考え事#25 「ひたむき」について
高校の教員を辞めて10日が経過した。
新しくお世話になっている会社では、完全に右も左もわからない状態の10日間を過ごし、不思議なことに10年前に学校で新採だったころの自分をよく思い出している。
いや、こう書くとかなり後ろ向きに見える文章だけれど、僕はかなり前向きに過ごしていると自分では自覚している。覚えることだらけでバタバタはしているけれど、きちんとそれを楽しんでいる自分が心の中にいる。
そんなこともあって今回は、「ひたむき」ということについて書こうと思う。
前回書いた「諦念」とは真逆な内容になるだろう。
映画BLUE GIANTにみた主人公のひたむきさ
つい最近、ブルージャイアント、というアニメ映画を見てきた。
JAZZがテーマの漫画が映画化されたもので、映画内の音楽はジャズピアニストの上原ひろみさんが手がけている一作だ。
上原ひろみさんは大好きなピアニストで、過去にblue note東京での公演を聴きに行ったことがある僕にとってこの作品は、なんとしても映画館で見なければならない作品だった。
ちゃんと、TOHOシネマズの轟音が入った部屋で座席を予約して見てきた。
簡単にいうとすごく良かった。
何が良かったって、主人公の直向きさが良かった。自分がこれをやりたいんだ!というのを、主人公はひたすら追いかけていく。
その過程で、大人たちや、大人たちの文化に染まりかけている仲間の発言と、主人公の直向きな発言のやりとりがグサグサ胸に刺さる。
中でも一番刺さったのは、
中盤で主人公が、初心者でドラムを始めた友達を庇って放ったこのセリフ。
詳しくは映画をぜひご覧ください。
「ひたむき」とはいったい何なのか
ひたむき(直向き)であるということは、字面からもわかるように、なにかに対してまっすぐである、ということだ。webの辞書だが一応引用しておく。
ひたむきな状態にある人は、とにかくその対象に対する吸収力と成長が凄まじいことになる。教育者にとっては、ひたむきな生徒に何かを教える、というのは楽しい瞬間の一つかもしれない。
しかしながら、ここで残念な現実もある。
ひたむきさ、を発揮している人間にとって、ざっくり言ってしまえば先生という存在は必要ない、ともいえる点だ。
以前の記事で「学びのオーナーシップ」について触れたことがある。
ひたむきな状態というのは、学びのオーナーシップのほぼ100%が学習者にある状態、と考えてよいだろう。オーナーシップが100%発揮できている人が求めている先生、というのはもはや立場としての先生ではなく、自分と同じレベルでその対象に打ち込んでいる存在だ。
その意味で、先生という立場に身を置くということは、生徒の誰よりもその内容を深めることについてオーナーシップを発揮できる人を目指すこと、といってもいいのかもしれない(理想論としては、である)。
自分はいま、ひたむきに何かを成しているか?
転職して10日間、僕はかなり前向きに過ごしていると自分では自覚している、とはじめに書いた。
なんともさらっとした文章ではあったが、実のところはいま、かなり必死である。
高校で働いてきた10年間に、物理の内容を理解したり深めたりすることはもちろん続けてきたが、それ以外の業務に必要なスキルもそれなりに高めてきた自負はある。組織全体の構造を考えて自分なりに工夫してなにかの企画を練ったりだとか、単純に事務作業を行ううえで必要なスキルを学んだりとか。
新しい組織に入ると、そこにはまた”その組織特有の構造と力学”がある。
新しい組織に所属したはじめの期間というのは、これまでの自分が身に付けたスキルなどのリソースと、新しい組織の力学とのあいだの接合点がわからない、という状況が発生する。これがわからないということがいわゆるストレス、ということになるのだろう。このストレスを払拭するためには、自分と組織の接合点を見つけていくことが非常に大切だ。
接合点を見つけていくにあたっては、様々なポイントがある。
・組織の構造や力学はどんな歴史の中で形成されたものなのか。
・チームメンバーはどんなことが得意で、どんなことが苦手なのか。
・上記を踏まえて、自分は組織の構造や力学のなかで、何を得意として組織に貢献することができ得るのか。
・組織に貢献するにあたって、自分が過去に身に付けたスキルのなかで、活用できるものはなにか。
最初の10日間に自分の頭の中で動いていたアルゴリズムはざっと言ってこんなところだ。もちろん、まだまだ組織に充分に貢献できているとは言えないひよっこ状態ではあるが、この視点で過ごしたおかげで、仕事に向かう足取り軽くなった週明けを過ごすことができている。
もう少し具体性を高めて、実際に自分が実施したことをメモ程度に掲載しておく。
・出勤
・業務をしたり、教えてもらう中でひたすらメモを取りまくる
・退勤
・帰宅→ひたすら取ったメモを家で復習(構造化)する
(別に特別なことをしているつもりはないし、偉そうに書く内容でもないことは重々承知している。ただ、間違いなくこれらが大事だということが自分の中で再確認できた、という話だ。)
この中でも、「復習(構造化)」ついては本当に有用な方法だ。
・1つ1つの業務内容(コンテンツ)を理解する。(知識・技能の把握)
・業務内容(コンテンツ)同士の関係性をフローチャートで繋げて何かしらの形でアウトプット(思考・判断・表現)する。
・これらをひたすら繰り返しながら、全体像をアウトプットしながら構造化(思考・判断・表現)していく。
・業務内容を構造化するなかで疑問に思った点や、よりよい構造となるような方法が見つかった場合は、それを質問・提案事項としてまとめておく(批判・創造)
もし学生さんがこの記事を読んでくれているのであれば、”業務内容”と書いたところを"教科の単元"と読み替えてもらえたらいいだろう。
(それにしても思考コードってすごくよく出来ているなぁ)
自分自身を教材と考える生き方
さて、今回はこのあたりで結んでいこうかと思うが、一つ前の見出しをもう一度読んでみていただきたい。
この文章を読んでみて、僕はいまひたむきと言えるだろうか?
この文章を読んだあなたはいま何かに対してひたむきだと言えるだろうか?
毎回兎に角、大した内容ではないのだけれど、noteを始めて自分について振り返るというのを続けてきて、掴めてきたことがある。
過去の自分のアウトプットを自分で読むことによって、過去の自分自身が今後の自分にとっての教材になるということだ。
過去の自分自身というのは、自分のメタ認知を育成するのに最適な教材だ。
数年後の自分がこの文章を読んで何を思うのか、楽しみでならない。
おつきあいいただきありがとうございました。