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16の思いも天にのぼる③幸子(5)
一年後、幸子は就職活動をしていた。
何社受けても受からない状況が続いていた。
幸子は落ち込んで、ノイローゼ気味になっていた。
元気を分けてくれる頼みの綱は、生徒手帳に挟んでいる広の写真だった。
もう就職活動何て止めようかと思ったその時、一人の級友が声をかけてきた。
「俺二十連敗中」
その人は、昔幸子をいじめていた人だった。
幸子は笑いながら、
「私、十五連敗中」
と言った。
元いじめっ子は、幸子を励ますように言った。
「お前なら大丈夫」
そしてにっこりほほ笑みかけてくれた。
「俺、お前のいいところたくさん知っているから、何でも聞けよ」
その言葉に幸子は救われた気がした。
ずっと落ちっぱなしの就職活動で、人としての自信も失いかけていたからだ。
元いじめっ子は、それだけ言うと背を向けた。
幸子は、握りこぶしを作って、唾を飲み込み、生徒手帳を胸のポケットにしまった。
「じゃぁ、今日、今日教えて。一緒に御飯でも食べながら」