ACT療法 アクセプタンス
あなたは苦しみから解放されるが誰も愛せない人生を選ぶか。
それとも
苦しみと共存しながらも誰かを愛する人生を生きるか。
どちらを選ぶだろうか。
ACT療法のコアプロセスの一つ
アクセプタンスについて記事にしてみようと思います。
アクセプタンスは体験の回避という心理的非柔軟性と対になっています。
まずは体験の回避を説明していこうと思います。
体験の回避
人って変化を要するときに必ずと言っていいほど不安を感じる生き物です。不安という感情は危機を知らせるシグナルであり、そのため危険から身を遠ざけることが出来るのです。
特に太古では猛獣や災害といった危険と隣り合わせの生活でした。ネガティブな感情を優位にすることにより、人は危険から身を守ってきたのです。現代でもそれは受け継がれているため人は基本的にはネガティブな感情が優位となっています。
では不安とは何なのでしょうか。不安だけでなく不快な感情全体に言えることですが、上記のように危険から身を守るものであるのなら悪いものではないはずです。しかし、人は不快な感情を避けて行動を制限してしまうことがあります。
外的世界ではとても有益な感情と言えますが私的世界では不安が足枷となってしまうことがあるのです。不快な感情を避けるために価値に基づいた行動を制限してしまうことになるのです。
人は苦痛を感じるとネガティブな感情から逃げたり抑制しようとしたりして安堵感を感じます。しかし、この安堵感は今一瞬だけの安堵であり長期的にはマイナスになってしまうことが多いです。それでも安堵感というとても強い誘惑により人はその行動を定着させてしまいます。
例
A君と会う約束があるが、気持ちが乗らず。
↓
気乗りもしないため会うことを辞める連絡をする。
↓
ほっとする。
といったように。
このことで短期的には安堵感を得られますが長期的には対人関係を失ってしまいます。その人の価値によりますがより良い人生には豊かな人間関係が不可欠だと思います。
このように一時的な安堵感のために長期的には望む生活からかけ離れてしまう。そうなるとACTの目的である「生活の質の向上」の達成にはなりません。そのために気乗りしない気持ちに視点を向けてただ受容していくことが大切になります。
ひとつ実験をしたいと思います。
シロクマの実験
今から30秒、シロクマのことを考えないでください。
どうでしょうか。
とても難しかったと思います。うまく考えなかった人も時間が過ぎたら頭の中がシロクマだらけになったりしたのではないでしょうか。
このように、ネガティブな感情や過去の辛いことを考えないようにしてもより強く反発をして戻ってきてしまうのです。
綺麗な痛みと汚い痛み
また、痛みには綺麗な痛みと汚い痛みというものがあります。
綺麗な痛みとは
人生において避けられないネガティブな感情のことです。
汚い痛みとは
綺麗な痛みのことを避けようとしたり過度にこだわり、そのことに痛みを重ねてしまうことを言います。
今まで、体験の回避というものを説明してきました。
ではどうすればいいの?という疑問が湧いてきますよね。
そこでアクセプタンスの登場です。
アクセプタンスとは
・思考や感情をそのままにしておくこと。心を開き、肯定もせず否定もせずただただ、眺め受容していくことです。回避をしたり壁を作ったりせずに。
・抵抗すること、闘うことをやめて。心にその感情を受け入れるスペースを作ること。そのスペースから感情を眺めることです。
目的
苦痛な感情や思考が価値に基づいた行動を妨げているときに使用する。
具体的な方法としましては瞑想スキルを使用します。
呼吸瞑想
1 背筋を伸ばして足は組まずにきちんと床につけます。
2 リラックスをして椅子の感触に意識を向けていきます。
3 落ち着いたら、呼吸に意識を向けて観察をします。
4 気になる感情が浮かんできたらその感情を眺めてそこにとどめてください。
5 心にその感情を置いておけるスペースを作り、そっと受容してください。
感情をジャッジせず、ただそこにあるものとして受容していくことが目的です。
森田療法でも出てきますが感情とは雷や雨と同じように自然と湧いてくるものだからです。自然と湧いてくるものをコントロールしようとせず、ただそこにあるものと認識をする訓練となります。
メタファー モンスターとの綱引き
想像してください。
あなたはとてつもなく大きなモンスターと綱引きをしています。あなたとモンスターの間には底なし沼があり、モンスターは強大な力を使いあなたを沼へ引きずりこもうとしてます。あなたはどうするでしょうか?
綱から手を放しモンスター(苦痛な感情や思考、身体感覚等)との綱引きを辞める選択をするのではないかと思うのです。
沼(痛みに痛みを重ねる場所)に引きずりこまれる前に。
まとめ
アクセプタンスとは自分の価値に基づく行動を妨げている感情に捉われず、そこにあるものとして受容して価値に基づく行動を行うことです。ただ、受容していくだけではなく、自分のやりたいこと、したいことの行動を起こすことが大切です。(これをウィリングネスといいます)
脱フュージョンとも似ている側面があったことにお気づきだと思います。ACT療法において、脱フュージョンとアクセプタンスは「オープンに」という枠組でくくられています。
オープンな姿勢で現実を見つめ価値に基づいた行動をする。
瞑想スキルやそのほかにも多くのエクササイズもあります。自分の感情と向き合ってよりよい人生に向けて。最良の選択が出来るといいですよね。