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【朝活5分一冊】目の見えない人は世界をどう見ているのか/伊藤 亜紗

目の見えない人は世界をどう見ているのか』 著者:伊藤 亜紗

書籍紹介

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』は、視覚障害者の知覚と認識の仕組みを探ることで、「見るとは何か?」「世界を知るとはどういうことか?」という根源的な問いに迫る一冊です。

著者の伊藤亜紗氏は、美学者として、視覚と身体の関係を研究してきました。本書では、視覚を持たない人々がどのように世界を感じ、記憶し、コミュニケーションをとるのかを、実際のインタビューやフィールドワークをもとに詳しく解説しています。

本書は、単なる「視覚障害者の生活紹介」ではなく、視覚とは何か、知覚とは何か、人間の認識とは何かを深く考えさせられる哲学的かつ実践的な内容になっています。

要約

本書では、「視覚を持たない人は、どのようにして世界を理解しているのか?」 という問いを、科学・哲学・身体論の視点から考察しています。

著者は、視覚障害者の経験を単なる「欠落」ではなく、「異なる世界の捉え方」としてとらえ、視覚以外の感覚(触覚、聴覚、嗅覚)を駆使した独自の認識方法を解明します。

特に、
1. 視覚がない状態で、どのように空間を把握するのか
2. 記憶や想像力がどのように働くのか
3. 触覚や聴覚が視覚の代わりとしてどのように機能するのか
というポイントを中心に、視覚障害者の世界の「見え方」に迫ります。

ポイント

1. 視覚を持たない人はどのように世界を認識するのか?
• 視覚障害者の多くは、「触覚」や「聴覚」を駆使して世界を把握する。
• 例えば、白杖を使って床の材質や傾斜を感じ取り、道を判断する。
• 音の反響(エコーロケーション)を利用して、空間の広がりを感じる人もいる。
• 視覚がないからといって「世界が見えない」のではなく、異なる知覚の方法によって世界を感じている。

2. 「触る」とはどういうことか?
• 目が見える人は、触覚を「補助的な感覚」と考えがちだが、視覚障害者にとって触ることは、世界を理解するための主要な手段。
• 触覚には「順番性」があり、一度に全体を見ることはできないが、時間をかけて対象を理解する。
• 例えば、点字を読むときは、文字の形を認識するのではなく、「動きのなかで意味を捉える」というプロセスを経る。

3. 記憶と空間認識の独自性
• 視覚障害者は、目の見える人とは異なる「空間記憶」を持つ。
• 例えば、道を歩く際に、「この地点にはこの音が聞こえる」「この角を曲がると風の流れが変わる」といった感覚的な情報を手がかりにする。
• 目の見える人は「視覚的にマップを想像する」が、視覚障害者は「身体の動きと音や匂いを頼りに空間を構築する」。

4. コミュニケーションの違い
• 視覚障害者は、視覚的なジェスチャーを使えないため、言葉によるコミュニケーションが重要になる。
• しかし、視覚障害者同士の会話では、触覚を使ったやり取り(手を触って表情を感じるなど)も行われる。
• 目が見えない人と会話するときには、「見えることを前提とした表現(『あそこにある』など)」ではなく、「音や触覚を基準にした表現」が適している。

5. 視覚中心社会を問い直す
• 現代社会は「見ること」を前提にデザインされている(例:信号機、広告、スマートフォンなど)。
• しかし、視覚を使わない認識方法があることを理解することで、より多様なデザインや社会のあり方を考えられる。
• 例えば、触覚や音声による情報提供の拡充は、より多くの人にとって利便性の高い環境を作ることにつながる。

まとめ

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』は、視覚を持たない人の「世界の捉え方」を知ることで、私たちの「見える」という感覚を問い直す一冊です。

本書を読むことで、
• 視覚だけが世界を知る手段ではないこと
• 触覚・聴覚・記憶が、世界を理解するために重要な役割を果たしていること
• 視覚障害者の経験から、「見るとは何か?」を改めて考えさせられること

といった新しい視点を得ることができます。

視覚に頼りすぎる社会の在り方を問い、より多様な認識の方法を理解することで、デザインや教育、コミュニケーションの在り方を見直すヒントを与えてくれる一冊です。

本書は、視覚障害者の生活を知りたい人だけでなく、「知覚とは何か?」を深く考えたい人にもおすすめの本です。視覚に頼らない世界の感じ方を知ることで、私たちの「見方」が変わるかもしれません。

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