【人事は語る】風俗嬢をSNS運用担当として採用したら企業アカウントのフォロワーが爆増した話
風俗嬢という職業に良い印象を持っている人は少ないはずです。
それは私も同じでしたが、とある女性と出会ってから180度イメージが変わりました。
彼女のことを、仮にS氏と呼ぶことにしましょう。
さて。S氏は某風俗店で働いていましたが、昼職に就きたいと思うようになり私が人事をしていたITベンチャーに応募してきました。
今回は、そんなS氏のお話になります。
事の始まり
ITベンチャーはSNSを本格的に運用していることが多いですが、その目的は様々です。
当社の場合は、求職者に向けた情報発信ツールとしてSNSを運用していましたが、知見がある者がいないため手探りで行っている状態でした。
そこで、SNSを効果的に運用できる担当者を雇うということになりました。
募集開始
SNS運用経験者が欲しいので、経験者にしぼって募集をします。
しかし、SNSマーケティングという概念は歴史が浅く、そもそも経験者の数が少ないのが現状でした。
そのため、応募者がなかなか来ない上、ようやく応募があっても条件面で折り合いがつかずにお断りされてしまうケースがほとんどでした。
そこで、方向転換を開始。
未経験OKとして、再度募集をかけていきます。
すると、あっという間に100人近い応募者になりますが、これといって良い人材が見つかりません。
未経験者を雇うくらいなら、いまいる社員に運用経験を積ませたほうが良いのではという意見が出てくる始末。
そんな矢先に、新たな応募者があらわれたのです。
風俗嬢の登場
冒頭でもお話しましたが、珍しいことに風俗嬢から応募がありました。
ここでは、彼女をS氏と呼ぶことにします。
S氏のプロフィールをざっと書いてみましょう。
・年齢は20代後半
・風俗以外に、工場作業員と営業事務の経験あり。
・個人で運用しているSNSはフォロワー500人前後
・お店用に運用しているSNSはフォロワー1000人越え
ためしにS氏のアカウントを確認してみると、個人・お店用ともに毎日細かく更新しており反応しているユーザーも多いです。
お店用のアカウントに関してはやはり、男性陣が群がっていますが、個人用については男女ともに投稿に対して反応があります。
個人用の方では、実体験にもとづく昼職と夜職の話をしており、それがウケているようでした。
どんな内容であれ、ユーザーが反応してくれる投稿を考えられるのはセンスがある証拠。
私はダメ元でS氏を面接に呼ぶことにしました。
面接開始
面接日になり、S氏との初対面を迎えます。
後ろ髪を1つに結び、ブラックスーツを身にまとっているその姿はまるで就活生。
想像とまったく違う姿に思わずキョトンとしていると、薄らと笑みを浮かべながらS氏は言います。
【S氏】
「風俗なんてやってるので、これ以上悪い印象を与えないようにこの格好にしました」
そこまで考えて面接に来るとは思っていなかったので、これまた予想外でした。
私は気を取り直すように咳払いを1つしてから本題を切り出します。
【私】
「今回SNSの運用担当の求人にご応募いただきましたが、この職種を選んだ理由は何ですか?」
【S氏】
「SNS運用はまだ歴史が浅いので、この分野でスペシャリストになれたら将来が明るいと思ったというのが率直な理由です」
的確な意見でした。大企業にしても、ベンチャー企業にしても、SNSを有効に活用できている企業はまだ少ないです。
だからこそ、SNS運用職としてスキルを身に着けることに価値があります。
その点をしっかりと踏まえているのは、さすがと言う他にありません。私はさらに質問をしていきます。
【私】
「Sさんの仰っていることは正解だと思いますが、SNS運用以外にもまだまだ未開拓な領域はあります。たとえば、AIとか」
【S氏】
「はい、そうですね」
【私】
「ぶっちゃけた話、AI技術者のほうが将来性高くないですか?それなのにSNS運用を選ぶのは何か理由がありますか?」
【S氏】
「AI技術者は、結局のところAIの開発会社でしか生きる道がありません。ですが、SNSはマーケティングにも活用できるので、企業で必要とされることは多いかと思います」
【私】
「それなら、SNSではなくWebマーケティングでも良くないですか?むしろ、Webマーケターのほうがより企業から重宝されそうですが」
【S氏】
「Webマーケティングはもう、先駆者がたくさんいます。いまから参入しても遅いと思います」
次から次へと質問をしても、キレイにかわされてしまう。S氏は会話をしている間もグルグルと思考をめぐらせているのがよく分かります。
過去にマーケターを雇ったときも、同じようなことがありました。こちらがいくら難しい質問をしても、数秒で答えを返してくる。
この手の人間は、仕事ができる。
これまでの経験から、私はそう判断しました。
あとは、どれだけ実務で活躍できそうか。ポテンシャルを確かめる必要があります。
【私】
「Sさんはそれなりにフォロワーも多いですし、ユーザーの反応もけっこうありますよね。SNS運用にはやはり何かコツとかあるんですか?」
【S氏】
「コツと呼べるほどのものはありません。何でもそうですけど、いかに面倒くさがらずに実行できるかだと思います」
【私】
「……と言うと?」
【S氏】
「たとえば、Twitterなら適切なハッシュタグを使うことが大切ですよね。それは誰でも知っていることですが、じゃあ、どういうハッシュタグを使うのが良いのかまで分析して考えている人はまだ少ないと思います」
なるほどと、私は深く頷いて続きの言葉を促す。
【S氏】
「面倒なことでも絶対にやる。結局、そういう初歩的なことが一番重要だと思います。それはSNS運用以外にも言えることですが」
たしかに、その通りです。面接をはじめてから15分ほどしか経っていませんが、心のなかではもう最終選考に進んでもらう気でいました。
S氏は、物事の考え方がしっかりしています。思考回路もマーケターに近いものを持っているので、おそらくポテンシャルは高いです。
そうして、いくつか質問をして一次選考は終了。すぐに最終選考の案内をしました。
採用後
社長はS氏の肩書に抵抗感を示していましたが、結局、面接を通じて内定を出すことになりました。
社内初のSNS運用者ということもあって期待は高かったですが、その期待に押しつぶされることなく順調に成果をあげてくれました。
フォロワーはしばらく上下し、ユーザーの反応もまずまず。ただ、一番重要な採用促進という目的は順調に達成し、応募者数が目に見えて増加していきました。
それだけでも充分な結果でしたが、しばらくして。S氏は元ナイトワーカーの肩書を武器に会社SNSを運用するようになり、フォロワーはグングンと伸びていきました。
採用促進を目的にはじめたSNSのはずが、面白がって声をかけてくれる企業も増えるようになり、新規顧客開拓にまでつながっていくのでした。
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