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今の経済状況を、松方財政下の明治19年と比較する

「明治東京下層生活誌」という直接的な名前の本を読んでいて、舞台となった明治19年は何で不況だったのだろう、と調べたら、松方財政だったからでした。

松方以前、政府は西南戦争の戦費などの支出を賄うため不換紙幣を発行し、インフレが進んでいました。そこで松方は緊縮財政を取り、増税を実施するとともに財政支出とマネーサプライを抑えました。これにより経済はデフレとなり、米価が下落しても税金は下がらない(=実質増税)ため農村は疲弊し、農村から人口が東京に流入して多数の貧困層が都内に発生した、という背景です。女工哀詩史が生まれたのと同じ理由です。


都心の貧困層の職業は、紙屑拾い(今でいうと空き缶?)や人力車引き(タクシー運転手?)などと描かれています。微妙に現代とシンクロする。

経済の停滞に追い討ちをかけるように、当時はコレラが流行しました。今のコロナの状況と同じ。当時、家を持たない人たちは木賃宿(今でいうネットカフェ?)に泊まっていたそうですが、同じ部屋に一人当たり一畳で3密状態。

こうした都内の貧困層を当時の新聞記者などが調べたのが冒頭の著作なのですが、これは近年、都内にいる定住場所を持たない低所得者を描いたルポルタージュとも似ています。


デフレ下の増税、というのも類似点です。今の現役世代も、デフレで給与所得が増えないのに、社会保険料と消費税は増税されているからです。平成の間に社会保険料は5%、消費税は10%上がりました。デフレ下の増税は怖い。

一方、その後は日清戦争を前に軍備拡大のため政府支出が増え、インフレとなります。これも現代と似ていて、今の日本は増え続ける社会保障費を賄うため、多額の国債が発行されています。軍備は特別、という感じで無制限に国債で賄われている感じと似ている。当時は日清戦争に勝って賠償金が貰えたけど、今は社会保障費を出しても何も貰えない。


松方財政とくらべてみると、今の日本が「定年した世代のためにインフレ的財政政策を取り、現役世代にはデフレ政策を取っている」ことがよくわかります。つまり、世代別に反対の財政政策を取っている。

何が正解なのかは、私は専門家ではないから分からないけれど、日本は過去にも同じような問題に直面し、歴史が繰り返しているように見える。そして、我々今を生きる日本人が、過去よりも優れた対応をしていると信じたいです。

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