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[書評] 子どもの頃から哲学者

みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。

自ら哲学者を名乗っておいて
言うのもなんだが、
今この世界に哲学者とは
どれほど存在するのだろうか。

哲学者の定義も非常に曖昧で
万人が一致する定義というものも
ないわけで、こと私としては
「大概の人間は哲学者である」
と思っているので、
皆目見当がつかない
(私の見立てでは世界中に数十億人はいる)。

だが ひとつ間違いないことはあって、
現代に生きる哲学者の名前を
私は知らないし、
当然ながら会ったこともない。

そんなことを四六時中
考えているわけではないが、
意識の根底にあった私が
たまたま今回の本を目に留めた。

なるほど自ら哲学者を名乗っていて、
なおかつ日本人である
(日本語で執筆されている)となれば、
これはぜひとも読んでみたい。

そんな動機で本書を手に取ったわけである。


いろんな人間がいるものだ

本に書いているとおり、
この人もまた なかなか変わった
経験の持ち主である。

高校では生徒会長として
学校改革を目指して熱血的に活動し、
大学生時分には人類愛に目覚めて
「人類愛教」なる集団を
教祖さまとして率いてきたらしい。

では常に仲間たちの中心的な
ポジションだったかといえば、
むしろ人間関係には とりわけ苦労し、
結果 長らく躁鬱に悩まされてきた。

私はどちらかと言えば
良くも悪くも人並みの人生を
送ってきた方だから、
これほどドラマティックな人生を
語られると
「世の中にはいろんな人がいるものだなぁ」
と改めて感心する。

苦労するから考える

哲学なんて
(と自称哲学者が言うのもアレだが)
絶対の正解なんてないようなものだから、
何を考えて何を主張しようが
はっきり言って個人の自由である。

あとはその主張を世間が
どう判断するかの問題であって、
「なるほど、そのとおりだ」と思われれば
「もっともらしい哲学者」として評価され、
「コイツ何言っとんねん」と思われれば
「おかしなことを宣う自称哲学者」
と扱われるだけの話だ。

私は「哲学は自由だ」と
比較的 緩く考えている立場だから、
そもそも自分以外の哲学者が
何を主張していようと否定はしない。

むしろ私の意見を否定する主張をされても
「そういう考え方もあるわな」と思って、
それ以上揉める気もない
(もちろん議論ディベートを楽しむ余地はある)。

「”人間”について深く考えた哲学者は、
 だいたいみんなウツ病だった」
と著者も書いているが、
哲学者は得てして苦労人が多いと思う。

自分が多少あれこれ
考える人間だからかもしれないが、
生活していると
「この人は何を考えて
 生きてきたのだろうか」
「むしろ何も考えていないのでは
 ないだろうか」
と感じてしまう場面に
しばしば出くわす。

別に考えるのが偉いとか
そんなことを言う気はないのだが、
そういう場面では得てして
「考えなし」であることが
マイナスに作用していることばかりだ。

私の無邪気な疑問は
「ちょっと考えれば、そのマイナスは
 避けられたであろうに…」
という思いと、
大抵の場合セットになっている。

この話は割と私の中では
重要なテーマであるのだが、
長らく考えてきた現時点での結論は
「この手の人たちは、
 『さして考えることをしなくても
 不自由なく生きてこれた人』である」
というものである。

生徒会長になって
学校全体の改革に勤しむとか
新興宗教団体の教祖になるとか、
そこまでドラマティックな人生は
そうそう経験するものではないだろうが、
程度の差はあれ躁鬱気味になったり
希死念慮に悩まされたりといった経験なら、
他人事ではない人も少なくないと思う。

特に希死念慮については
残念ながら一線を越えてしまう人も
いるところだが、
少なくともこの書評を読んでいる
あなたは今もこうして生きているわけで、
ここまでの過程には
大小様々な悩みを乗り越えてきたのだろう
(そしてこれからも)。

おそらくその悩みの数々は
時間が解決してくれた部分もあったにせよ、
あなた自身が悩み「考えて」きたからこそ
今に至っているわけだ。

それらは悩みが深く大きく
あればあるほど、
それに対する思考も比例して
深くなっていたに違いない。

その苦しみの過程で
あなた が考えてきたこと自体が
ひとつの「哲学」であり、
私が「大概の人間は哲学者」だと
考えているのも ここに基づいている。

それを個人の枠を超えて、
より普遍的なテーマとして
体系的に捉えたものが
学問的にいう「哲学」なのである。

あなたも私も哲学者

現代社会で「哲学」と言うと
何やら敷居が高いような印象を受けるが、
蓋を開けてみればなんということはない。

学術的な専門用語で
認識をしていないだけで、
哲学なんていうものは
人生を生きる上で いくらでも
身近にありふれているものなのである。

「哲学者」は歴史上
「かつて存在した」職業でもなければ、
選ばれし人間のみがなれるものでもない
(専業で食べていけるかは別の話だが)。

直接的に著者と同じ経験を
した人はいないだろうが、
自分が経験してきた苦労話を
思い出しながら読めば、
「自分も苦労したときに
 こんな風に悩んだり考えたりしたな」
と共感できる部分が見つかることだろう。

その共感を見つけられた人は、
例外なく哲学者としての素養がある。

むしろ「哲学者」の肩書を
名乗るか否かは問題ではなく、
あなた自身が体得した
「哲学」の存在こそが大切なのだ。

そう、あなたも私も
言ってみれば「哲学者」である。

本書は、そんなことを
感じさせてくれる一冊である。

こんな人にオススメ!

・「哲学とは」「哲学者とは」どういうものかを知りたい人
・「哲学のことは分からないが、興味はある」という人
・人生の悩みに対してヒントを求めている人

こんな人には合わないかも…

・哲学に全く興味がない人
・「考えること」が嫌い(≠苦手)な人

・お読みいただき、ありがとうございました。

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