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「なんとなくかっこいい」の罠

「かっこいい仕事がしたい」を捨てた新卒就活

今日、Twitterを見ていたら、面白い画像が流れてきた。2009年に当時の麻生太郎総理大臣がハローワークを視察し、職探し中の若者と話している様子である。
「どうせ働くなら六本木とかおしゃれなところで働きたいですね」と言う若者に対し、元総理はこんな回答をしていた。
「若いうちはそうだよな。でも、自分のやりたいことを絞り込まないといかんな」
「なんとなくかっこいい(仕事)は給料安いよ!」

麻生さんが好きか嫌いかはおいといて(好きなところも嫌いなところもあるが)このアドバイスは正論だと思った。
自分の適性や嗜好を無視して、なんとなく選んだ仕事で高給取りになれるはずがない。

若者がなんとなくかっこいい場所で、かっこいい仕事がしたいのはわかる。自分が何をやりたいか、何が向いているかより、華やかで楽しそうな仕事に目が向いてしまう。
私の大学時代、いまもそうであろうが、大手マスコミ、商社、大手金融あたりが人気企業であった。外資系金融も人気が出始めていたが、ハードルが高いのか、猫も杓子も目指すというムードではなく、一部の優秀な人が目指していた気がする。
私も最初は大手マスコミを目指していたが、在京放送局や新聞社からことごとく不合格通知を受け取り、故郷のTV局を1つだけ受けて最終面接で落ちたあたりで、主にB to Bの製品を製造販売しているメーカーを受けて内定をもらった。同業他社も受けようか迷っていたが、早々に内定が出たのでエントリーシートさえ送らなかったくらいだ。決め手はこの業界の安定性と待遇(給料、福利厚生)であった。

マスコミ、エンタメなどの仕事にこだわるならば、大手以外に目を向けてもよかった。また、かっこいい、楽しそうな仕事がしたいのであれば、他にも選択肢はあったであろう。しかし、私はそこで安定を選んだ。本当にやりたいのなら安定や待遇は二の次だが、それらを度外視してまでやりたい仕事はなかった。
私もハローワークの青年と同じく「なんとなくかっこいいことがやりたい人」だったのだ。新卒の就職活動中にその考えが捨てられたというだけのことである。


内定先を「地味な会社」と言われた話

私の選択は、親戚やバイト先の上司など、大人の人たちからは「賢い選択だ」と言われた。
ときは氷河期であった。景気に左右されにくい業界の優良企業に就職が決まって安心しないはずがない。
この業界の会社はほとんどが優良企業で、業界ランキングが5位とか10位以内でなくても、開発力があって利益率の高い会社はたくさんある。30代で年収1000万円に届くのも珍しくはないし、各エリアの家賃相場からみて高い価格帯の借り上げ社宅を用意してもらえるにもかかわらず、自己負担はわずかである。いずれ本社の花形部署に行けば、海外出張や英語を使う機会もある。仕事が楽だとは言わないが、比較的ホワイトな業界と言っていいだろう。

しかし、B to B、さらに外資系であれば、一般の人にはあまり名前が知られていなかったりする(いまは少し状況が違うかもしれないが)。
私が内定をもらった会社は世界のランキングでは上位で、当時から日本でもほどほどランキング上位であったが、ある同級生から
「地味な会社なのに待遇がすごいね」
みたいな言われ方をした(苦笑)。
なお、この発言をした同級生は、一般の人に名前の知れている企業に決まった共通の友人のことを誉めていたので、前述の話ではないが、若者にはやはり名の知れた華やかな仕事は人気があるのであろう。正直不愉快であったが、罪もない第三者の内定先をディするのも失礼なので、
「その人が内定もらった会社はでかいけど、その業界はすごい利益率低いで。給料も安いで」
と言いたいのをぐっと飲みこんだ。

もったいないことにその会社は3年で辞めたが、私はその後もB to Bビジネスの会社に身を置いている。最初に勤めた会社の同世代に比べたら給料は安いだろうが、世間一般でみたら安くはない。華やかな仕事ではないが、華やかな仕事に対する未練はない。

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