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実は知らないことだらけ!「驚くべき睡眠の世界」#1

「あなたの知らない睡眠の世界」
夜はよく眠れているだろうか。
33ヵ国を対象とした睡眠時間に関する統計データを見ると、
日本は33ヵ国中最下位と、睡眠時間が最も短い国だった。
日本は世界一睡眠負債を抱えている国なのだ。

「眠ることは大切だ」と一般的に言われているが、はたしてなぜ大切なのだろう。その理由をハッキリ答えられる人は案外少ない。
今回から全5回に分けて「睡眠とは何か、なぜ大切なのか」
「動物たちの奇妙な睡眠」「睡眠に伴う不思議な現象」
「最高の睡眠のとり方」など、意外と知らない睡眠の科学を紹介していく。
この記事では「寝ているの定義」「睡眠の種類」
「10日以上眠らなかった人の体におきた衝撃の変化」解説している。
最後までお楽しみいただきたい。

「寝ているの定義」

そもそも「眠っている」とはどういう状態だろう。
人以外の動物の睡眠を観察する場合、眠っている状態をどうやって判断するのだろうか。犬や猫など、哺乳類であれば脳波を測定することで眠っているのか判断できるが、昆虫や魚となると難しい。
実は「眠っている状態」には4つの定義があり、以下を満たすと、その生き物は「眠っている」と表現することができる。

  • 感覚刺激への反応が鈍くなった状態。                声をかけたり触ったりしても反応しない。

  • 特徴的な姿勢(寝相)をとったまま動かない。

  • 外部からの刺激によって覚醒させることができる。

  • 眠らない期間が長く続くと、その後の睡眠では普段より長く眠る。

睡眠学者は、これらの条件を満たしている状態を「眠っている」と表現する。一般的に生き物が眠るのは脳を休めるためと考えられているが、
上記4つの条件に当てはめて生物を観察すると、クラゲやヒドラのような、脳をもたない無脊椎動物も睡眠に似た行動をとっていることが、近年明らかになった。
いったい脳をもたない生物は何のために眠っているのだろうか。

「睡眠の種類」

私たちは眠っている間、2種類の睡眠状態を繰り返している。
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」だ。
大まかな違いは以下の通りである👇👇

レム睡眠時、身体は休んでいるものの脳は起きている時に近いレベルで活動しいている。

それでは詳しく見ていこう。
ノンレム睡眠には3段階あり、浅い方から、N1、N2、N3となる。
まず、人は眠りにつくと、浅いノンレム睡眠(N1)の状態に入り、全身の筋肉が徐々に緩み、身体はリラックスした状態になる。
続いてN2に入ると、体温が下がり、心拍が落ち着く。完全にリラックスしている状態だ。最後に最も深いN3に入ると、体内では成長ホルモンが分泌され、肌が再生したり、筋肉が増えたり、脂肪が分解されたりする。
(質の低い睡眠をとり続けていると、成長ホルモンの分泌が減り、肌荒れ、肥満の原因となる。)
N3は睡眠の1番深い段階だ。ここで起こされると不快感は一入である。
叩き起こした人が明らかに不機嫌な場合、N3のノンレム睡眠に入っていたと考えられる。

深いノンレム睡眠の後に訪れるのが、レム睡眠だ。
レム睡眠は「脳に夢を見させる睡眠」である。
人はなぜ夢を見るのか、正確には分かっていないが、
一説によると「夢を見ることで記憶を整理している」といわれている。

「睡眠不足の恐ろしさ」

眠らないとどうなる?
人は何日間起きていられるのだろう。
あなたも一度は気になったことがあるかもしれない。
興味深い記録がある。1964年にアメリカ、サンディエゴの高校生が、断眠の連続断眠実験に挑んだ。
記録はなんと264時間12分、日数にすると11日と12分である。
見事ギネス記録を樹立した彼だが断眠中、身体には沢山の異変がおこった。
断眠2日目に彼はひどい倦怠感を感じ、4日目になると幻覚が見え始め、標識が人に見えたという。5日には自分は有名なスポーツ選手だという妄想に取りつかれ、6日目には物との距離感が分からなくなってしまった。8日目から言葉が不明瞭になり、9日目にはまともに話せなくなってしまった。断眠開始から11日が経った頃、彼はとうとう言葉を発せなくなり、危険な状態と判断され実験は1ついに中止された。
彼はその後どうなってしまったのだろう?
驚くことに、実験終了後15時間ほど眠り込むと、自然に目を覚まし何の後遺症も見られなかったという。断眠によって人が死んでしまうのかは、わかっていないが、実験を中止しなかったら彼はどうなっていたのだろうか。

ネズミを使った実験では、連続断眠したマウスの体内ではサイトカインストーム(免疫細胞が異常に活性化して自分自身を攻撃する現象)がおこり、4日目に死んでしまったという。
もしかすると人間にも似たような現象が起きるのかもしれない。
断眠実験は極めて危険なためゼッタイにマネをしてはいけない。

完全な断眠とはいかなくとも睡眠不足は恐ろしい。
睡眠時間を削ることは「寿命を削ること」と言っても過言ではない。
特に免疫の低下は顕著だ。睡眠負債を抱えると、NK細胞の活動が低下し、
癌のリスクが跳ね上がる。
判断力・注意力も、私たちの想像以上に低下する。
1日1時間の睡眠負債も、1週間ためると7時間になる。
ほとんど徹夜したようなものだ。徹夜明けの脳の働きは、
ビールの中瓶を3本飲だ状態とほとんど同じである。つまり、酔っ払い程度の判断力と注意力しかない。こんな状態では勉強や仕事は捗るわけがない。
そう考えてみると、睡眠の大切さを再実感する。

世界一の睡眠負債を抱えているものの、日本の平均寿命は80歳以上と他の国に比べてかなり高い。しかし一方で健康寿命70年ほどである。
これは他の先進国の平均寿命とあまり変わらない数値だ。
これだけ医療の進んだ日本で暮らしているのなら、適切な睡眠をとることができれば、もっと健康に長生きできるのではないだろうか。

次は、自然界で暮らす生き物たちの不思議な睡眠についてみていこう。
眠らない生き物は存在するのか、人もイルカのように脳を片方ずつ休めることは可能なのか、ぜひフォローして次回の記事もお楽しみください!

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