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北東北夏紀行-震災遺構から田んぼアートまで-

この旅行記は2023年夏の旅行記です。
この年取得した一週間の夏休みは実に移動が多く、まずは北海道で義母のお墓参り(1泊2日)、その後、息子と青春18きっぷで高松往復(1泊2日)、そしてその翌日からは父と北東北を巡ってきました。
息子と行った高松までの青春18きっぷ紀行は昨年noteに書きました。

今回は、その翌日から行った、父との北東北を巡る旅をまとめてみたいと思います。

1日目-震災遺構巡り

父は車で先に宮城入りしており、高松から戻った私は翌朝の新幹線で古川駅へと向かいました。そこからまず向かったのは石巻市。
震災からちょうど1ヶ月後、まだ瓦礫があまた残る石巻を励まそうと地元の青年が掲げた看板。震災復興へのシンボルともなったこの看板は3代目。周辺は震災復興祈念公園として整備され、ど根性ひまわりも咲いていました。

がんばろう!石巻の看板

道の駅おながわでお昼をいただいた後、続いてやってきたのは旧大川小学校です。東日本大震災による大津波で、児童・教職員合わせて84人が亡くなった悲劇の場所。今では震災遺構として、津波でねじ切られた校舎がそのまま残っています。その光景はすさまじく、当時の津波の絶望的なパワーを感じさせますが、現地では、そのあまりもの壮絶さに言葉は出ませんでした。

大川小学校の入口
旧大川小学校全景
特徴的な円形校舎の前には向日葵が
あの時まで、ここには日常がありました

さらに車を走らせて、南三陸町、旧志津川にある南三陸町防災対策庁舎へ。ここでも43名の職員の方が犠牲となりました。鉄骨のみとなったその姿は当時、震災の被害を物語るシンボリックな建物となりましたが、現在は周囲がかさ上げされ、堤防から少し低くなったところにその庁舎は保存されています。この志津川の街は大津波で壊滅的な被害を受け、気仙沼線は手前の柳津から先がBRT化されました。

南三陸町防災対策庁舎

志津川から歌津を抜け、旧本吉町に入ったところにあるのが道の駅大谷海岸です。かつては気仙沼線の大谷海岸駅があり、私も過去に撮りに訪れたことがありますが、津波で大きな被害を受け、防潮堤が築かれて、道の駅は国道の内陸側に移設されました。
映画「すずめの戸締まり」でも登場し、店内にはその展示品もありました。
海岸の方へ出てみると、かつての気仙沼線のトンネルと路盤がまだ残っていました。

道の駅大谷海岸のサイン
映画「すずめの戸締まり」の展示品
かつての気仙沼線のトンネルと路盤

この日、最後に訪れたのは陸前高田の奇跡の一本松。当地の名勝であった高田松原が大津波にのみ込まれる中で、ほぼただ一本残った大きな松。残念ながら松それ自体は長時間の浸水で根が腐ったこともあって枯死しましたが、それをくり抜いて、モニュメントとして保存されています。

奇跡の一本松。背後は被災した陸前高田ユースホステル
奇跡の一本松に刺す夕陽

その後は三陸道で車を走らせて釜石で宿泊しました。
震災遺構、当地に生活していた者ではありませんが、巡っていると感情が揺さぶられます。10年以上が経ち、復興は進みましたが、こうした遺構があることで当地の歴史を学ぶことができます。特に旧大川小学校は、多くの人に足を運んでもらいと思いました。

2日目-三陸~下北乗り鉄旅

2日目、父は車で北上しますが、私はひとり釜石から三陸鉄道、八戸線、大湊線へと乗り鉄の旅へ。

三陸鉄道釜石駅
三陸鉄道の車両の隣は釜石線快速はまゆり号

釜石から北上するのは、かつてのJR山田線。津波で大きな被害を受け、JR東日本が復旧の上で三陸鉄道に移管しました。途中、浪板海岸というところでは海沿いを走っていきます。
列車しばらくして宮古に到着。宮古駅には三陸鉄道開業当初から走る36形が多数留置されていました。
宮古から先はしばらく内陸を走って海は見えません。山の中にある秘境駅、佐羽根はクマさんやらタヌキさんやらウサギさんたちが出迎えていました。

浪板海岸の海岸線
宮古駅にはキハ36形が留置中
佐羽根駅

列車は島越駅付近から再び海を見ることができます。
田野畑駅の近くでは、三陸鉄道の車両を模した水門を見ることができます。平井賀川水門と呼ばれるもので、当地と三陸鉄道の繋がりが見えます。
そこから北は絶景区間。海を望める駅として有名な堀内駅。朝ドラの「あまちゃん」では袖ヶ浜駅として登場します。また、そこからちょっと行ったところでは安家川橋りょうを渡り、ここから望む景色も見事なものでした。

田野畑駅から望む
海沿いにある堀内駅
安家川橋りょう

列車は久慈に到着。ここからはJR八戸線に乗車します。ちょっと前までは国鉄型のキハ40系が走っていましたが、今はキハE130系に統一されています。

久慈駅からは八戸線に乗車

八戸線の車窓の友は、何といっても海です。有家駅の近くから目の前に雄大な太平洋が広がります。時には砂浜のすぐ横を走る区間があるほど。これには本当に驚き、また感動しました。今度はじっくり撮りに来てみたいと思わせる絶景路線でした。

有家駅付近から海が見えます
砂浜のすぐ横を走ります
運転席からも海が見えます

列車はしばらく走ってお昼過ぎに終点の八戸に到着しました。ここからは旧東北本線から切り替えられた青い森鉄道に乗り換えて、野辺地駅に向かいます。この野辺地は日本最古の鉄道防雪林が整備された場所として有名です。

八戸駅に到着
青い森鉄道の701系に乗車します
野辺地駅に到着
日本最古の鉄道防雪林が出迎えます

野辺地駅の駅前には、私が大好きな「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」では何度も出てきてファンにはお馴染みの松浦食堂があります。ご夫妻は引退されたようですが、地元の有志で切り盛りしているとお聞きしました。

バス旅ファンにはお馴染み、松浦食堂

ここから下北へ向かうにはJR大湊線に乗り換えればよいのですが、ただ大湊線に乗って往復するだけではつまらないので、下北へは下北交通という路線バスで向かうことにしました。

野辺地駅前から下北交通に乗車
海沿いを走る国道からは下北半島の山々が

下北交通の終点、むつバスターミナルまでは1時間半ほど。バス旅が放映されていた当時は古めかしいターミナルの建物がありましたが、今は取り壊されて、普通の道路沿いがバスターミナルのバス停になっています。そしてこのバス停の対面にはJRバス東北の柳町バス停があって、そこから今度は大湊駅方面のJRバスに乗り換えます。

むつバスターミナルに到着
JRバスに乗り換え

むつ市街から大湊駅までは20分ほどでしたでしょうか。JR大湊線の終点・大湊駅に到着しました。

大湊駅舎
駅待合室。千羽鶴が見事です
大湊駅にある駅名票

ここからは夕方のJR大湊線で再び野辺地駅へと戻ります。大湊線も海沿いを走る絶景路線。ちょうど夕陽が陸奥湾をまぶしく照らしていました。そこを思いのほか速いスピードで爆走していくキハ100系。なかなか美しい光景でした。

大湊駅は本州の終着駅
夕陽を望みながら海沿いを爆走

列車は野辺地駅に到着。ここで、車で移動してきた父と合流し、浅虫温泉近くの海岸で日没の情景を楽しみました。

浅虫温泉で日没の情景を

その後青森市内へ移動して、当日は青森市で宿泊です。

3日目-田んぼアート三昧

この日は田舎館村と、秋田内陸縦貫鉄道の田んぼアートを楽しみます。
最初に訪れたのは弘前市近郊の田舎館村。弘南鉄道の、その名も田んぼアート駅がすぐ近くにあります。展望台からはONE PIECEの見事な田んぼアートが望め、そして、青森を代表する芸術家・棟方志功の肖像が、こちらは石絵で描かれていました。

田舎館村の田んぼアート駅へ
大きな田んぼにきれいなアート
岩木山・弘南鉄道・棟方志功

その後、父に黒石駅に送ってもらい、ここで父とはお別れ。私は仕事があるので、ひと足早く東京に戻ります。
乗車するのは弘南鉄道弘南線。終点の黒石駅から乗り込みますが、なかなか趣きのある古い駅舎でした。

黒石駅舎

乗車するのは東急からやって来た中古車両。つり革には「東急食堂」の広告がそのまま残っていました。そして、なんとこの車両、冷房が付いていません。かなりの暑さだったのですが、幸い、窓が開きましたので窓を開けて涼みます。車窓には見事な津軽富士・岩木山が。この路線も、一度、岩木山が見えるときにじっくり撮りに来たいところです。

弘南鉄道弘南線に乗車します
東急食堂!?
見事な岩木山と緑のじゅうたん

そしてびっくりしたのは沿線の中核駅・平賀駅構内でラッセル車のキ104の展示会が開かれていたこと。貴重な車両を見ることができました。

平賀駅では何とキ104が

列車は弘前駅に到着。弘前駅舎は立派になりましたね。次の列車まで1時間以上ありますが、弘南鉄道大鰐線の中央弘前駅や、弘前城に行って帰ってくるには少し厳しいでしょう、何より暑いので、涼しい待合室で時間つぶし。そこからは奥羽本線の「東北版走ルンです」こと701系で鷹ノ巣へ向かいました。

弘前駅舎
701系で鷹ノ巣駅へ向かいます

弘前から1時間ちょっとで列車は鷹ノ巣駅に到着。ここで秋田内陸線に乗り換えです。そういえば、JRは鷹ノ巣、内陸線は鷹巣。駅名が違うのはなんでなんでしょうねぇ。

秋田内陸線の鷹巣駅舎
阿仁合行に乗車します

秋田内陸線の車両の中にはかわいいモッフモフの秋田犬の写真がたくさん。乗客の目を和ませてくれます。
鷹巣を出てからちょっとして、最初の田んぼアートがある縄文小ヶ田駅に到着。秋田犬と伊勢堂岱遺跡のキャラクターである「いせどうくん」が描かれていました。

モッフモフの秋田犬
縄文小ヶ田駅の田んぼアート

合川駅だったかと思いますが、クマさんのモニュメント。こんなにカワイイわけがありません。実物には出会いたくないものです。交換した列車はお座敷列車仕様に改造された車両で「又鬼」の字とマタギのシルエットがめちゃくちゃカッコイイです。

かわいいクマさんのキャラクター
マタギのシルエット、クールです

列車は秋田内陸線の本社もある沿線の中心駅・阿仁合駅に到着。ここで角館行に乗り換えます。名所である大又川橋りょうや、上桧木内駅の田んぼアートなどを楽しみながら角館駅に到着しました。

阿仁合駅で乗り換え
大又川橋りょうを渡ります
上桧木内駅の田んぼアート
角館駅に到着

角館からは秋田新幹線こまちで帰京します。これ一本で東京まで爆睡して帰れます。いやはや便利な世の中になりました。

秋田新幹線こまちで帰ります

むすびに

こうして2泊3日の北東北旅行を終えました。道中、よく晴れて、暑かったのですが、震災の爪痕、変わらない青い海、米どころ東北の田んぼアートなど魅力ある東北を思う存分満喫しました。

(掲載写真はすべて筆者撮影。訪問日:2023年7月下旬)

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