[書評] 教養としての「ローマ史」の読み方
みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。
世界史が好き
私は世界史の中でも、特に西洋史が好きだ。
明確に「これだ」という理由はないのだが、
少年マンガにありがちな
「剣と魔法の世界」の
モチーフになりがちなところが
関係しているのだろうか。
たしかに愛してやまないマンガ作品の中には、
ベネツィアや 中世欧州世界に
想いを馳せたくなる作品もある。
現実的なことを言えば、
日本史と中国史はテストで人物名や用語の
漢字表記を覚えるのが苦手だったということも
影響しているかもしれない。
カタカナ表記のパートは、
音の響きで覚えればよいところが
学生の頃はありがたかった。
さて、西洋史の中でも なぜローマ史か。
これは割と理由がはっきりとしている。
紀元前の頃よりの「歴史」があるからだ。
日本にも「過去の営み」はあったであろう。
だが、歴史とは「記録」だ。
記録があって、後世から振り返ることが
できるからこそ 歴史には価値がある。
この本では、ローマ建国から
西ローマ帝国の滅亡までが、
為政者の変遷に沿って解説されている。
一応 １５世紀の東ローマ帝国滅亡まで
触れられてはいるが、
西ローマ帝国が滅んだ後は
比較的さらりと流されている印象である。
古代ローマの強さの源泉
ただ、古代ローマの魅力は
単に歴史の長さだけではない。
そもそも １０００年以上に渡る歴史は、
単に文字や記録の文化があっただけでは
遺すことができないのだ。
紀元前の建国より戦争と繁栄、
そして衰退から東西分裂、滅亡…
王政～共和政～帝政の変遷…
とても一筋縄では括れない
山あり谷ありのドラマがそこにある。
そして 最期には無念な結末を迎えたものの、
最盛期の栄光、周囲の国々や
後世に与えた影響が
他のどの国よりも大きいといえる。
少なくとも欧州世界においては
古代ローマの影響が小さいとは言えないだろうし、
後の全世界に欧州人が与えた影響を鑑みれば
その影響が全世界中に行き渡ったと言っても
決して過言ではないだろう。
そもそも 数多ある都市国家のひとつとして
生まれたローマが、なぜ史上に残る大帝国にまで
登り詰めることができたのか？
古代ローマの発展の土台にあったのは、
国民の思想・信念の強さだった。
このローマとて建国以来、
決して 連戦連勝・順風満帆で
発展をしてきたわけではない。
戦いに敗れたこともあれば、
政治的に失敗がなかったわけでもなかった。
ただ 敗北を敗北で終わらせず、
失敗を短絡的に悪いものと考えず、
公に対する意識を強く抱いていたからこそ、
国として強く発展していったのだ。
だからこそ、その前提の崩壊は
内乱や国の衰退に繋がっていく。
賢者は歴史に学ぶが…
一方、現代に生きる我々はどうか。
世襲の問題点、民主政・君主制の功罪、
現代社会の全てではないものの、
既に古代ローマが経験してきた課題も多い。
日本に目を向ければ、
能力や政策の比較ではなく
生家の資産と親の地盤を引き継いだだけの
世襲政治家が後を絶たず、
「失われた３０年」などと
あくまで過去の栄光に縋るしかない国に
成り下がってしまった。
民主主義こそ根付いているように思えるが、
お世辞にも有能な政治家が
多いとは言い難い この数十年、
果たして 日本人の政治に対する関心は
高まっているのだろうか。
（無能な政治家を選んでいるのは、
他ならぬ 我々国民であるからだ）
いや、そもそも 今の日本は
本当に民主政なのだろうか。
建前上は民主政だが、
貴族政・寡頭政になってはいまいか。
数年前「上級国民」なる言葉が
流行したことがあったが、
その言葉自体が貴族政を
彷彿とさせてはいまいか。
実際には、国民ひとりひとりに
参政権も与えられている。
ならば、しっかりとその権利を行使して
民主政を機能させていくべきだろう。
まとめ
民主主義が果たして最善の政治体制なのか、
その功罪はどこにあるのか、
民主政・共和政に限らず
世襲を続けていくとどうなるのか、
それらは全て 古代ローマが経験している。
｢愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ｣
かのビルマルクの言葉にもあるが、
現代人は歴史から学ぶことを忘れてはいまいか。
現代の日本人は 愚者なのか 賢者なのか。
古代ローマを礼賛するわけではないが、
もう少し賢く生きていくことはできないものか。
私には「日本国民は賢者である」とは
お世辞にも言えそうにない。
我々は後世の人々の目に、
果たして どのように映るのだろうか。
こんな人にオススメ！
・世界史（特に西洋史）が好きな人
・古代ローマについて学び直したい人
・ヤマザキマリ作品が好きな人
（テルマエ・ロマエ、プリニウス etc.）
こんな人には合わないかも…
・世界史に興味がない人
・「過去は過去、今は今」と考える人
お読みいただき、ありがとうございました。
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