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椿みたいな女性への憧れ
椿が美しく咲いていた。
蕾から咲きはじめの完璧な造形といったら心が震えるほどだ。
読書ばかりしていた子どもの頃から、いろんな恋愛の物語も読んできたけれど、心に残る物語は悲恋じゃないかと思っている。成就しなかったものほど心を打つものはないと感じるのよね。もどかしい思いが忘れられないに繋がるのかもしれない。
ロミオとジュリエット、オペラ座の怪人(これは映画も小説もどちらも堪能した)、そして椿姫。
どんな美しい女性なのか。きっと華やかで艶やかだけど、儚さも併せ持つ、たおやかな女性だろう。そんな風に思い巡らせたものだ。彼のために身を引く心根の美しさ。恋が成就することのない切なさ。何度も読んで涙した、まだ10代の頃の私。
こちらはとっくに娘時代は終わり。逞しきアラフィフ女性となった。恋というロマンチックで儚いものも、成就してしまえば、現実的で逞しくならざるを得ない肝っ玉かあさんに成長する日々が続いていく。
ああ、そういえば、ジブリのラピュタで、ドーラの若い頃の肖像が一瞬映るのをご存知ですか? 『ラピュタ ドーラ 若い頃』などで検索したらいっぱい出てくる。ええ、現実的ですね!
そんな逞しさも愛おしいものだけれど。美は儚さを内包しているものだけれど。
でも、椿を見るたびに。死をもって美しいまま人の記憶に残り続ける椿姫への憧れは、ずっと心のどこかに。