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主婦のための手引き書

ルシア・ベルリンの短編集『掃除婦のための手引き書』を読んでいる。

新型コロナの影響もあり最近すごく暇で、twitterを見たり漫画雑誌を買って読んだりして暇をつぶしていたのだけど、それだとどうも暇をつぶしきれず、読むのに時間がかかりそうな本を選んだ。

何かの記事に、スマホやSNSを見るよりはを読んだりクロスワードパズルをやるほうが脳にいいと書いてあったから、今の時期、読書をするのはいいことなんだと思う。

ただし私には本を読むタイミングがあって、この『掃除婦のための手引き書』も気になってはいたけれど、以前はまだそのタイミングではないような気がしていた。

書店でこの本を見て、やっとタイミングが来たことを確認したので買って読んでいる。

作者のルシア・ベルリンは、実際に掃除婦(今でいうと掃除代行・家事代行サービスだろうか)だとか看護師だとか職を転々とするシングルマザーで、なまじ教養を身につけているぶん、そうでない同僚たちとはあまり仲良くなれなかったようだ。

ハードな家庭に生まれ引っ越しを繰り返し、4人の子をひとりで育てたルシア・ベルリンとはまるで違うけれど、私も職を転々としていることに変わりはないので、親近感を持って読んだ。

アルコール依存症の男、口の悪い夫にやさしい妻、紳士的でユーモアのある男、私の人生にも、そんな人々が出てくる。だからこれはきっと、私が読みたかった私の物語。

コロナ鬱みたいになって仕事が減りしばらく主婦のようになり、慌てて仕事を探したら仕事が増えてそれでかえって不安になって、そんなことの繰り返し。喜劇と悲劇は、いつも同時に起きている。

淡々と描かれ、時折ほんの少しだけ笑いと苦しみが現れる。

そんな文章が好きだ。

毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。夜明けにふるえる足で酒を買いに行くアルコール依存症のシングルマザー(「どうにもならない」)。刑務所で囚人たちに創作を教える女性教師(「さあ土曜日だ」)。自身の人生に根ざして紡ぎ出された奇跡の文学。死後十年を経て「再発見」された作家のはじめての邦訳作品集。

Amazon「BOOK」データベースより

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