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短歌+ショートエッセイ:冷やし中華、まだありますか


すこしだけ夏はやわらぎあのときの約束が淡く風ににじんだ
/奥山いずみ


「この夏、やり残したことはありませんか? 今がそれを叶えるチャンス!」
 そんなコピーが添えてありそうな、九月の残暑。綿の半袖シャツを着て昼下がり、仕事の勉強のために図書館へ向かう。

 途中、近道のために公園を突っ切ったものの、いいお天気の休日なのに人があまりいない。それはそうか、暑いもんなあ。

 公園にはミストを噴射してくれる銀色の装置があって、そこをくぐるルートを意図的に選ぶ。近づいて、「さあ、来い、ミスト!」と思ったが、風向きのせいか、あまり涼しさを感じることができず、残念な思いとともに通り過ぎる。

 まだまだ暑いのに、この前スーパーに行ったらもう冷やし中華が売っていなかった。この夏、一回しか冷やし中華を食べてなかったことを思い出して、慌ててスーパーに行ったにもかかわらず。パン屋では、お芋を練り込んだパンに栗のペーストを使った餡パンと、すっかりラインナップが秋だった。

 それだけじゃない、見上げるとすっきり晴れた空には雲がぷかぷか。うろこ雲? それか、いわし雲? 判別はできないけれど、知ってる、これは秋の空だ。

 これはまずい! その後、スーパーをもう二軒回って、無事、冷やし中華をゲットした。




Photo by Izumi Okuyama

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