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[書評] 栗山ノート

みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。

また 野球がらみの本を読んだ。

学生時代は野球に熱中していたけど、
もう距離を置いて十年以上経つ。

私は
「日本シリーズは シーズンを通して
 強かったリーグ覇者同士の
 頂上決戦であるべき」
という古い価値観の持ち主だから、
クライマックスシリーズが
始まってから興醒めした人間なのだ。

おかげで 今は
スポーツニュースで流れを見る程度。
コアな野球談議なんて もうできない。
(ハマっていた当時の話題ならできるが)

それでも野球関係の本を読むのは嫌いではないし、
特に監督目線の書籍は読んでいて得るものも多い。

監督や指導者、それもサラリーマンと違って
日々人生をかけた勝負の世界に生きる中で
長きに渡って実績を積み上げた人物には
必ずその人なりの「哲学」があるからだ。


野村ノートの存在

プロ野球関連の書籍を見ていくと
「○○ノート」というタイトルが多い。
私が知る限りだと、その先駆けは
野村克也氏の「野村ノート」だと思う。

それまで
「フィジカルとテクニックの勝負」
というイメージが強かったプロ野球に
「考えること」で勝ちに近づくという
考え方を定着させたのが野村氏である。

思えば私も野村ノートを読んで、
「考えて勝負する」ということの
魅力を知って、
一層 野球を見るのが楽しくなった。

これが変わらず
「フィジカルとテクニック」
だけの世界だったら、
「はぁ、すごいな」で
興味が薄れてしまっていたかもしれない。

栗山氏はヤクルトスワローズの選手として、
病気やケガもあり
短い選手生活ではあったものの
引退する年には
野村克也氏の下でプレーもしていた。

今回の本のタイトルも、
その影響が幾分あるのかもしれない。

プロ野球監督とローマ皇帝

栗山氏はプロ野球チームの監督として、
1日1日を勝負として生きている
(現在は退任されているが)。

明日が保証されている
日本社会の会社員や公務員らとは異なり、
その日・その瞬間の「重み」は
市井の人間の想像をはるかに超えるであろう。

「重み」は「重要性」の意味に留まらず、
そのまま「重圧」にもなる。

しかも真剣勝負の世界、
チームが負けるときもある。
(お世辞にも当時のファイターズは
 常勝軍団とは言えなかった)

試合には勝てども、
采配がまずかったときもある。
貴重な戦力である選手が
ケガで離脱することもある。
監督として、選手やスタッフたちと
コミュニケーションがうまくいかないときもある。

おそらく、いや間違いなく
「反省点」のない1日など
これまで一度たりともなかったことだろう。

その日の反省を、自分と向き合いながら
自身に対して言い聞かせるように、
気付きや学び、己を鼓舞する言葉を
ノートに綴っていく。

これはまさしく二千年前のローマ皇帝
マルクス・アウレリウス・アントニヌスが
戦場で記録をしていた
「自省録」と本質的に同じだろう。

「自省録」は勝負の世界のものではない

かのローマ皇帝も、異民族との戦いの陣中で
自省録を綴っていた。
栗山氏も、プロ野球界という戦場に生きる中で
本書の基となるノートを綴った。

だが、「自省録」とは
勝負の世界に生きる者のみが
綴るものなのだろうか。
答えは、「否」でもあり「正しく」もある。

我々 市井の人間も、日々の生活の中で
何ら反省点のなかった1日を
送ることなどありえない。

もしそんな人がいるとしたら、
それは反省点に「気付かなかった」
あるいは「省みることをしなかった」人である。

その意味において、自省録は
勝負の世界に生きるかどうかは関係ない。

だが、一方で勝負の世界に生きない人間は
この世にどれだけいるものだろうか。

学校・職場・社会の中での競争は、
自身が望むか否かに関わらず参戦させられる。
あるいは生まれた地域によっては、
「日々を生きること」自体が戦いそのものであるかもしれない。

その意味では、たとえ市井の
多数派を占める人間であっても
「勝負の世界に生きている」と言える。

つまり 人生を生きていく上で
誰しもが自省をすべきだし、
それを記録する習慣があれば
それは その人自身の「自省録」となるのである。

まとめ

私は「善く生きること」は
「今日を省みて明日に生かすこと」だと考えている。

日々同じ過ちを繰り返していたのでは、
そこに進歩は生まれない。

行動を起こし、失敗を経験し、
そこから得た学びを次の挑戦に活かす。

それはマクロ的に見れば
人類の歴史であると共に、
ミクロ的に見れば
個々の人生にも当てはまる真理である。

「自省なき者に成長なし」
「偉大な実績を残す人は、みな自省をしている」

そんなことを改めて考えさせられる本であった。

こんな人にオススメ!

・プロ野球ファン
・自省を習慣化している人
 (または仕方を学びたいと思っている人)
・「自省録(マルクス・アウレリウス著)」を愛読している人

こんな人には合わないかも…

・自省や反省に興味がない人
・プロ野球の話題に興味がない人
・「明日あした明日あしたの風が吹く」をモットーとしている人

お読みいただき、ありがとうございました。

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