にいそしむ基本姿勢だけは共通していた。「貧しくとも清く正しく生きる人間たち」がなるべく大勢いてほしい,そうした国なってほしいのだが,この3人をみせつけられてきた現時点となっては,そのような願望を抱くことじたい,実にバカらしい期待である点を思いしらされた。

 そうだとなっているゆえ,この国に生きる人間として,未来への希望はますます抱けなくなった。

 ところで,この※-4の冒頭で引用した段落の一部は,きだ・みのる的な文章であり,敗戦直後に公刊された代表的な著作,同著『気違い部落周游紀行』1948年(昭和23年)に言及し,書かれた文章であった。

 同書は,当時,第2回毎日出版文化賞を受賞したという。そのほか,こまかい点には触れないが,その後は,「気違い」という表現は差別用語(放送禁止用語)だとされていた点を,あらためて断わっておく。

 

 ※-5「自著での主張も記憶にない? 菅官房長官『知らない』」asahi.com 2017年8月8日 16時05分,https://digital.asahi.com/articles/ASK884VHNK88UTFK00K.html

 ※-5のこの記事を参照するのは,菅 義偉がいかに身勝手であるだけでなく,自身の発言にかかわって露呈した矛盾を反省しないどころか,その事実を指摘した者を逆恨みする,という〈根性の悪さ〉が剔抉されていた点を明晰にしていたからである。

 過去には公文書の重要性を訴えていたのに,そのことすら記憶にない。「記録にない」「記憶にない」という政府答弁が相次いでいる学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設問題をめぐり,菅 義偉官房長官が〔2017年8月〕8日の記者会見で,公文書の公開のありように関する自著での主張を失念してしまっていることが浮き彫りになる一幕があった。

 菅氏は野党時代の2012年に出版した『政治家の覚悟』(文芸春秋)で,「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で,議事録はもっとも基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」と記していた。

 加計問題で国家戦略特区ワーキンググループの議事録の公開に応じる姿勢を示さない菅氏に対し,朝日新聞記者がこの部分を読み上げ,「これを本に記していた政治家は誰かわかるか」と尋ねたところ,「しらない」と答えた。

 記者が「官房長官だ」と指摘し,「政府の現状と照らし合わせて,じくじたる思いやきちんと記録に残すべきだという気持にはならないか」と尋ねると,菅氏は「いや,私は残していると思う」と主張した。 

菅義偉の「詭弁以前の虚言ぶり」

 この菅 義偉のいいぶんを聞かされた人は,おそらくこの応答の仕方に絶句する。

 もしかしたら,その自著は自分で書いたのではなく,代筆者(ghost writer)に全面的に任せていたのかと思いたくなる。自著の内容をそこまでよく記憶していないとなれば,このように疑り深く尋ねてみたくなる。当然の疑問である。

 通常,自著を有している人が,その本のなかに書かれている特定の一段落を読み上げられて,これが自分の文章であることを感知できない(ただちには分からない)ことは,いくらでもありうる。

 だが,菅 義偉の自著の場合は,非常に重要な論点,つまり「公文書の記録」に関した部分についてなのだから,これは「肝」になる箇所であったはずであり,それを忘れていた(故意にか?)という反応は,とうてい解せない態度:反応の仕方であった。

 なぜ,以上の記述をしてみたかといえば,本日の新聞(ここでは2020年の10月中の話)に広告の出ていた本,望月衣塑子・佐高 信『なぜ日本のジャーナリズムは崩壊したのか』講談社( +α 新書),2020年7月が謳っていた宣伝文句のなかに,本書の内容紹介の1項目として,菅 義偉に関して「自著の内容問われ大激怒とした菅総理大臣」という文句が置かれていたからである。

 警察国家官僚を駆使し,国民たちの秘密を暴き,脅迫的に他者を小突きまわすマフィア的な闇政治手法を得意とするこの首相・菅 義偉は,自身のデタラメとウソなどをひとつでも指摘・批判されるとなるや,これに対しては自分本位に勝手に怒りまくるという人間的な特性をもつ政治屋であった。「こんな人」が,いま,2020年9月からほぼ1年間だけであったが,この国の最高指導者の地位に居た。

 安倍晋三が政権の座に居た時期,この政権は「アベ1強〔凶・狂〕」的な強権政治を連続してきた。そして,この政権の官房長官として辣腕(?)を振るってきた当人が,いまは首相になっている。この人が首相のままでは,この国の “まつりごと” が正常に動くとは思えなかった。

 さて,2020年10月になってだが,俄然,世間を騒がせる話題となった学術会議新会員6人の任命を拒否し排除したのが,首相になりたてだったころの菅 義偉であった。

 

 ※-6「国論二分する政策に学術界から批判受け人事に関与始める?〈学術会議任命拒否〉」『東京新聞』2020年10月8日 05時50分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/60366

 日本学術会議の会員候補の任命拒否問題をめぐり,政府は〔2020年10月〕7日の国会審議で,推薦者のうち6人を除外した理由について「総合的,俯瞰的観点」にもとづく判断だとし,首相が会議の推薦通りに任命する義務はないとする政府の立場について「学術会議法の解釈を変更したものではない」と重ねて強調した。

このような経緯があった
安倍晋三の第2次政権の動向に対位して生じてきた経緯である

 ただ,安倍前政権下で人事への関与を始めたのは,安全保障関連法など国論を二分する政策を推し進め,学術界からの批判が相次いだ時期と重なる。

 補注)菅 義偉の理屈はリクツになっていなかった。というのは,ここで「『総合的,俯瞰的観点』にもとづく判断だとし」て,「首相が会議の推薦通りに任命する義務はないとする政府の立場」そのものが,まだなにもまともに説明していなかったからである。

 ただ強引に自分の思いを「総合的,俯瞰的観点」だと,たいそう「上から目線」でのみ決めつけ,問答無用の押しつけをしていた。このいいぶんである「総合的・俯瞰的な観点」とは,いったいどのような中身として説明できるのかと問われても,「そうだからそうだ」という雰囲気でもって応じるだけで,論理的に理解できる内実はなにも返せていなかった。

 前段では,菅 義偉がかつて自著のなかに書いていたことをすっかり忘却していたことに触れ,菅 義偉の記憶力の不確かさ言及していた。しかし,この段落で話題にしている問題でいいかえれば,菅は自分が口に出していた主張・見解についてすら,その論拠(リクツづけ)を相手に向かって具体的に説明できないでいる。菅 義偉が「大学」は「2浪して法政に入った」という話題以前に控えていた問題性があった。

〔記事に戻る ↓ 〕

 1) 秘密保護法,安保法など多くの学者反対

 立憲民主党の今井雅人氏は〔10月〕7日の衆院内閣委員会の閉会中審査で,内閣府が首相に学術会議の推薦通り任命する義務はないとする内部文書をまとめた時期について,特定秘密保護法や安保法,「共謀罪」の趣旨を盛りこんだ改正組織犯罪処罰法をつぎつぎと成立させたあとの2018年だと指摘。「多くの学者が反対していた。関係があるのでは」という見方を示した。

 同党の柚木道義氏は学術会議が2017年の声明で,軍事応用できる基礎研究を助成する国の制度に懸念を示したことに触れ,法解釈検討の「発端か」とただした。

 2)政権批判高まった時期に人事介入始まる

 野党が疑念を深めるのは,学術界からの政権批判が高まった時期を境に,政府が「学者の国会」と称される学術会議の人事に介入しはじめているからだ。

 学者らが秘密保護法や安保法に反対する活動を展開した後の2016年には,官邸が欠員補充のための候補者に難色を示し,推薦見送りの事態に発展。2017年の改選期には,推薦枠を超える候補者の提示を求める異例の対応を取っている。

 内閣府の担当者はこの日の内閣委で,首相の任命権に関する内部文書の作成は「官邸の指示に基づいていない」と主張。学術会議があらためて6人を任命するよう求めていることについては「今般の手続は終了した」と拒んだ。

 以上の経過・事情に関しては,「学術会議の会員任命拒否 衆院内閣委で『新たな火ダネ』に」『日刊ゲンダイ』2020/10/07 16:50,更新日:2020/10/07 16:50,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/279697/3 が,つぎのように補足する報道をしていた。 

 2017年といえば,安倍政権が防衛省の安全保障技術研究推進制度の予算を約20倍に増やすなど軍事研究に力を入れる姿勢を示したことに対し,学術会議が『政府による研究への介入がいちじるしく,問題が多い』と表明した時です。

 おそらく政権側はこの声明に怒って介入を決めたと考えるのが自然です。今後,内閣府の学術会議事務局でなんらかの政府関与の文書が出てくるかもしれません」(野党議員)。

 2019年7月から事務局長に就いている福井氏は,それまで公文書管理を担当する内閣府大臣官房公文書監理官。桜疑惑では内閣府の公文書管理をめぐる問題が注目されたが,「アベ政治の負の遺産」があちこちに残っていそうだ。

『日刊ゲンダイ』2020年10月7日

 安倍晋三の第2次政権の7年と8ヵ月は,日本の政治にとって大きな損傷を与えてきた。前段の軍事研究問題にしても,つまるところは「対米服属路線」に嬉々と追従するしか能のなかった,この「世襲3代目のお▼カ政治屋」のせいであったというほかなかった,つまりその決定的な要因が含まれていた。

 日米安保関連法下の日本は,当面,アメリカの軍事基地(在日米軍基地)を一気に除去させることができないにせよ,未来に向かってそのあり方を考えるさい,アメリカへの従属を強化するための外交しかなしえなかった,安倍晋三流に「子どもの〈裸の王様〉」として残した “多大な負の業績” は,

 まず,沖縄県民の立場からすれば絶対に許容できないし,つぎに,同じような立場に置かれているそのほか在日米軍基地周辺で暮らす各県の人びとの立場にとっても,同じ意味を有する。

 

 ※-6「菅首相母校・法大の田中優子総長が声明 日本学術会議問題は『見過ごすことは』できません」『J-CASTニュース』2020年10月05日19時37分,https://www.j-cast.com/2020/10/05395973.html?p=all

 法政大学の田中優子総長〔当時〕は,日本学術会議の新会員として推薦された研究者6人を菅 義偉首相が任命しなかった問題をめぐり,「見過ごすことはできません」と抗議する姿勢を大学の公式サイトで示した。法政大は菅首相の母校としてしられ,菅氏の首相選出時に大学は「ご活躍を祈念いたします」とコメントしていた。

 1)研究の質で任命判断は「不可能」

 政府は2020年10月1日付で日本学術会議の新会員として99人を任命。しかし,会議側が新会員に推薦したのは105人だった。任命されなかった6人は安保法制や共謀罪法などで政府姿勢に反対の立場を取っていた学者だ。

 学術会議の新会員に任命されないケースが出たのは初だとされ,その是非が議論になっている。会議は3日に6人の任命を求める要望書を菅首相に提出した。

 田中総長は〔10月〕5日,法政大学の公式サイトを通じ「日本学術会議会員任命拒否に関して」と題した声明を発表した。田中総長は,会議が戦時下の科学者の戦争協力への反省から設立され,その「独立性」「自律性」を日本政府と歴代首相も認めてきたと説明。会員は「各分野における国内でもっともすぐれた研究者」で,学術の発展において大きな役割を果たしているとし,

 「内閣総理大臣が研究の『質』によって任命判断をするのは不可能です」

と主張した。

 今回の任命拒否は憲法で保障される「学問の自由」に違反する行為だとし,「全国の大学および研究機関にとって,きわめて大きな問題であるとともに,最終的には国民の利益をそこなうもの」と警鐘を鳴らした。

 1983年の学術会議法改正時に当時の政府関係者が「かたちだけの推薦制」「推薦いただいたものは拒否しない」と国会で答弁していたことが報じられていることを受け,田中総長はこれを引き合いに出し「その時の説明を一方的に反故にするもの」と主張。また,今回の任命拒否については「理由が示されておらず,行政に不可欠な説明責任を果たしておりません」とした。

 2)過去の声明も引用

 過去に出した声明も引用した。2018年春,自民党の杉田水脈衆院議員は,政権批判的だった法政大学の山口二郎教授に対し,巨額の科学研究費(科研費)が支給されていると批判。山口教授はこれに反論し,2人の間で論戦となっていた。

 こうした問題を受け,田中総長は2018年5月16日に大学の公式サイト上で「適切な反証なく圧力によって研究者のデータや言論をねじふせるようなことがあれば,断じてそれを許してはなりません」と抗議し,さらに「たがいの自由を認めあい,十全に貢献をなしうる闊達な言論・表現空間を,これからもつくりつづけます」と宣言していた。田中総長は今回の声明で宣言を引用し,

  「その約束を守るために,この問題を見過ごすことはできません」

とした。

 田中総長は今回任命拒否された研究者は法大の教員ではないとしつつ,

 「この問題を座視するならば,いずれは本学の教員の学問の自由も侵されることになります。また,研究者の研究内容がたとえ私の考えと異なり対立するものであっても,学問の自由を守るために,私は同じ声明を出します。今回の任命拒否の理由は明らかにされていませんが,もし研究内容によって学問の自由を保障しあるいは侵害する,といった公正を欠く行為があったのだとしたら,断じて許してはなりません」

と宣言。

 今後は大学人や学術関係者,「幅広い国内外のネットワーク」と連携して「今回の出来事の問題性を問い続けていきます」とした。菅首相は1973年3月に法政大学第一部法学部政治学科を卒業。大学は2020年9月16日の首相選出時,公式サイトで「ご活躍を祈念いたします」とコメントしていた。(引用終わり)

 要するに,菅 義偉は安倍晋三と基本的に同類であったが,「私はあなたの意見には反対だ,だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」といった民主主義の実践にとって必要不可欠である政治精神は,寸毫ももちあわせていない。

 問題はしかも「学問の世界」における議論になっていたが,菅 義偉の「無教養ぶり」については,本稿(2)でも触れたとおり,川勝平太静岡県知事から痛烈な批判が寄せられていた。さもありなんであった。

 つまり,今〔10〕月になって降って湧いてきたその問題「学術会議新会員6人を拒否した」菅 義偉政権の「21世紀的に愚昧なアナクロぶりの采配」に対して,学者出身でもある川勝平太は,菅にあっては「教養のレベルが露見」したとまできびしく裁断していた。

 この種の批判を介してわれわれは,菅が首相の立場から強権的に振るっている,その非民主主義的な政治体質を観てとる必要がある。

 補注)川勝平太の発言,菅 義偉にあっては「教養のレベルが露見」したという表現については,差別的だという指摘があった。川勝平太は2024年その後にも類似した発言をおこない,知事職は辞するハメになっていた。この問題についてはたとえば,つぎの記事を参照されたい。2024年4月3日に公表されていた文章である。


 ともかく,安倍晋三政治の傲岸性・独断性は,菅 義偉から岸田文雄の政治においてもりっぱに継承されていたが,これは全国民的な見地からいえば,けっして望まれている民主主義の態様では,けっしてなかった。

 全有権者の4分の1しかえていない彼ら自民党の政権(+「下駄の▼ソ」の公明党)が,好き勝手ばかりをやっており,しかも,この国を壊滅させる方途に向かわせつつあるとなれば,これを黙過することはできない。

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【断わり】
  続編の「本稿(4)」はつぎのリンク先・住所である。
   ⇒ https://note.com/brainy_turntable/n/n567be81d930c

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