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読書日記『椿井文書 日本最大級の偽文書』

「つばいもんじょ?へ~、江戸時代に偽文書作った人がいたのね。まあ、今の研究者が見れば偽物と分かるんだろうね」
こんな認識で読み始めたけど、おやおやおや。
いい意味で、期待を裏切られた一冊。

『椿井文書 日本最大級の偽文書』馬部隆弘、中公新書

まずは、椿井文書の多さに驚き(近畿一円に数百点も分布!)。
一点だけじゃなく関連文書も併せて偽作するなど、予想以上に巧妙に作ってる(もっと稚拙なものかと思ってた)。
偽文書が受け入れられる背景など、椿井文書そのものの記述はとても興味深かった。

ただ、読了して一番考えさせられたのは、現代に生きる私たち個々の史料・歴史への向き合い方でした。
一度「正しい史料、史実」として受け入れられてしまうと、それを覆すことの困難さ。
「町おこし」という名分のもとに、史実と違う物語に頼らざるを得ない現実。

私は日本史の専門教育を受けたわけではないし、単なる一介の歴史好きでしかないけど、史実では無さそうなものが「正解」のような形でもてはやされているのを見かけると複雑な気分になります。

それからもう一つ、この本を読んで思ったこと。
それは、知識をアップデートすることを怠っちゃいけないよな、ということ。
以前は史実とみなされていたものが、覆ることもある。
最新研究がいつも正しいとは限らないけど、先行研究に固執しない柔軟さも必要だよなあ……。
ん?
あれ?
何だか偉そうなこと書いてるなあ自分。
と、自問自答しつつカフェラテを飲む、休日の午後でありました。

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