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読書ログ1 ルソーの言語起源論

言語起源論
旋律と音楽的模倣について
ルソー著 増田真訳
岩波文庫



ルソーが言語の起源と本質について論じた著作。
この本はルソーが死後に出版されたもので、ルソー本人のことに触れていない論文だったため、いつ書かれたかも不明であった。執筆の経緯も不明である。しかし、デリダが『グラマトロジーについて』において、『言語起源論』の研究史を踏まえつつ執筆年代を検討して以来、一定の知名度を得た。

内容は、言語とその起源を、人間の感情や言葉の必要性、芸術と絡めて論じたものである。作中では聖書や世界の歴史から引用して、主張の説得力を得るという方法を多用しているので、予備知識がないと何度も注釈を引くことになる。文には言語に関する知識が無い読み手も納得することができるような説得力があったが、論ずる対象が西洋を出ると、当時の偏見などの色が濃くなっており、鵜呑みにはできない内容だった。

作中で印象に残った言葉を2つ書いておく。
「我々は英語を2度学ばなくてはいけない。1度目は読むために、2度目は話すために。」
「音楽の領野は時間であり、絵画の領野は空間である。」

この本を通して、ルソーがなぜ歴史に残るような論文を書くことが出来たのかがわかった。それは彼の視点が鋭く社会を見通すだけではなく、彼に光る文才があったからだと感じた。また、言語だけではなく、芸術に対する姿勢についても考えるような本だった。

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