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授業論#4 オンライン授業の考察
こんにちは。#教師のバトンなんてタグが流行してもうそろそろ1ヶ月くらいが経ったでしょうか。昨年は臨時休校だったため、2年ぶりに4月を通り抜けて、「超多忙な4月」というのを体がやっと思い出してきました。
さて、僕が勤務している自治体では、3回目の非常事態宣言に合わせて、オンラインでの学習対応を余儀なくされました。
1年前に初めてオンライン授業に取り組んだ時の感覚から比べると、授業者としてかなり成長したな、と思ったので、昨年度の取組みと今年の取組みを比較しながら、オンライン授業についての僕なりの考えを駄文として残しておきたいと思います。あまりまとまった文章にはならないと思いますが、よろしければお付き合いください。
オンライン授業の基本
まずは、オンライン授業の形態について改めて押さえます。
①同期型オンライン授業
いわゆる、双方向型のオンライン授業のことです。ZoomやTeams、Meetsなど、その場で会話や意見交換できる点が優れています。しかし、一斉講義には向かない形式です。なぜ講義に向かないかといえば、講義の内容は教科書を読めばわかるからです。または、同じ講義でも、②に述べる非同期型の配信動画で済ませてしまった方が効率的です。
②非同期型オンライン授業
いわゆる、オンデマンド型、配信型のオンライン授業のことです。初学者にまとまった内容を伝える講義等には向いていますが、双方向性がないため、補助的に使えるSNSなどの「コミュニケーションツール」が必須となります。
なぜ講義が非同期型に良いかという話を例として挙げておきます。Youtubeに講義動画をアップロードしてあれば、受講者は「好きな時に見ることができる」「理解度に合わせて再生速度を変更できる」「難しいところは何度でも見ることができる」「一時停止して考えることができる」などメリットが多く、授業者としても「同じ話を複数回喋らなくて済む」「その分で捻出した時間を、より細かい内容の補足説明の時間に充てることができる」など、のメリットがあります。
②の非同期型オンライン授業については、時間とスマホ1台があれば、ひたすらカメラに向かってしゃべりながら録画⇒編集⇒アップロードというルーティンを繰り返せば整備できます。ただし、とても膨大な時間がかかります。はっきり言って、昨年の休校期間のような時間がなければ、現役の教員がたくさんの動画を準備するのは至難の業です。また、教科・科目による向き不向きもあります。理系科目や、言語系科目の文法など、それなりに半永久的に内容が変化しない内容の講義であれば効率がよいですが、毎年扱う物語が変わってしまう現代文や古文、外国語の講座ではなかなか苦しいでしょう。
今回はどちらかというと、①について多く述べたいと思いますので、②についてはここまでとします。
同期型(双方向型)オンライン授業のポイント
僕自身、毎回うまくいっている訳ではないことをまずはお伝えしておきます。それでも、うまくいかなかったときのカバーの仕方がこの1年を通してかなり分かってきました。そのあたりをまとめていきます。
ポイント①同期型授業とは、SNSである。
テレビのニュースでも、「感染拡大したらオンライン、収束したら対面」なんて報じられることがまだまだ多く見られますが、これ明らかにおかしいですよね。そもそも、教室で行う授業と、オンラインで行う授業とでは前提が異なります。生身の人間というのは、かなり膨大な情報量を発していることに、普段我々はあまり気付かずに生活していました。しかし、昨年オンラインの会議が増えたことで気付いたことがあります。ビデオ通話含め、動画では相手の身長や体格がわかりません。音声通話では相手の表情も髪型も分かりません。テキストベースのコミュニケーションでは、文字以外の情報がわかりません。
当たり前のことを書きました。
我々教員というのは、生徒達にとって教室においては「脅威的」な存在なのです。どんなに温和で優しい先生であっても、「脅威的」なのです。授業が始まれば「教壇」に立ち、授業の指揮をとり、それに従わないことは「良くないこと」という共通認識があるわけです。最近はアクティブラーニングが主流なので、教員の役割はファシリテーターだ、なんてこともよく言われますが、結局のところ生徒から見て「脅威的」な存在であることに変わりはないと思います。
さあ、そんな「脅威的」な存在である教員が、様々な情報がカットされる「ビデオ会議」に現れると何が起こるでしょうか?
そこには、「脅威的でないただの人」が映ることになります。
同期型のオンライン授業の難しさがここにあると、僕は考えます。
カメラをオンに!マイクをオンに!
さあ、発言しなさい!
といつもの教室のように「脅威」を振りかざしても、画面の向こうにその脅威は伝わらないのです。オンライン、ネット空間というのはそういう場所です。興味のないことを、画面から学ぼうという気持ちはほとんどの人に存在しないのです。
SNSというのは、自分の発信したい事を勝手に発信して、
流れてくる情報の中で面白いものに反応する、という空間です。
同期型オンライン授業の空気感はそれとほとんど同じだと考えた方が良いでしょう。
そこで「実りある時間」を創出するには何が必要か?といえば、「楽しさ」だったり、「自分のファンとなってくれる生徒」だったりするのだと思います。オンライン授業で生徒とコミュニケーションをきちんと取ろうと思ったら、ここがマストだと考えます。
もはや、「脅威」よりも「親しみやすさ」に価値があるのです。従って、1人1人の生徒とのより親密なオンラインコミュニケーションが大切です。個別によく連絡をくれる人の話は、画面の向こうでもそれなりに興味をもって聞こう、という気持ちになるのです。脅威だけ振りかざしている人の話は、画面の向こうからは聞きたくないのです。
ポイント②授業の最後に感想をシェアしてもらう
いくつも、同期型オンライン授業の型はあると思いますが、
とくに学校の授業という点で、押さえておきたい大枠を示しておきたいと思います。
①導入
初めの数分でその授業の大まかな流れを説明する。
┗事前に文章などで共有しておくと更に良いと思います。
②内容の展開
内容に当たる部分には「問題演習」や「意見交換」が入るのがベスト。
なるべく多くの参加者が1度は発言できると理想的ですが、そこを追い求めすぎるとかえって雰囲気が悪くなることもあります。
③授業の感想の共有(シェア)と、次回の予定の説明
ここがとても大きなポイントです。参加者全員が同じファイルに共同作業で感想を書き込む、など、生徒同士が他の生徒の感想を見ることができる環境が非常に大切です。何よりも、この感想を読むことで、授業者が自分の授業をきちんと評価することができ、暗闇を探る感覚のオンライン授業に一筋の光が差し込む感覚を得ることができるでしょう。
感想を書きなさい!という「脅威的」な発言ではないことも大事。「最後に、今日の授業の感想をシェアして終わりましょう!」という軽い感じが良いのだと理解しています。感想をシェアしてくれない生徒を特定する必要もありません。周りの生徒の感想を読むと、そこから得られる気付きや意外性が生徒の中では大きな興味となっていくはずです。そこからモチベーションを得て、自分の部屋で1人の環境でもまた明日頑張ろう、という気持ちにつながっていくのです。
ポイント③ 授業者がオンライン授業を受けてみる
これが実は一番大切なことです。様々なオンラインイベントが毎日のように開催されています。FacebookやTwitterなどで少しでも興味の持てるオンライン研修会・イベントなどを見つけたら、とにかく参加してみることがお勧めです。1回1回は何が得られたのかわからなくても、様々な主催者のイベントに参加する中で、「こういう形がうちの学校の生徒には合っているな」というイメージが少しずつ自分の中に涵養されていきます。結局我々は、自分が経験したことのある場しか作ることができないですからね。だからまずはそういう場に参加することが一番大事です。
Blended Learningについての記事にも書きましたが、
結局のところ、オンラインの活用を突き詰めていくと、1人1人の生身の生徒とのコミュニケーション密度を上げるという、そんなの当たり前じゃん。という部分に行きつくと、この一年間でより強く感じるようになりました。
教師の多忙さについて大量の意見がネット空間に溢れかえっていますが、
対面授業だろうと、オンライン授業だろうと、ICT機器を使って1つ1つの「しないといけないこと」に手抜きをすることで、捻出した時間を生徒1人1人と向き合う時間に充てることができます。これができると本当に教師って豊かな職業ですね。オチが見つからないので今回はこの辺で終わります。お付き合いいただきありがとうございました。